論文名 | 特集にあたって:一人暮らし,認知症,社会的孤立 |
著者名 | 粟田主一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(5):451-459,2020 |
抄録 | 社会的孤立リスクの高い一人暮らしの認知症高齢者が増加している.社会的孤立とは「必要な社会支援の利用を可能とする社会的ネットワークの欠如」を意味している.認知症とともに一人で暮らす高齢者が社会的孤立状況にあり,そのために尊厳ある自立生活が阻まれるとすれば,それは人権の侵害に当たるであろう.尊厳ある自立生活を営むために,必要な社会支援の利用を可能とするネットワークを築くことは,認知症とともに生きる人々の権利であり,国家の責務である. |
キーワード | 独居,認知症,社会的孤立,社会支援,社会的ネットワーク |
論文名 | 一人暮らし認知症高齢者の出現率および生活状況の実態;介護保険データより |
著者名 | 川越雅弘,南 拓磨 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(5):460-466,2020 |
抄録 | 一人暮らしの要介護認知症高齢者の出現率と生活状況の明確化を目的に,A市の人口・世帯・介護認定・給付データの分析を実施した結果,@65歳以上男性認定者の18.6%,女性認定者の35.9%が一人暮らしであること,A一人暮らしの人は,同居の人に比べて,女性が多く,年齢が高く,要介護度が重度であること,B手段的日常生活活動(IADL)の自立度は,男女とも独居認知症群のほうが高いこと,C要介護1以上では,独居認知症群のほうが,閉じこもり率が高く,在宅療養率が低いこと,などがわかった. |
キーワード | 一人暮らし,認知症高齢者,出現率,日常生活活動,閉じこもり,療養場所 |
論文名 | 国民生活基礎調査からみる独居高齢者のケアの実態と今後への示唆 |
著者名 | 涌井智子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(5):467-473,2020 |
抄録 | 健康寿命の延伸が追及され著しく医療が進歩した一方で,高齢者が何らかの支援やケアを必要とした状態で生活する期間が延びている.さまざまな社会構造を反映し,介護保険を導入した前後におけるここ20年においてさえ,高齢者を支える世帯構成や家族のあり方は変化し,介護保険導入時に最も多かった3世代世帯が著しく減少している一方で,独居高齢者は増加しており,このことは,これまでとは異なるケアの課題が生じる可能性を示唆する.本稿では,独居高齢者のケアの課題を取り上げ,今後必要とされうる支援における課題を整理した. |
キーワード | 独居高齢者,ケア,介護保険,要介護認定 |
論文名 | マンションに一人で暮らす認知症高齢者の今日的課題 |
著者名 | 角田光隆 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(5):474-480,2020 |
抄録 | 本稿は,マンションに住む別居家族のいない一人暮らし高齢者,別居家族のいる一人暮らし高齢者,同居家族が疾病や引きこもり等の理由で高齢者の支援者になり得ない場合の高齢者に関する見守り,入居届の緊急連絡先,家族・専門機関への連絡,生活上の機器と見守り,専有部分・高齢者向けサービスの取扱いについて,相違点と類似点を指摘しつつ論じたものである.これらの領域に関する限り,第3番目の高齢者に課題が残されている. |
キーワード | マンション,認知症,一人暮らし高齢者,見守り,鍵の管理システム,緊急通報システム,専有部分・高齢者向けサービス |
論文名 | 社会的に孤立し,生活困窮状態にある認知症高齢者の生活支援 |
著者名 | 的場由木 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(5):481-486,2020 |
抄録 | 日本では,単身の低所得高齢者が増加している.経済的に困窮し,家族のサポートが得られない高齢者のなかには,認知症の進行に伴って地域生活の継続が困難となってしまう人が少なくない.本稿では,生活困窮状態にある認知症高齢者に対して,都市部の特定非営利活動法人(NPO法人)が実践している居住支援・生活支援の現状と課題について,@活動の変遷,A高齢期の住まいの喪失の問題,B認知症の人を包む共同性づくりの取組みを中心に述べた. |
キーワード | 生活困窮,認知症,生活支援,社会的孤立,住まい |
論文名 | 大都市の独居認知症高齢者の暮らしを支える;団地のなかの「暮らしの保健室」からみえること |
著者名 | 秋山正子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(5):487-498,2020 |
抄録 | 都会のなかの大型団地で「暮らしの保健室」を開設し,そこを利用する一人暮らし認知症高齢者3例を挙げ,暮らしのなかでの支援経過を踏まえて考察した.以下の4点が特徴として挙げられる:@認知症になる前から訪ねられる居場所として機能.Aさまざまな身体の変化や,行動の異変に早期に気づく.B当事者と一緒に考え,関係者に対し踏み込んだ調整ができるネットワーク.C看護師による相談支援体制で,医療も含めた暮らし全般の支えの「組立て」「予測してつなげる・つながる」ことができる. |
キーワード | 暮らしの保健室,戸山ハイツ,居場所,相談支援,認知症初期 |
論文名 | 中山間地域の独居認知症高齢者の暮らしを支える |
著者名 | 宮崎和加子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(5):499-505,2020 |
抄録 | 2016年より山梨県北杜市において,「医療ニーズの高い人」と「認知症の人」を多様なサービス・つながりで支えることに挑戦してきました.グループホームを立ち上げ,必要に応じて認知症カフェ,認知症デイサービス,多機能型シェアハウス,定期巡回・随時対応サービス,訪問看護ステーションを順次開設いたしました.中山間地域で暮らし続けたいと望む認知症の人の希望を実現することは挑戦的なことです.しかし,“在宅無理”とあきらめないで,地域住民の本音をもとに,住民とともに知恵と力を出しあって取り組めば実現は可能であり,これはサービス事業者の基本的姿勢として必要なことだと考えます. |
キーワード | 中山間地域,独居,認知症高齢者,定期巡回・随時対応サービス,生活支援 |
論文名 | 一人暮らしの認知症高齢者の権利擁護と意思決定支援 |
著者名 | 吉岡譲治 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(5):506-514,2020 |
抄録 | 一人暮らしの認知症高齢者の権利侵害を全般的かつ事前に防止する制度として成年後見制度がある.成年後見制度には,法定後見として「後見」「保佐」「補助」と,任意後見契約がある.判断能力が低下した認知症高齢者の自己決定を充足するためには,その意思決定を支援することが重要である.「成年後見制度利用促進計画」の一環として意思決定支援を前提として申立時に提出する医師の診断書が改定され,福祉職が作成する「本人情報シート」が新たに導入された. |
キーワード | 成年後見制度,法定後見,任意後見契約,自己決定権,本人情報シート |
論文名 | ソーシャルキャピタルは認知症とともに暮らせる社会の鍵になるのか;Dementia-Friendly Communitiesの推進に向けて |
著者名 | 村山洋史 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(5):515-522,2020 |
抄録 | Dementia-Friendly Communitiesの推進は今や世界的潮流であり,日本においても「認知症施策推進総合戦略〜認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて〜(新オレンジプラン)」の柱として掲げられている.本稿では,Dementia-Friendly Communities推進に重要な役割を担うであろうソーシャルキャピタルの概念について解説する.ソーシャルキャピタルとは,「集団の一員である結果として個人がアクセスできる資源」と定義され,種々の健康アウトカムとの関連が報告されている.Dementia-Friendly Communitiesの文脈では,ソーシャルキャピタルが豊かな地域ほど,認知機能低下を有していても在宅で生活を送れている者が多いとの研究成果もある.ソーシャルキャピタルが,老年精神医学の分野でも広く議論されていくことを期待したい. |
キーワード | Dementia-Friendly Communities,認知症,ソーシャルキャピタル,社会的環境 |