老年精神医学雑誌 Vol.31-4
論文名 初期認知症者の心理状態を重視したBPSDの予防と対応
著者名 橋本 衛,一美奈緒子,津野田尚子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(4):329-337,2020
抄録 本稿では,初期の認知症者に対する認知症の行動・心理症状(BPSD)の予防と対応についての筆者らの取組みを紹介した.最初に臨床心理士が患者と1対1で面接を行い,初期の認知症者はさまざまな心理的葛藤を抱えていること,初期であれば,認知症の人の心情を直接本人から聞き出すことが可能であることを示した.次に,面接で得られた“患者の語り”を直接介護者にフィードバックすることにより,介護者の不適切な対応を改める介入を試みた.さらに,“患者の語り”を掲載した介護者教育用のパンフレットを作成し,介護者に配布した.さまざまな“想い”で揺れ動く初期の認知症者の心に寄り添いながら,患者が前を向いて生きてけるようにサポートすることが,BPSD予防や対応に有効である可能性を指摘した.
キーワード early dementia,prevention of BPSD,psychological interview
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論文名 BPSDの予兆としての不同意メッセージという考え方の提案
著者名 伊東美緒
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(4):338-345,2020
抄録 認知症の行動・心理症状(BPSD)はさまざまな要因によって引き起こされるが,身近な人との関係性によって出現するBPSDは,関わり方を変えることによって回避できるはずである.医療・福祉専門職の関わり方に対する認知症の人の不満を早期に把握し,ケアの方向性を変えることが求められる.本稿では,認知症の人の不満を示す表現として,5つの不同意メッセージを紹介し,BPSDへの移行を回避するための対応方法について解説した.
キーワード BPSDの予兆,認知症ケア,不同意メッセージ
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論文名 認知症家族介護者に対する集団認知行動療法;日本版START(家族のための戦略)プログラム
著者名 色本 涼,田村法子,田島美幸,石川博康,原 祐子,重枝裕子,吉崎崇仁,船木 桂,田渕 肇,三村 將,藤澤大介
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(4):346-353,2020
抄録 家族介護者の介護負担感や心理ストレス(うつ・不安)に対しては,心理教育,行動マネジメント,介護者自身のストレス・マネジメントなどの複合的介入(multi-component intervention)が効果的であることが系統的レビューで示されている.筆者らのグループでは,イギリスにおける大規模ランダム化比較試験で効果検証された,STrAtegies for RelaTives(START)プログラムを日本の現状に即したかたちに修正し,集団認知行動療法や訪問看護として実践と効果検証研究を行っている.
キーワード 認知症,家族介護者,認知行動療法,行動マネジメント,START(STrAtegies for RelaTives)
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論文名 遠隔音楽療法
著者名 小杉尚子,児玉直樹,清水幸子,數井裕光
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(4):354-361,2020
抄録 認知症の行動・心理症状(BPSD)の治療に推奨されている非薬物療法のひとつとして音楽療法がある.しかし,音楽療法士の数は少なく,かつ首都圏に偏在しているため,多くの認知症高齢者が音楽療法を十分に受けられる状況ではない.そこで筆者らは,通信技術を使って日本全国に音楽療法を届けるための「遠隔音楽療法」の研究開発を行っている.本稿では,遠隔音楽療法の技術的な課題や環境構築のノウハウ,および実証実験や臨床研究の結果等を紹介した.
キーワード 認知症,BPSD(行動・心理症状),音楽療法,インターネット,遠隔音楽療法
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論文名 病棟における認知症患者への身体拘束ゼロのためのケアマニュアルの開発
著者名 田中志子,尾中航介
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(4):362-373,2020
抄録 2002年より身体拘束を一切することなく,認知症の人の治療やケアを行っている大誠会内田病院のそのケア内容を身体拘束につながりやすい場面ごとに体系的に整理し,身体拘束ゼロのための『病棟における身体拘束ゼロのためのケアマニュアル;大誠会スタイル』を作成した.実際にこのケアマニュアルをいくつかの他病院に導入してもらったところ,おおむね良好な評価が得られており,今後,本ケアマニュアルが身体拘束を大きく減少できる方法論として広く普及していくことを願っている.
キーワード 身体拘束,ケア,認知症,せん妄,BPSD
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論文名 地域社会における認知症の症状への対応の整理と公開
著者名 吉山顕次,佐藤俊介,數井裕光,池田 学
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(4):374-380,2020
抄録 認知症の人が安心して生活できるまちづくりのために,認知症の人の認知障害のみならず,認知症の行動・心理症状(BPSD)への対応についてある程度の知識を得ることが重要である.そのため,実際にどのような対応が行われているかについて,アンケートを用いて調査し,正しい対応を調べ,その対応をマニュアル化した.そして,これらの対応が実践できるようにウェブサイトを作成して公開した.
キーワード 認知障害,BPSD,対応,アンケート,マニュアル
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論文名 学校における認知症教育を通してのBPSD予防;認知症を患った高齢者を理解してもらうために子ども世代への取組み
著者名 諸隈陽子,大石りさ,堅田佐知子,永野 緑,石本勝広,上村直人,數井裕光
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(4):381-386,2020
抄録 2019年6月に公開された「認知症施策推進大綱」では,さきに発表されてきた「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」「認知症施策推進総合戦略〜認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて〜(新オレンジプラン)」に則り,より認知症を患った人やその家族の視点が重視されている.認知症を患った人が慣れ親しんだ地元で生活を続けるためには,認知症の進行を遅らせるとともに,認知症の行動・心理症状(BPSD)の発現を予防することが重要であるので,地域住人への啓発活動として認知症サポーター養成講座の開催を継続している.本稿では,そのなかでも人格形成期である小学生,中学生と高校生を対象に行ってきた活動について報告した.
キーワード 認知症,学校,教育,認知症サポーター養成講座,地域で支える
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