論文名 | 老年精神医学分野におけるMRIを中心とした技術の発展 |
著者名 | 安野史彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(3):219-226,2020 |
抄録 | MRIの進歩は著しいものがあり,従来の構造的画像診断から機能を含めた統合画像診断法として発展しつつある.精神神経疾患の脳病態について,直接,検討を可能にする磁気共鳴画像(MRI)の精神科臨床における意義と必要性は今後ますます高まるものと考えられる.本稿では,現時点での撮像・解析方法の紹介と,また将来,発展すると思われる撮像法について,自験例での老年精神医学分野における応用を交えて,紹介を行った. |
キーワード | magnetic resonance imaging (MRI),resting functional MRI (rfMRI), diffusion tensor imaging (DTI), neurite orientation dispersion and density imaging (NODDI), diffusion tensor image analysis along perivascular space (DTI-ALPS) |
論文名 | アルツハイマー病におけるPETを中心とした技術の発展 |
著者名 | 互 健二,繁田雅弘,島田 斉 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(3):227-232,2020 |
抄録 | ポジトロン放出断層撮影(PET)はもとより研究用ツールとして開発され発展してきた経緯をもつが,[18F]fluorodeoxyglucose-PET(FDG-PET)などで得られた知見は今日の認知症診断に利用され,他の臨床検査にも応用されている.また近年では,アミロイドやタウといった異常蓄積タンパク質を可視化する神経病理イメージングが隆盛を迎え,さまざまなPET診断薬が開発されている.神経病理イメージングはアルツハイマー病(AD)の発症前診断を可能とする一方で,根本的治療薬のない現在,画像診断のもたらす心理的影響についても配慮する必要がある.本稿では,ADを対象とするPETを中心とした技術の発展について概説した. |
キーワード | アルツハイマー病,アミロイドイメージング,タウイメージング,告知 |
論文名 | Prodromal DLB診断におけるバイオマーカーの役割 |
著者名 | 藤城弘樹,岩本邦弘,宮田聖子,鳥居洋太,入谷修司,尾崎紀夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(3):233-244,2020 |
抄録 | 本稿では,レビー小体型認知症(DLB)の前駆状態(prodromal DLB)の診断について,「背景病理の同定」と「進展予測」の2つの側面から,指標的バイオマーカーと脳画像の現状を概説した.Prodromal DLB診断では,レム睡眠行動障害(RBD)の的確な把握が中心的な役割を担うため,睡眠医学と老年精神医学の連携が重要となる.DLBにおいて脳内?アミロイド(A?)蓄積と認知機能低下の関係が報告され,prodromal DLBを対象としたアミロイドイメージングの経時的変化の解明が期待される. |
キーワード | レビー小体病,アミロイドイメージング,老人斑,パーキンソン病,アルツハイマー病 |
論文名 | 前頭側頭葉変性症の画像診断;画像から病理を想像する |
著者名 | 小林良太,川勝 忍,林 博史,森岡大智,大谷浩一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(3):245-254,2020 |
抄録 | 前頭側頭葉変性症(FTLD)は,前頭葉や側頭葉の前方部に病変を有する臨床症候群であり,その背景病理は多岐にわたる.そのため,初期には行動障害型前頭側頭型認知症の臨床型をとりながらも,同時に,あるいはその後の経過で進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核変性症などを発症する症例をしばしば経験する.本稿では,FTLDの画像診断について,背景病理を推定しながら診療するためのエッセンスを解説した. |
キーワード | 前頭側頭葉変性症,神経病理,画像診断,MRI,SPECT,ドパミントランスポーター |
論文名 | 糖尿病と認知症;脳画像所見を中心に |
著者名 | 羽生春夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(4):255-263,2020 |
抄録 | 2型糖尿病患者では種々の神経心理学的異常がみられやすく,認知症の発症リスクも高い.脳画像検査においても,脳萎縮・大脳白質病変,脳血流・代謝の低下,神経線維構造の異常などが認められやすい.筆者らは,糖代謝異常が深く関与する認知症の一病型である糖尿病性認知症を提唱してきたが,本症はMRIやSPECT検査ではアルツハイマー病に特徴的な所見は認められないが,最近のアミロイド,タウPETを用いると特有な背景病理が推察される. |
キーワード | 糖尿病,糖尿病性認知症,MRI,SPECT,PET |
論文名 | アルツハイマー病における異常タンパクと神経炎症のヒト脳内連関の可視化 |
著者名 | 尾内康臣 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(3):264-270,2020 |
抄録 | アルツハイマー病(AD)における生体画像バイオマーカーを用いて,アミロイド?(A?)・タウ・神経障害に基づいた病態分類がある.死後脳病理で必ず観察されるものとしてミクログリア集叢やアストロサイトーシスがあるが,神経炎症はADに限った現象でないため,病態分類としては見逃されやすい.しかし,筆者らは神経炎症が重要な病態起点マーカーととらえている.本稿では,異常タンパク集積と神経炎症との関連の意義について画像的考察を行う. |
キーワード | microglia,neuroinflammation,TSPO,Alzheimer’s disease,positron emission tomography |
論文名 | 老年期うつ病;PETによる治療反応性予測 |
著者名 | 舘野 周,大久保善朗 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(3):271-275,2020 |
抄録 | 老年期うつ病では身体合併症が多く,薬剤の副作用も出やすいこと,さらには長期間の臥床で容易に日常生活能力や認知機能が低下することから,若年者のうつ病よりもより安全で効果的な治療戦略が求められる.陽電子放出断層撮影(PET)などの脳機能画像の進歩は,抗うつ薬の脳内薬物動態や治療による変化の検出を可能にしている.本稿では,PET研究の知見にふれながら,PETによる老年期うつ病の治療反応性予測の可能性について述べた. |
キーワード | 老年期うつ病,positron emission tomography,薬物療法,アミロイド関連うつ病 |
論文名 | 遅発性統合失調症・妄想性障害再考;分子神経病理学からの提言 |
著者名 | 横田 修,三木知子,池田智香子,原口 俊,石津秀樹,寺田整司,山田了士 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(3):276-289,2020 |
抄録 | 中年期以降に出現する若年発症の統合失調症と類似の状態は遅発性統合失調症と呼ばれてきた.その一部にはレビー小体や嗜銀顆粒等の加齢関連の神経変性過程が関与している可能性がある.軽度〜中等度の病変が多く,認知症化するのは一部である.高齢者では複数病理の重複が多く,MRI,SPECT,123I-MIBG心臓交感神経シンチグラフィー,ドパミントランスポーターシンチグラフィーを行っても病理背景の予想は困難である.遅発性の統合失調症や妄想性障害の病態解明にはPETや髄液マーカーによる異常タンパク蓄積の解析が必要で,将来的には分子治療が目指されると推測される. |
キーワード | α-シヌクレイン,嗜銀顆粒,進行性核上性麻痺,タウ,遅発性統合失調症 |