老年精神医学雑誌 Vol.31-12
論文名 進行期認知症の人の意思能力の評価と意思決定支援
著者名 五十嵐禎人
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(12):1269-1279,2020
抄録 意思能力判定や意思決定支援について,『意思決定支援ガイドライン』をもとに紹介した.ガイドラインでは,早期から関係者で意思決定支援チームを組み意思決定支援を尽くすこと,そのうえで,意思決定能力がないと判定される場合には,本人の選好・価値観をもとに本人の意思を推定し,その意思を十分に考慮したうえで代行決定を行うことが推奨されている.認知症の経過を考慮すると,こうした仕組みは認知症の人の人権擁護のために有益と思われる.
キーワード 認知症,意思能力,意思決定支援,成年後見制度,アドバンス・ケア・プランニング
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論文名 進行期の認知症患者の安全確保と身体拘束をしないケア
著者名 石川容子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(12):1280-1286,2020
抄録 認知症患者の安全確保を考えるとき,まずは,患者の穏やかな生活を目指すことが重要である.苦痛を緩和することが看護師の行うべきことであり,患者を縛って苦痛を与える「安全」とは何なのかを考える必要がある.転倒や転落,点滴などのチューブを抜いてしまうといったリスクだけに目を向けるのではなく,ケアの質を向上することこそが,最良のリスクマネジメントだと考える.
キーワード 認知症,安全,身体拘束,ケアの質
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論文名 進行期の認知症の経口摂取困難への対応;経管栄養・胃瘻をどう考えるか
著者名 飯島 節
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(12):1287-1294,2020
抄録 進行期認知症者では,しばしば経口摂取困難となり経管栄養や点滴などの人工的水分・栄養補給法の導入が検討されるが,それが本人にとって益となるというエビデンスは存在しない.経口摂取困難に対する方針決定においては,関係者間の十分なコミュニケーションに基づく共同意思決定が推奨される.わが国では高齢者介護施設における老衰による死亡が急増しており,高齢者における経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)は減少しているものと推定される.
キーワード 進行期認知症,経口摂取困難,胃瘻,PEG,経管栄養
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論文名 進行期の認知症のデイケアと在宅ケア;重度認知症患者デイケアの役割と利用実態
著者名 尾嵜遠見,熊谷諒子,古和久朋,前田 潔
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(12):1295-1301,2020
抄録 重度認知症患者デイケアは,認知症専門の通所型医療保険サービスであり,認知症の行動・心理症状(BPSD)等が重度である人を対象とする.本稿では,まず当該サービスについて概説し,その後,自験例を通してその利用実態や強みを紹介する.多職種の専門性を活かした関与,症状増悪時対応の優位性など,当該サービスにはさまざまな特色がある.介護保険サービスとの連携等,今後の課題もあるが,重度認知症患者デイケアが今後,さらに発展することが期待される.
キーワード 重度認知症患者デイケア,認知症デイケア,認知症,在宅ケア,多職種連携
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論文名 進行期の認知症の身体合併症医療
著者名 犬尾英里子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(12):1302-1307,2020
抄録 日本における高齢化率は上昇し続け,認知症患者は今後も増加していくことが予想される.多死社会とともに進行した認知症の終末期医療ついて,従来の「疾患を治す」医療から「人生の最期を支える」医療へ,医療のあり方についても徐々に変化している.最期を迎えた進行期の認知症患者・介護者(家族)が穏やかな時間を過ごすために必要な治療選択ができるよう,医師・他医療者は専門知識を提供し,支援することが求められている.
キーワード 進行期,認知症,身体合併症,終末期医療,延命治療
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論文名 認知症の人の看取りの実態と課題
著者名 田中志子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(12):1308-1318,2020
抄録 認知症のある人の看取り現場で感じる課題は,意思の疎通が困難になってからどんな最期を望むかを詳細に聞き取るむずかしさであるが,元気な間はなかなか「どう生ききりたいか」と聞くことも日本の文化では行われてこなかった.認知症が進んでも簡単な質問の仕方や工夫でできる限り本人の願いを吸い上げることと並行して,早い段階から人生の最後の過ごし方を話し合える環境をつくることが認知症のある人にとってはより重要ではないか.
キーワード 看取り,認知症,アドバンス・ケア・プランニング,エンドオブライフ・ケア,職員教育
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論文名 わが国と海外の認知症終末期医療
著者名 宮本礼子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(12):1319-1325,2020
抄録 わが国の認知症終末期医療は延命を重視するため,患者の尊厳とQOL(quality of life)はおろそかにされている.一方,欧米豪は認知症終末期に延命をしない.その理由は,@倫理,A本人意思の尊重,B死生観,C緩和医療の重視,等である.われわれが満足して人生を終えるためには,判断能力があるうちに終末期医療の希望を周囲に伝え,書き残すべきである.そして,家族と医療者はそれを尊重することが求められる.
キーワード 認知症,終末期医療,経管栄養,延命,緩和医療
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