老年精神医学雑誌 Vol.31-10
論文名 精神科病院における認知症患者の入院医療の現状と将来の展望
著者名 石井知行
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(10):1029-1040,2020
抄録 地域包括ケアシステム,地域共生社会のバックアップとしての精神科における認知症病棟は以下の機能が重要である:@重度の認知症の行動・心理症状(BPSD),せん妄などのため介護負担が重い場合の緊急入院,A薬物療法・非薬物療法によるBPSDの改善・管理,BADL・IADLの維持・向上のためのリハビリテーション,C身体合併症対応,D最終段階における緩和ケア.そこで,これらの機能を充実するための循環型認知症医療・介護連携システムにおける以下の病棟機能分化を紹介した:@認知症急性期治療病棟,A認知症治療・リハビリ病棟,B最重度認知症療養病棟,C身体・精神合併症対応病棟(MPU-D).さらに,認知症治療・リハビリ病棟におけるBPSD対処技法のためのBPSD行動分析,生活機能障害改善のための多職種連携総合食事リハビリテーションについても紹介した.
キーワード 認知症病棟早期退院阻害要因,循環型認知症医療・介護連携システム推進事業,認知症病棟機能分化,BPSD行動分析,認知症多職種連携総合食事リハビリテーション
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論文名 認知症の検査入院の意義
著者名 佐竹祐人,橋本 衛
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(10):1041-1048,2020
抄録 認知症診療において多くの検査は外来で実施可能であり,検査入院の必要性に懐疑的な意見も少なくない.本稿では,筆者らが所属する施設の最近のデータや事例を提示しつつ,@十分な症状観察,A診療時間の確保,B人生の転機としての入院,といった観点から認知症診療における検査入院の意義を論じた.認知症診断が本人および家族に与える衝撃は小さくない.医療が患者や家族のニーズに応えるための一手段として,検査入院はもっと積極的に活用されてよいと考える.
キーワード 認知症,検査入院,診断,症状観察,疾患受容
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論文名 認知症患者の精神科病院における急性期治療
著者名 中村 満
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(10):1049-1057,2020
抄録 精神科病院のスーパー救急病棟(精神科救急入院料算定病棟)における認知症医療の実態調査を行い,その役割について検討した.精神科救急医療の対象となった認知症患者では,入院の経緯やアクセス,入院前の支援体制,身体合併症などにおけるミスマッチが生じていた.精神科救急医療へつながることが,問題点を浮き彫りにし,その解決へと導く契機となっていた.地域包括ケアシステムによるセーフティ・ネットがあっても,一定数の認知症患者がそこからこぼれ落ちてしまう.精神科病院は,これらの認知症患者に対して精神科救急医療を提供し,さまざまな社会資源と連携をとることで,セーフティ・ネットの隙間を埋める中心的な役割を担っている.
キーワード 認知症,精神科救急,精神科病院,地域支援,身体合併症
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論文名 どのようなBPSDを有する患者が精神科病院での入院治療に至りやすいのか
著者名 保住亜沙美,互 健二,品川俊一郎,繁田雅弘,數井裕光
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(10):1058-1065,2020
抄録 認知症患者の多くが,何らかの行動・心理症状(BPSD)を呈する.BPSDが強く家庭や地域での対応が困難な場合は,やむを得ず精神科病床での入院治療が検討されることもあるが,入院によるADL(activities of daily living)の低下や入院の長期化も懸念され,その導入は慎重になされる必要がある.本稿では,筆者らの行った多施設共同前向き観察研究をもとに,どのようなBPSDを有する患者が入院に至りやすいのかを検討し,BPSDに対する入院治療の判断の標準化の可能性について考察した.
キーワード 認知症,BPSD,入院治療,精神科病床
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論文名 精神科病院における退院支援
著者名 柏木一恵,田坂悦子,福田 光,繁信和恵
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(10):1066-1075,2020
抄録 認知症患者の精神科病院での入院治療は,身体拘束や隔離の多さなどから批判にさらされることもある.しかし,幻覚妄想や興奮・攻撃性などの精神症状の悪化をきたし,在宅・施設介護が困難になった際には,精神科病院での入院治療は,最後の砦となっている.入院が長期化する事例は,本人の精神症状だけでなく,介護環境にもさまざまな困難を抱えていることが多い.本稿では,精神科での認知症患者の退院支援における,精神保健福祉士(PSW)を中心とした多職種の粘り強いかかわりを紹介した.
キーワード 精神保健福祉士,退院支援,認知症,精神科入院,認知症治療病棟
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論文名 総合病院における身体合併症を有する認知症患者のケア
著者名 鵜飼克行,小田原俊成
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(10):1076-1081,2020
抄録 身体合併症治療のために入院する認知症患者は,高率に認知症の行動・心理症状(BPSD)・せん妄状態を呈するため,「BPSD・せん妄治療と身体疾患の急性期治療の両立」が困難な場合が多く,大きな問題となってきた.この問題解決のため,一般総合病院では「認知症サポートチーム」などの多職種協働でのケアが推進されてきたが,「専門的治療を要する身体合併症に罹患し,かつ医療保護入院が必要な激しいBPSD・せん妄を呈した症例」にも対応できる治療設備と構造を有した医療施設(高度医療が実施できる病床を備える精神科閉鎖病棟を有する総合病院)の整備はいまだ十分ではない.その一方で,「総合病院における身体合併症を有する認知症患者のケア」には,正常な若者の場合とは異なるいくつかの意義がある.この入院意義について,具体的に例を挙げて解説した.
キーワード 認知症の行動・心理症状(BPSD),せん妄,身体合併症,総合病院
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論文名 精神科病院における身体合併症を有する認知症患者のケア
著者名 井藤佳恵
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,31(10):1082-1087,2020
抄録 認知症があることは急性期治療を手控える理由にはならない.しかし一方で,認知症高齢者の身体合併症医療は,狭義の医療的観点からのみ医療方針をとることが本人のQOLの維持・向上に必ずしも寄与しない.認知症高齢者の身体合併症治療のための入院は,急性期医療の場であると同時に,人生の終末期に向かうこれから先の時間を考える契機となり,患者本人がこれから先の時間をどこでどのように過ごしたいのか,そのために医療はどうあるべきなのか,医療になにができるのか,end-of-life care(エンドオブライフ・ケア)の視点をもって検討する必要がある.
キーワード 認知症,身体合併症医療,end-of-life care,quality of life
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