老年精神医学雑誌 Vol.30-7
論文名 神経心理検査開発研究:パレイドリア・テスト;精神症状をいかに測定するか
著者名 西尾慶之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,30(7):729-736,2019
抄録 記憶や言語などの認知障害の評価には洗練された神経心理検査が用いられるのに,なぜ幻覚・妄想や脱抑制などの精神症状の評価には質問式や観察式などの泥臭い方法しかないのか? 認知症診療を通じて出会う症状のなかで最も不思議で深遠な症状のひとつであるレビー小体型認知症の幻視をもっと格好いい方法で評価するためにパレイドリア・テストは作成された.パレイドリア・テストの開発過程は,日常診療のなかに多くの新しい発見の萌芽が転がっていることを例示している.
キーワード レビー小体型認知症,幻視,視空間認知,代用尺度,神経心理検査
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論文名 海外の認知機能検査の日本語版作成研究の要点;ACE-V日本語版標準化を例にして
著者名 竹之下慎太郎,寺田整司,三木知子,横田 修,山田了士
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,30(7):737-741,2019
抄録 これまで,世界中で数多くの認知機能検査が作成されてきた.しかし,海外で作成された認知機能検査を和訳して日本に持ち込んでも,そのまま臨床で使用することはできず,日本語版として標準化する手順が必要になる.筆者らのグループでは,海外で開発された認知機能検査の日本語版を作成し,その信頼性と妥当性を検証する研究を行ってきた.本稿では,2019年に日本語版の検証を終えたAddenbrooke’s Cognitive Examination-V(ACE-V)について述べながら,海外の認知機能検査を日本に標準化する際の要点を述べた.
キーワード Addenbrooke’s Cognitive Examination,ACE,軽度認知障害,神経心理検査,認知機能検査
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論文名 老年精神医学における神経画像研究へのいざない;特発性正常圧水頭症(iNPH)の画像を含めて
著者名 高橋竜一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,30(7):742-750,2019
抄録 老年精神医学研究において神経画像研究は活発に行われているが,近年さまざまなソフトウェアが開発されており,初学者にとってそれらの取捨選択や適応については難解に思われるかもしれない.本稿では筆者がこれまでに発表した神経画像論文を適宜紹介しつつ,これらのソフトウェアの紹介や適応例について,さらには神経画像研究の立案や研究の実施手順および過去論文を読み解く際の留意点について詳述した.最後に,特発性正常圧水頭症(iNPH)における筆者らの最新研究を紹介した.
キーワード MRI,SPECT,iNPH,正常圧水頭症,神経画像
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論文名 治験:レビー小体型認知症(DLB)に対する治験
著者名 森 悦朗
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,30(7):751-757,2019
抄録 レビー小体型認知症(DLB)は,アルツハイマー病に次いで多い変性性認知症である.DLBにおける治療の主たるターゲットである認知障害,精神症状・行動異常,パーキンソニズムに対して,いくつかの薬剤が治験で検討されてきた.本稿では,そのなかで,筆者がかかわってきた治験を主として取り上げ,治験の重要性,研究の実施手順,実施する際の留意点,解析方法などについて解説した.
キーワード レビー小体型認知症(DLB),治験,ランダム化対照試験(RCT),ドネペジル
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論文名 認知症治療薬に対するメタ解析の重要性とその手法
著者名 松永慎史,武地 一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,30(7):758-766,2019
抄録 昨今,医療者には科学的根拠に基づいた医療(EBM)が求められている.なかでも無作為化比較試験(RCT)を対象とした系統的レビューとメタ解析は,そのエビレンスレベルの高い研究手法から,日常診療や診療ガイドラインなど幅広く活用されている.本稿では,認知症治療薬に対するメタ解析の意義とその研究手法について解説した.
キーワード 認知症,治療薬,メタ解析,メタアナリシス,meta-analysis
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論文名 認知症の疫学研究:久山町研究
著者名 小原知之,二宮利治
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,30(7):767-772,2019
抄録 認知症の疫学研究は循環器疾患や悪性腫瘍の疫学研究に比べて,その疾患特異的な特徴や社会的偏見から調査がむずかしい.福岡県久山町では,1985年より高齢住民を対象とした精度の高い認知症の疫学調査が進行中である.時代の異なる認知症有病率調査の成績を比較した結果,認知症の有病率は人口の高齢化を越えて上昇していた.また,認知症のない久山町高齢住民を長期間追跡した成績を用いて日本人における認知症の危険因子や防御因子を明らかにした.
キーワード 疫学,認知症,横断研究,前向きコホート研究,危険因子
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論文名 認知症に対する脳波研究の重要性と脳波解析手法の進歩
著者名 青木保典,石井良平,畑 真弘,池田俊一郎,岩瀬真生,池田 学
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,30(7):773-777,2019
抄録 脳波は,ハンス・ベルガーにより20世紀初頭に発見され,てんかん,意識障害,認知症の補助診断に用いられてきた.しかし,近年,脳波解析手法は目覚しい進歩をみせ,大脳皮質の電気活動を画像マップ表示できるようになり,脳疾患の病態解明,鑑別診断に有用な情報がさらに得られるようになってきている.本稿では,脳波研究の重要性,脳波論文の読み方,研究の実施手順,実施する際の留意点を解説し,脳波解析手法の進歩とそれらを用いた当研究室の研究成果を紹介した.
キーワード 脳波,認知症,信号源推定,eLORETA,ICA
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論文名 臨床神経病理学的研究;1例の症例研究が系統研究につながる
著者名 河上 緒
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,30(7):778-783,2019
抄録 医学研究のなかで神経病理学の歴史は古い.近年,神経画像をはじめとする臨床診断技術の発展は目覚しいが,神経変性疾患の確定診断には,いまだ病理学的検索が不可欠である.個々の症例に対して臨床診断と病理診断の乖離を評価することは,診断精度を向上させるとともに,疾患の病態解明にもつながる.本稿では,1例の症例研究から始まり系統研究に至るまでの一連の神経病理学研究の流れを,筆者が経験した具体例とともに概説した.
キーワード 神経病理,剖検,神経変性疾患,ブレインバンク,病態解明
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