論文名 | 抗認知症薬開発の歴史と展望 |
著者名 | 武田雅俊 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(6):597-609,2019 |
抄録 | わが国は世界のトップランナーとして超高齢社会を走り続けている.急速な社会の高齢化は多くの社会問題を提起しており,単に医薬品を開発するだけでなく,認知症の人を含めた高齢者が生きがいをもって生活することのできる社会を構築しなければならない.本稿では,この50年間に経験してきた,アルツハイマー病の概念,病態研究,治療薬開発について,その時々にどのような考えにより変化してきたかを振り返りながら,抗認知症薬開発の歴史を,@抗知性薬と脳代謝・循環改善薬の時代,Aアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬・NMDA受容体拮抗薬の時代,Bγ-セクレターゼモジュレイター・アミロイドワクチンの時代に区分し,さらに今後の治療薬開発の可能性について概説したい. |
キーワード | アルツハイマー病治療薬,抗知性薬,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬,アミロイド蛋白,タウ蛋白,ニューロフィラメント蛋白 |
論文名 | 抗認知症薬4剤の特徴と比較 |
著者名 | 針谷康夫,東海林幹夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(6):610-617,2019 |
抄録 | アルツハイマー型認知症に対して,現在投与可能な4種類の抗認知症薬(ドネペジル,ガランタミン,リバスチグミン,メマンチン)それぞれの特徴,長所および短所について概説し,各症例の臨床的特徴,各薬剤の特徴,生活背景を考慮した選択方法を示した.治療は『認知症疾患診療ガイドライン』に沿って開始するが,薬剤の切り替え,中止についての明確な基準はない.中止する場合,認知機能やADLの悪化の可能性を念頭におき,患者背景も考慮して,本人,家族と十分話をしたうえで決定することが重要である. |
キーワード | アルツハイマー型認知症,ドネペジル,ガランタミン,リバスチグミン,メマンチン |
論文名 | 医療経済的観点から考える抗認知症薬の費用対効果について |
著者名 | 中村 祐 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(6):618-623,2019 |
抄録 | 4つの抗認知症薬による進行抑制効果は正確には不明であり,その効果は単剤で使用する限りは大差ないと考えられている.メマンチンとコリンエステラーゼ阻害薬の併用効果が相加的である可能性がある.さまざまな角度からの検討では,現状の薬価設定は妥当ではないかと考えられる.しかし,現在の抗認知症薬は中止するとその効果は失われるので,継続的に投与されていることが前提となる.一方,病態そのものに対する進行抑制に関しては現在効果が証明されている薬剤はなく,試算不可というしかないのが現状である. |
キーワード | anti-dementia drugs,donepezil,galantamine,rivastigmine,memantine |
論文名 | アルツハイマー病以外の認知症疾患に対する治療薬開発 |
著者名 | 田中稔久 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(6):624-632,2019 |
抄録 | アルツハイマー病(AD)の記憶障害を抑制するためにアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が開発され,この薬剤は疾患の進行抑制に有効であり,またその病態を根本的に抑制するdisease modifying therapyが現在開発中である.しかし,AD以外にもさまざまな認知症が存在し,これに対する薬理学的アプローチも行われている.たとえば,レビー小体型認知症(DLB)に対しては,ドネペジルの有効性が示され,すでに臨床で使用されている.AD以外の認知症疾患に対する治療薬開発は,今後ますます重要性を帯びてくるものと考えられる. |
キーワード | レビー小体型認知症,前頭側頭型認知症,進行性核上性麻痺,α-シヌクレイン,タウ,プログラニュリン,C9orf72 |
論文名 | <根本治療薬の開発と現状について> アルツハイマー病の根本治療薬創薬を目指して;コリンエステラーゼ阻害薬の開発者の立場から |
著者名 | 杉本八郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(6):633-642,2019 |
抄録 | 世界に先駆けて日本からアルツハイマー病(AD)の治療薬ドネペジルが開発されてから20年以上になる.しかし,現行のAD治療薬は対症療法でありADの進行を止めるものではない.その後,多くの研究者たちが進行を止める治療薬の開発に注力して20年近くになる.しかし,いまだ開発に成功していない.その理由は,私見ではあるが,ADの原因が多岐にわたっているためと思われる.アミロイド?,タウタンパクが原因物質と考えられている.しかし,それ以外の要因があることを示唆する論文も多い.本稿では,筆者らの研究とあわせて原因を考察したい. |
キーワード | アルツハイマー病治療薬,ドネペジル,アセチルコリンエステラーゼ,アミロイドβ,タウタンパク |
論文名 | <根本治療薬の開発と現状について> アルツハイマー病に対する疾患修飾薬開発戦略;企業臨床開発の立場から |
著者名 | 伊藤 啓,八木拓也,津野昌紀 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(6):643-652,2019 |
抄録 | アルツハイマー病(AD)の疾患修飾薬が切望されるなか,多くの候補薬剤の臨床開発が進められてきた.新規AD疾患修飾薬の臨床開発成功のためには,対象とする症例の選択,治療介入のタイミング,適切な臨床エンドポイントとバイオマーカーの活用など,臨床試験(治験)デザインの工夫が必要である.臨床研究はより早期の病態ステージを対象とした疾患予防(primaryおよびsecondary prevention)へと拡大しつつある.発症前または超早期症例の登録を推進する仕組み,長期の臨床観察が必要であり,産官学連携のもと基盤体制の構築が急務である. |
キーワード | アルツハイマー病,疾患修飾薬,adaptive design,バイオマーカー,臨床評価指標 |
論文名 | <次世代の抗認知症薬の開発状況> 抗アミロイドβ系薬剤 |
著者名 | 杉本あずさ,小野賢二郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(6):653-662,2019 |
抄録 | ・抗アミロイドβ(Aβ)系薬剤は,アルツハイマー病(AD)の背景にアミロイド仮説を想定し,疾患修飾を目指すものである. ・Aβ産生抑制であるβ-セクレターゼ(BACE)阻害薬や,分解促進の抗Aβ抗体などで,第V相臨床試験が行われてきた. ・Aβの毒性に関するオリゴマー仮説からは,Aβ凝集抑制も有力な作用点と考えられ,治験薬の開発が進められている. ・今後は,ADの早期あるいはプレクリニカル期からの投薬や,バイオマーカーを用いた診断や評価により,薬剤の開発が進むと考えられる." |
キーワード | アミロイド仮説,オリゴマー仮説,β-セクレターゼ(BACE)阻害薬,抗Aβ抗体,プレクリニカル期 |
論文名 | <次世代の抗認知症薬の開発状況> タウを標的としたアルツハイマー病治療薬開発の現状 |
著者名 | 栗原正典,岩田 淳 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(6):663-668,2019 |
抄録 | アルツハイマー病においてその病態の上流にあるという考えからアミロイドβ(Aβ)を標的としたさまざまな薬剤の治験が行われてきたが,少なくとも臨床症状が出現してからではAβはすでに多量に蓄積しており,介入による症状改善がむずかしいのではないかと考えられてきている.より遅くに蓄積が広がり,脳萎縮や臨床症状とより密接に関連すると考えられているタウに対する薬剤開発がさまざまなかたちで試みられている. |
キーワード | アルツハイマー病,タウ関連薬,治験,タウオパチー |