論文名 | 高齢者の感覚機能と日常生活 |
著者名 | 北川公路 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(2):131-136,2019 |
抄録 | 加齢につれて感覚器の機能の低下がみられること,その機能低下のために日常生活・社会生活に支障をきたしていることが明らかである.高齢者の感覚機能の低下には個人差はあるものの生活の質を下げるものもあれば,引きこもりの要因のひとつになるものや生命が危険にさらされるものもある.また,認知症のリスクファクターにつながるような感覚機能の低下が起きるケースもある. |
キーワード | 高齢者,感覚機能,日常生活,生活の質,認知症 |
論文名 | 嗅覚の低下と認知症および芳香療法について |
著者名 | 塩田清二,平林敬浩,竹ノ谷文子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(2):137-144,2019 |
抄録 | 嗅覚機能と認知機能に相関性のあることがヒトでの臨床研究で明らかになり,嗅覚機能の低下が認知症の発症と進展に関係すると考えられる.精油などの嗅覚刺激により脳血流量の上昇と脳機能の活性化がみられることが動物やヒトでの実験でわかっている.認知症の患者に芳香療法を施術すると中核症状や周辺症状の改善がみられることを筆者らは明らかにした.認知症,とくにアルツハイマー病の予防・改善について芳香療法の研究をさらに行う必要がある. |
キーワード | 認知症,アルツハイマー病,嗅覚,芳香療法,精油 |
論文名 | パーキンソン病およびレビー小体型認知症における嗅覚障害 |
著者名 | 馬場 徹,武田 篤 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(2):145-150,2019 |
抄録 | パーキンソン病およびレビー小体型認知症は頻度の高い神経変性疾患で残存神経細胞へのレビー小体の出現を病理学的特徴とするが,ともに早期から嗅覚障害を生じやすいことが近年明らかとなっている.パーキンソン病およびレビー小体型認知症における嗅覚障害は嗅球および高次嗅覚野への病理進展を反映した症状であり,早期診断だけでなく認知機能悪化リスクの推定などにも有用と考えられている. |
キーワード | パーキンソン病,レビー小体型認知症,嗅覚障害,発症前診断,認知症予測 |
論文名 | 視覚・触覚性認知の低下と認知症 |
著者名 | 鈴木匡子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(2):151-155,2019 |
抄録 | 認知症では,各疾患における機能低下部位を反映し,さまざまなレベルでの視覚性・触覚性の機能障害が生じる.アルツハイマー型認知症では視力など基本的な視知覚の障害と,主に視覚背側路の機能低下を反映した視空間的な認知機能の低下がみられる.後部皮質萎縮症は多くが非典型アルツハイマー型認知症で,多彩な視覚・空間認知障害が前景に出るのが特徴である.レビー小体型認知症,パーキンソン病でも色覚など基本的な視知覚の障害がみられる.さらに,視覚背側路・腹側路の両者が障害され,視空間的な認知機能低下だけでなく,形態・色・質感など対象認知の障害もみられる.レビー小体型認知症では幻視や錯視も特徴的である.認知症疾患における触覚性認知機能障害の報告は多くないが,大脳皮質基底核変性症では1/4ほどの症例で皮質性感覚障害を認める.以上より,視覚・触覚の機能障害をとらえることが認知症疾患の鑑別に役立つと考えられる. |
キーワード | 視空間認知障害,後部皮質萎縮症,視覚性誤認(錯視),アルツハイマー型認知症,レビー小体型認知症 |
論文名 | 聴覚の低下と認知症 |
著者名 | 内田育恵 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(2):156-161,2019 |
抄録 | 高齢期の難聴は頻度が高く,とくに認知症危険因子としても注目されており,長寿国家における対策は喫緊である.本稿では,聴覚の低下と認知症の関係についての仮説的因果モデルを解説し,数多くの研究報告のうち縦断研究のみをまとめたシステマティックレビューの結果を紹介し,補聴器の効果についての知見をあわせて概説した. |
キーワード | 難聴,認知機能障害,アルツハイマー病,システマティックレビュー,補聴器 |
論文名 | 味覚の低下と認知症 |
著者名 | 小河孝夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(2):162-167,2019 |
抄録 | アルツハイマー病の味覚機能に関しては,これまでに,認知機能が軽度〜中等度の患者を対象に味覚閾値について検討されており,味覚同定能が低下すると考えられている.しかし,研究結果に一貫性がなく,高度な低下ではないことが推測される.舌局所の味覚機能を評価する濾紙法では,味覚閾値の上昇を認めたという報告が多いが,口腔全体で味覚機能を評価する全口腔法での味覚閾値は対照群と同程度であったと報告されている.病態については,味覚神経の電気刺激による反応は対照群と同程度であることに対して,味液を使用した味覚同定能は低下していたという結果から,第一次味覚野における味覚識別力が低下していることが推測される.また,島皮質の血流低下により,味を想起する能力も低下していることも報告されている. |
キーワード | アルツハイマー病,味覚,濾紙法,全口腔法,病態 |
論文名 | 感覚機能の低下と老年期の精神障害 |
著者名 | 寺尾 岳 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(2):168-175,2019 |
抄録 | 高齢者において,認知症によって幻覚や妄想が生じることはしばしば経験するが,認知症が顕在化していない状態で,視覚や聴覚などの感覚器の機能低下により幻覚が生じることがしばしばある.主なものは,シャルル・ボネ症候群と音楽性幻聴である.該当する症例に遭遇したときには,聴力や視力の補正や,場合によっては原因薬剤の中止が必要である.それらが奏効しないときには治療薬の投与を考慮することになる. |
キーワード | シャルル・ボネ症候群,音楽性幻聴,感覚遮断,解放性幻覚 |