論文名 | <T.総論> アルツハイマー病遺伝子研究のこれまでの歴史 |
著者名 | 桑野良三 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(11):1195-1200,2019 |
抄録 | 病気の多くは遺伝子と密接に関連していることは,家族歴のある場合に発症頻度が一段と高くなることからも予想される.アルツハイマー病についても,若年発症の家族性と大多数を占める晩期発症の孤発性からなる.病気の表現型や発症機序の解明に原因遺伝子およびリスク遺伝子の探索が,大規模検体収集コンソーシアム,解析機器の開発,コンピュータの性能,高度な情報学などがお互いを牽引しながら急激に発展した歴史がある. |
キーワード | DNA,一塩基多型,ゲノムワイド関連解析,アルツハイマー病,レアバリアント |
論文名 | <T.総論> 認知症の遺伝子研究のこれから |
著者名 | 宮川統爾,岩田 淳 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(11):1201-1207,2019 |
抄録 | ゲノムワイド関連解析(GWAS)によるcommon variantの検索,次世代シーケンサーの登場によって可能となった全ゲノムシーケンスおよび全エクソンシーケンスによるrare variantの検索,によって,アルツハイマー病をはじめとする認知症疾患の遺伝子研究はこの20年間で飛躍的に加速した.遺伝子研究で同定された疾患感受性遺伝子の機能をもとに,疾患の病態生理を理解し,疾患修飾薬による先制医療へとつなげていくことが期待される. |
キーワード | genome-wide association study,missing heritability,次世代シーケンサー,全ゲノムシーケンス,全エクソンシーケンス |
論文名 | <T.総論> 認知症のエピジェネティクス研究 |
著者名 | 小林伸行,品川俊一郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(11):1208-1212,2019 |
抄録 | エピジェネティクスは遺伝子の後天的な修飾による発現制御の仕組みとされる.エピジェネティクスは加齢,炎症や感染の影響を受けることが知られ,認知症疾患の病態にもエピジェネティクスが関与することが想定されている.現在までも,認知症疾患におけるエピジェネティクス研究の成果が多数報告されている.本稿では,エピジェネティクスの基礎を概説し,認知症疾患,とくにアルツハイマー病において認めるDNAメチル化変化について,筆者らの研究も交えて述べた. |
キーワード | 認知症,アルツハイマー病,エピジェネティクス,DNAメチル化,老化 |
論文名 | <T.総論> 認知症の遺伝子研究は臨床にどこまで有意義なのか;その現状と展望 |
著者名 | 森原剛史,永田健一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(11):1213-1219,2019 |
抄録 | 神経変性疾患による認知症に対する効果的な治療法や予防法がない現時点では,研究とリンクしていない一般臨床現場でルーチンテストとしての遺伝子検査はまだ推奨されていない.1990年代に家族性アルツハイマー病の原因遺伝子APP,PSEN1,PSEN2や,孤発性アルツハイマー病のリスク遺伝子APOEが同定され,20年以上が経つ.本稿では,本人家族の希望・理解や研究の関与という条件が整った場面も含めて,遺伝子検査の有用性の現時点での到達点について述べた.また,遺伝子と疾患分類の関係や今後の展望について,一部私見も交えながら述べた. |
キーワード | 認知症,遺伝子検査,家族歴,polygenic risk score,プレシジョン医療 |
論文名 | <T.総論> 認知症の遺伝についての家族への説明と遺伝カウンセリング |
著者名 | 嶋田裕之 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(11):1220-1225,2019 |
抄録 | 近年,遺伝子解析技術の進歩により,比較的容易に遺伝子診断を行うことが可能となった.一方,認知症患者を抱える家族からは,自分や家族への病気の遺伝を心配して相談や遺伝子検査の希望を受けることがあり,認知症専門医も正しい遺伝関連知識をもって相談に当たることが求められている.本稿では,認知症の遺伝について,家族への説明のポイントとして,発症前診断や遺伝学的検査などを解説するとともに,遺伝カウンセリングなど臨床医が知っておくべき遺伝に関する事項を概説した. |
キーワード | 認知症,アルツハイマー病,発症前診断,遺伝カウンセリング |
論文名 | <U.各論> アルツハイマー病に関与する遺伝子;ゲノムワイド関連解析で見いだされた感受性遺伝子 |
著者名 | 宮下哲典,原 範和,劉 李?,春日健作,池内 健 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(11):1226-1235,2019 |
抄録 | アルツハイマー病(AD)は糖尿病などと同じく「ありふれた疾患」である.遺伝的素因を背景にさまざまな環境要因が加わって潜行性に発症し,緩徐に不可逆的に進行する.ADは認知症全体のおよそ6〜7割を占め,最も頻度が高い.加齢が最大のリスク要因ではあるが,遺伝要因の寄与率はおよそ6割と見積もられている.これは,先天的な疾患感受性要因としてバリアント情報を軽視できないことを意味している.本稿では,AD感受性遺伝子について最新の知見を概説した. |
キーワード | アルツハイマー病,ありふれた疾患,原因遺伝子,感受性遺伝子,バリアント |
論文名 | <U.各論> 血管性認知症に関与する遺伝子;CADASIL,CARASILを中心に |
著者名 | 水田依久子,水野敏樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(11):1236-1243,2019 |
抄録 | 孤発性血管性認知症の臨床像や病態は多様性が大きいため,感受性遺伝子を同定するのは困難である.血管性認知症の多くは脳小血管病を基盤として発症するが,そのなかで遺伝性脳小血管病は血管危険因子と無関係に,単一遺伝子の変異により発症する比較的均一な病態である.本稿では,主要な遺伝性脳小血管病であるCADASILとCARASILを中心に概説した. |
キーワード | 血管性認知症,遺伝性脳小血管病,CADASIL,CARASIL |
論文名 | <U.各論> 前頭側頭葉変性症に関与する遺伝子 |
著者名 | 後藤志帆,森 康治 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(11):1244-1252,2019 |
抄録 | 前頭側頭葉変性症(FTLD)は,前頭葉と側頭葉を中心とした神経変性により行動障害や言語障害を呈する.アジアでは孤発例が多いことが知られているが,孤発例でも,家族発症例でも,最終的にタウやTDP-43の蓄積をみるなど病理の共通性は高い.本稿では,MAPT,GRN,C9orf72,TBK1変異例などを中心に,FTLDの臨床,病理,遺伝子相関について最近の知見を概説した. |
キーワード | FTLD,MAPT,TARDBP,GRN,C9orf72 |
論文名 | <U.各論> その他の認知症に関する遺伝子;DLB/PDD, 紀伊ALS/PDCおよびHD |
著者名 | 小久保康昌 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(11):1253-1260,2019 |
抄録 | 認知症を伴うパーキンソン病(PDD)とレビー小体型認知症(DLB)では多くの遺伝子変異が報告されており,変異と表現型との関係も複雑である.紀伊半島とグアム島の筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS/PDC)では,原因遺伝子は特定されていない.ハンチントン病(HD)では,近年発病年齢に影響を与える修飾遺伝子が複数発見されている. |
キーワード | 遺伝子,認知症,パーキンソン病,紀伊ALS/PDC,ハンチントン病 |