論文名 | 認知症の疫学研究とこれからの課題;特集にあたって |
著者名 | 粟田主一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(4):343-349,2018 |
抄録 | 21世紀初頭にわが国で実施された認知症の有病率調査は,われわれの社会に,認知症を「我が事」と考える新たな機運をもたらしている.認知症の有病率・発生率の推計,危険因子の同定,病態解明,予防法・診断法・治療法の確立は,疫学研究の重要な課題であろう.それと同時に,認知症とともに生きる人々の生活を知り,「希望と尊厳をもって暮らせる社会」の実現を目指した疫学研究を行うことが,われわれが生きる今日の社会の不可欠な課題であることを忘れてはならない. |
キーワード | 超高齢者,若年性認知症,疫学研究,有病率,発生率 |
論文名 | わが国の認知症の有病率調査 |
著者名 | 朝田 隆 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(4):350-357,2018 |
抄録 | 2012(平成24)年10月現在,65歳以上高齢者において,認知症の有病率は15%(462万人)であり,軽度認知障害(MCI)の13%(400万人)と合わせた有病率は28%(862万人)と報告された.公式な発表はされていないが,2018年1月には前者はおよそ600万人,後者は550万人と想像される.正確な数はともかく,65歳以上人口の30%以上に認知機能障害がみられ,今後もさらに増加することは必須である.このことは,わが国の政策方針やあり方をも左右する案件である.それだけに今後は適切にこうした疫学調査を繰り返すとともに,寿命以上の速度で心身の健康寿命が延びていくような新たな方法の確立が不可欠である. |
キーワード | 認知症,軽度認知障害,有病率,高齢化 |
論文名 | 若年(性)認知症の疫学 |
著者名 | 宮永和夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(4):358-368,2018 |
抄録 | 若年(性)認知症は,18〜64歳までの間に発症し,現在も64歳までにとどまる認知症の総称である.第2回全国調査では人口10万人対47.6人と推定されたが,イギリスの1/2倍,オーストラリアの1/3倍であった.認知症の種類では血管性認知症が最も多く,次いでアルツハイマー型認知症(AD)であったが,欧米ではADが最も多かった.また,欧米に多い前頭側頭葉変性症は日本では少なかった.現時点では,頻度や種類の違いがなにによるのかはわかっていない. |
キーワード | 若年認知症,血管性認知症,アルツハイマー型認知症,高次脳機能障害,改正個人情報保護法 |
論文名 | 海外の認知症有病率研究 |
著者名 | 新美芳樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(4):369-375,2018 |
抄録 | 認知症が世界的な課題となっており,現在の世界の認知症の人の数は,WHO(世界保健機関)のFact Sheetによれば,2015年において世界で約5000万人,2050年までに3倍になると推計されている.日本においては,認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)が策定され,さまざまな対応が推進されている.これらの策定には認知症の有病率の把握が重要になる.本稿では,新オレンジプラン策定時の日本における有病率推計と,海外の認知症有病率研究について述べる. |
キーワード | 認知症,有病率調査,新オレンジプラン |
論文名 | 認知症の発症率と危険因子;久山町研究 |
著者名 | 二宮利治 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(4):376-383,2018 |
抄録 | わが国では,超高齢社会を迎えて認知症患者の急増が医療・社会問題となっている.福岡県久山町で継続中の疫学調査の成績を用いて,地域高齢住民(65歳以上)における認知症の性・年齢調整後発症率(対千人年)の時代的推移を検討したところ,1988〜2012年にかけて25.9から41.6と有意に増加した.認知症の危険因子を探索した結果,高血圧,糖尿病,喫煙は認知症の有意な危険因子であった.一方,豆腐,野菜,牛乳を中心とした食習慣や定期的な運動習慣を有する者は認知症の発症リスクが低かった.認知症を予防するうえで,糖尿病と高血圧の適切な予防と管理に加え,禁煙,定期的運動,バランスのよい食事を心がけることが重要である. |
キーワード | 認知症,アルツハイマー型認知症,血管性認知症,危険因子,疫学研究 |
論文名 | 認知症の臨床疫学的研究 |
著者名 | 池田 学 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(4):384-390,2018 |
抄録 | 認知症の臨床疫学的研究について,病因や有病率に関する調査としては一般的なcommunity-based(ないしpopulation-based)epidemiology studyと比較し,長所と限界を整理した.また,疾患別の認知症の行動・心理症状(BPSD)の有症率に関する調査や関連因子の研究における有用性,バイオマーカーの開発や疾患修飾薬の臨床試験(治験)に向けた大規模レジストリの意義についてもまとめた. |
キーワード | BPSD,clinic-based epidemiology study,認知症,レジストリ,疾患修飾薬 |
論文名 | 認知症の画像疫学的研究 |
著者名 | コ丸阿耶,櫻井圭太,粟田主一,稲垣宏樹,村山繁雄 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(4):391-401,2018 |
抄録 | 高齢化社会の到来は,認知症の急増,顕現化に直結する.精密なプロトコールに基づいた認知症コホート研究は,認知症発症の危険因子,防御因子の検証はもとより,認知症の多様な病態がどの程度,どのように社会に存在しているかを明らかにし,認知症疾患の病態解明,環境因子との関連を明確にする期待がある.神経画像は,視覚情報による客観性のみならず定量性に優れる.本稿では,疫学研究のなかでの神経画像の役割,課題について述べる. |
キーワード | 認知症,疫学,MRI,疾患横断研究,標準プロトコール |
論文名 | 疫学神経病理の認知症研究への貢献 |
著者名 | 村山繁雄,齊藤祐子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(4):402-411,2018 |
抄録 | 疫学神経病理とは,バイアスをできる限り排した多数例の網羅的検索により,疾患の自然歴全体を明らかにする手法である.Braakの神経原線維変化伸展ステージ分類,レビー小体病理脳幹上行説は,アルツハイマー病研究,パーキンソン病研究の基盤を形成している.筆者らは同様の手法で嗜銀顆粒性認知症の伸展ステージ分類(齊藤分類),レビー小体病の嗅球・扁桃核伸展仮説を提唱している.疫学神経病理は認知症病理に生活習慣病の視点を持ち込んだ点が重要である. |
キーワード | アルツハイマー病ABC(amyloid,Braak,CERAD)ステージ,Braakステージ,CERADステージ,DLB(dementia with Lewy bodies)Consensus Guidelineステージ,嗜銀顆粒性認知症齊藤ステージ |