論文名 | ニューロモデュレーションとはなにか |
著者名 | 中村元昭 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(12):1257-1265,2018 |
抄録 | 近年,臨床医学における神経系への治療的介入技法として,neuromodulationの用語が用いられるようになっている.その語源は化学シナプス伝達様式における遅いシナプス伝達としての神経修飾に由来すると思われるが,その意味は拡大しており定義が定まっていない.本稿では,精神科医療におけるneuromodulationを@外因性・高侵襲性,A外因性・低侵襲性,B内因性・内発性の3種類に大別して解説した.低侵襲性はけいれん誘発も外科的手技も必要とせず,内因性は外部からの物理的刺激に依存しないことを意味している.それぞれの方法論の特徴や適用範囲を理解したうえで治療アルゴリズムのなかに適切に配置することが重要である.未曾有の超高齢社会において,神経科学と神経倫理を前提としたneuromodulationの臨床応用が期待されている. |
キーワード | neuromodulation,neuroplasticity,electroconvulsive therapy,transcranial magnetic stimulation,mood disorder |
論文名 | 老年期うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法 |
著者名 | 松田勇紀,鬼頭伸輔 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(12):1266-1272,2018 |
抄録 | 日本では急速に高齢化が進み,老年期うつ病が増加している.老年期うつ病患者は若年うつ病患者と比較して,抗うつ薬に対する治療反応性が乏しい.さらに,再発・再燃しやすく,自殺率も高い.老年期うつ病への反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法の有効性について一致した見解は得られていなかったが,最近の臨床研究の結果から,現在の標準的な刺激条件で実施すれば十分な治療効果が期待できると考えられる.今後,老年期うつ病に対するrTMS療法の検証的試験が待たれる. |
キーワード | 反復経頭蓋磁気刺激(rTMS),老年期うつ病,治療抵抗性うつ病 |
論文名 | 脳卒中に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法 |
著者名 | 角田 亘 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(12):1273-1278,2018 |
抄録 | 脳卒中後遺症に対して治療的に反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を適用する場合,rTMSは“脳の可塑性を高める介入(neural plasticity enhancer)”と位置づけられる.機能代償を担う部位の神経活動性を賦活するようにrTMSを適用し,それに続いてリハビリテーション訓練(リハ訓練)を行うのがよい.現状としては,上肢麻痺,失語症のみならず,下肢麻痺,左半側空間無視,嚥下障害,アパシーなどに対してもrTMSが治療的に適用されている. |
キーワード | 反復経頭蓋磁気刺激(rTMS),脳卒中,脳の可塑性,機能的再構築,neural plasticity enhancement |
論文名 | 認知症疾患に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法 |
著者名 | 眞野智生,齋藤洋一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(12):1279-1286,2018 |
抄録 | アルツハイマー型認知症(AD)への薬物開発は難航しており,非薬物療法であるニューロモデュレーションの治療応用が期待されている.反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は,シナプスの可塑性を誘導するとされ,治療候補のひとつである.ADに対するrTMSの臨床試験は少数例ながら多くの報告があり,認知機能の改善効果を示している.刺激部位,刺激方法などの刺激条件も確立しつつある.今後は,実用化に向けて質の高い臨床研究が求められている. |
キーワード | repetitive transcranial magnetic stimulation,neuromodulation,Alzheimer’s disease,mild cognitive impairment,synaptic plasticity |
論文名 | 認知症に対する脳深部刺激(DBS) |
著者名 | 高宮彰紘,三村 將 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(12):1287-1291,2018 |
抄録 | 神経精神疾患を神経ネットワークの異常ととらえ,それに対する治療介入としてのneuromodulationが近年注目を集めている.本稿では,アルツハイマー病(AD)を対象とした脳深部刺激(DBS)の海外における知見を紹介する.DBSは脳深部局所に電気刺激を行うことが可能であり,ADでは主にマイネルト基底核と脳弓への刺激が報告されている.安全性と忍容性は確認されているが,臨床効果に関しては,刺激パラメータの選択,対象患者の選定など今後のさらなる知見の集積が必要と考えられる. |
キーワード | 脳深部刺激(DBS),アルツハイマー病,マイネルト基底核,脳弓 |
論文名 | 老年期うつ病に対する電気けいれん療法(ECT) |
著者名 | 上田 諭 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(12):1292-1299,2018 |
抄録 | 電気けいれん療法は,高齢者の重症うつ病に不可欠な治療である.高齢者は発作閾値が高いという難点があるが,十分な効果と安全を保つための手技として,@発作時脳波による有効性判定,A適切な刺激用量設定(とくに2回目以降),B発作抑制要因(麻酔薬,併用薬)への対処,が重要である.従来の両側性電極配置での短パルス波の手技だけでなく,高齢者で問題になりやすい認知機能障害を最小化するためには,右片側性および超短パルス波の手技も今後知っておく必要がある.これらには,発作閾値を下げて発作を生じやすくする作用もある. |
キーワード | 電気けいれん療法,発作の有効性,発作時脳波評価,刺激用量設定,右片側性電極配置,超短パルス波 |
論文名 | レビー小体型認知症に対する電気けいれん療法(ECT) |
著者名 | 眞鍋雄太 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(12):1300-1307,2018 |
抄録 | 治療抵抗性のレビー小体型認知症(DLB)に対し,電気けいれん療法(ECT)を行い,有効性を認めたとする報告がなされている.既報の多くは,重度の精神症状のみならず運動症状も改善させ,とくに問題となる重篤な有害事象は認めなかったとする内容である.とはいえ,有効性を報告する割にはECTの知名度は低く,DLBの治療ストラテジーに組み込まれていない.本稿では既報を概説し,ECTの課題と展望について私見を述べた. |
キーワード | レビー小体型認知症,電気けいれん療法,治療抵抗性 |