論文名 | 認知症診療における認知機能テストの使い方 |
著者名 | 斎藤文恵,三村 將 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(11):1129-1132,2018 |
抄録 | 認知症の実臨床場面で認知機能テストを実施する際の全般的な留意点を述べた.テストの点数だけが一人歩きしないよう,その点数に至った反応や個々の得失点の特徴を観察して記載することが重要である.またテストは診察における見立ての確認であり,一次スクリーニングテストの次になにが必要かを,見立てに沿って選択していく.テストで得られた情報は,対象者の全人間的な理解およびリハビリテーションや支援の手がかりにもつながる. |
キーワード | 神経心理学的検査,スクリーニング,質的評価,見立て |
論文名 | Mini-Mental State Examination(MMSE) |
著者名 | 小海宏之 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(11):1133-1137,2018 |
抄録 | Mini-Mental State Examination(MMSE)は,Folsteinらによって,もともとは,精神疾患のなかで認知障害を有する患者を検出することを目的として1975年に考案されたものである.その後,神経疾患や一般内科疾患,ならびに認知症疾患の認知機能のテストとして,広く欧米で用いられてきている.日本語版MMSEに関しては,さまざまな問題があったが,若干の修正が加えられた2001年原版に忠実で著作権も確保されたMMSE-Jの標準化が近年,再検討されたので,本稿ではこれまでの概要を述べた. |
キーワード | MMSE,MMSE-J,MMSE-2,カットオフ値,MCI,AD |
論文名 | 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の実施法と臨床的有用性 |
著者名 | 加藤伸司 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(11):1138-1144,2018 |
抄録 | 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は,認知症の鑑別の補助的検査として使用されることが多いため,20点/21点のカットオフポイントを中心とした得点評価が重視されている.HDS-Rの設問は見当識やさまざまな質的に異なる記憶に関する項目で構成されており,それらの情報が必ずしも臨床場面やケアの場面に活用されていない.検査者やケアに当たる人は,HDS-Rで得られる情報の意味を理解し,日常生活への影響やケア場面における留意点などを適切に評価できることが重要である. |
キーワード | 改訂長谷川式簡易知能評価スケール,HDS-R,認知機能検査,認知症スクリーニング |
論文名 | 日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)の実施と解釈における留意点 |
著者名 | 鈴木宏幸 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(11):1145-1149,2018 |
抄録 | 認知症診療における早期段階に適した認知機能検査としてMontreal Cognitive Assessment(MoCA)が挙げられる.MoCAはとくに軽度認知障害(MCI)を対象として広がりをみせており,短時間で実施できることから臨床場面において有用であると考えられる.しかし,簡便であることに由来する限界も存在するため,結果の解釈には注意を要する.地域で使用した際の特異度の低下も課題となるものの,認知機能への鋭敏さから簡易評価においてはゴールドスタンダードになりうる検査といえる. |
キーワード | Montreal Cognitive Assessment(MoCA),簡易認知機能検査,スクリーニング検査,MCI,認知領域 |
論文名 | Alzheimer’s Disease Assessment Scale-Cognitive Subscale Japanese version(ADAS-J cog) |
著者名 | 沼田悠梨子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(11):1150-1155,2018 |
抄録 | Alzheimer’s Disease Assessment Scale(ADAS)はMohsらによって開発され,認知機能下位検査(ADAS-cog)は本間らによって日本語版(ADAS-J cog)が開発されて,わが国でも多くの臨床場面において使用されている.しかし,本来はアルツハイマー病による認知症の,抗認知症薬の薬効評価を目的として開発された検査であり,使用の際には注意が必要な特徴も存在する.本稿ではADASの特徴,臨床場面で使用する際のポイントを述べるとともに,近年のADAS-J cogの研究紹介を行った. |
キーワード | ADAS,ADAS-J cog,認知機能検査,自由会話,報告書の作成方法 |
論文名 | 認知障害の評価におけるAddenbrooke’s Cognitive Examination(ACE-R,ACE-V,M-ACE)の有用性 |
著者名 | 竹之下慎太郎,寺田整司,三木知子,横田 修,山田了士 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(11):1156-1160,2018 |
抄録 | 認知症のスクリーニングには,操作が簡便なMini-Mental State Examination(MMSE)や,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)が広く用いられる.より軽度の認知機能障害の評価には,やや複雑な,Montreal Cognitive Assessment-Japanese version(MoCA-J)や Addenbrooke’s Cognitive Examination (ACE) が使用される.ACEは第2版であるACE-Rが廃止され, 改訂版のACE-Vと, 簡易版に当たるMini-Addenbrooke’s Cognitive Examination(M-ACE)が作成された.本稿では,ACEの改訂の経緯と,ACE-VおよびM-ACEについて解説した. |
キーワード | Addenbrooke’s Cognitive Examination,ACE,軽度認知障害,認知機能検査 |
論文名 | Neurobehavioral Cognitive Status Examination(COGNISTAT) |
著者名 | 松田 修 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(11):1161-1166,2018 |
抄録 | Neurobehavioral Cognitive Status Examination(COGNISTAT)は,意識水準(日本語版では覚醒水準と表記),見当識,注意に加えて,5領域の主要な認知能力(言語,構成,記憶,計算,推理)を評価する下位検査から構成されている.下位検査得点(標準得点)をCognitive Status Profile上にプロットすることで,患者の認知機能の様相を視覚的にとらえることができる.保持されている機能と低下した機能を同時に評価できることから,検査結果を保持機能の活用によるリハビリテーションやケアに生かしやすい. |
キーワード | COGNISTAT,多面的評価,簡易認知機能検査 |
論文名 | Frontal Assessment Battery(FAB)の有用性 |
著者名 | 仲秋秀太郎,佐藤順子,山田峻寛,佐藤博文 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(11):1167-1174,2018 |
抄録 | 前頭葉機能のスクリーニング検査として開発されたFrontal Assessment Battery(FAB)は,簡便・有用な検査で被検者への負担も大きくない.本論では,FABに関して,検査の概略を述べ,いくつかある日本語版の差異を検討する.次に平均値とカットオフ値にも言及し,最後に臨床におけるFABの有用性に関しても概説する.FABの得点評価のみでなく,他の認知機能や臨床症状も評価することが重要である. |
キーワード | FAB,遂行機能,前頭葉機能,アルツハイマー病,前頭側頭葉変性症 |
論文名 | 重度認知症者のための認知機能検査;Cognitive Test for Severe Dementia,Severe Cognitive Impairment Rating Scale |
著者名 | 田中寛之,永田優馬,石丸大貴,西川 隆 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(11):1175-1181,2018 |
抄録 | 認知症者に適切な対応・ケアを行うには,認知症の重症度ごとに認知機能検査を用いて正しく評価することが重要である.重症度別に評価・介入を進める必要があるとされているものの,重度認知症にいたってはその考え方が十分に浸透しているとは言い難い.本稿では,重度認知症者における認知機能検査について,その目的や評価の解釈・注意点を,主に筆者らが翻訳・開発した2つの検査に関して概説した. |
キーワード | 重度認知症,認知機能検査,CTSD,SCIRS |
論文名 | 高次脳機能に関する掘り下げテスト |
著者名 | 前島伸一郎,大沢愛子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,29(11):1182-1188,2018 |
抄録 | 認知症では,言語機能,行為,視知覚,記憶,注意,遂行,知能など多岐にわたる機能が障害される.患者の病状をとらえるためには,詳細な評価が必要となる.本稿では,認知機能の掘り下げテストの実施と解釈について述べた.認知機能を詳細に評価することは,病巣部位の推定や臨床診断を確かなものにするだけでなく,日常生活場面での問題点や社会生活を遂行するうえでの注意点を明らかにすることも可能である.薬物療法やリハビリテーションを含めた治療的介入を行うのであれば,その有用性を検討するためにも,種々の認知機能テストを用いて詳細に評価を行う必要がある. |
キーワード | 認知症,神経心理学的検査,認知機能テスト,掘り下げテスト |