論文名 | 高齢者の知的活動とその影響 |
著者名 | 松田 修 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,28(1):11-18,2017 |
抄録 | 本特集「知的活動と認知機能」のイントロダクションとして,まず,『高齢社会白書(平成28年版)』や『レジャー白書2016』などの資料に基づき,高齢者の学習活動や余暇活動の実態を概観した.次に,知的活動が高齢者の認知機能低下やアルツハイマー病の発症に関連することを示唆する研究を紹介した.しかし,どのような知的活動に効果があるのか,また,知的活動そのものに効果があるのか,それとも,知的活動に参加することに伴う諸活動に効果があるのかなど,知的活動の内容や効果のメカニズムについては今後さらに解明しなくてはならない点が少なくない. |
キーワード | 知的活動,生涯学習,余暇活動,認知機能低下 |
論文名 | 脳予備能と認知予備能 |
著者名 | 品川俊一郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,28(1):19-23,2017 |
抄録 | 1980年代後半からの研究によってアルツハイマー病(AD)などの病理学的変化があっても認知機能低下をきたさない例が報告されるようになった.これらの例では病理学的な変化に対して何らかの拮抗する力をもっていると注目され,その機序について検討されるようになった.そこで出てきたのが脳予備能(brain reserve)あるいは認知予備能(cognitive reserve)の仮説である.前者は脳重量や脳容積などより形態学的なパラメーターに注目した概念である一方,後者はより機能的な側面に注目した概念で,脳内ネットワークを効率的に使用できる能力が想定されている.認知予備能は直接計測できないため,教育歴や知能,ライフスタイルなどのさまざまな代理尺度が用いられている.期待されたADの根本治療薬は依然として開発途中であり,それゆえどのようにこれらの予備能を高めるかというテーマが再び注目を集めている. |
キーワード | 脳予備能,認知予備能,知的活動,認知機能,アルツハイマー病 |
論文名 | 知的活動と脳の関連 |
著者名 | 橋本照男,川島隆太 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,28(1):24-28,2017 |
抄録 | 知的活動と脳との間にはどのような関連があるのか,知的活動が脳活動・脳形態に与える影響についての知見を紹介した.本稿では認知活動として研究されている内容を知的活動として扱い,子どもや成人,そして高齢者での研究から明らかにされてきている知的活動の脳内機序を概観し,知的活動と脳との関係を論考した. |
キーワード | MRI,読書,テレビゲーム,音楽,認知訓練 |
論文名 | 地域高齢者に対する認知的介入 |
著者名 | 佐久間尚子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,28(1):29-36,2017 |
抄録 | 長寿の現代,生涯にわたる活力と健康が望まれる.この健康長寿のテーマのひとつとして,地域高齢者の認知機能における“Use it or lose it”(使わないと失う)を検討した.地域高齢者を対象とする知的活動,生活スタイル,認知訓練,認知的介入などの研究を通して,健常加齢で低下しやすい記憶や処理速度,実行機能などを中心に認知機能の維持・向上に関する証拠が集まっている.なかでも,社会貢献や次世代育成などの参加意義をもつボランティア活動や知的能動性を使い続ける参加型プログラムの有効性が実証されつつある.高齢者が生涯にわたり知的能動性を養成し発揮する環境の整備が望まれる. |
キーワード | 認知加齢,健常高齢者,認知的介入,社会貢献,知的能動性 |
論文名 | 知的活動による認知症の予防 |
著者名 | 山上徹也,山口晴保 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,28(1):37-43,2017 |
抄録 | 近年,エビデンスレベルの高い研究手法で知的活動・認知的介入による認知機能低下や認知症予防(発症遅延)効果が報告されている.その機序に関して,若年・中年期からの知的活動による脳の機能・構造的変化や,認知症病変の抑制が示されている.認知的介入に運動・社会交流などを組み合わせた複合的介入による認知機能全般,ADL,心理面等の維持・向上効果が報告されており,単独介入よりも認知症予防効果が高い可能性がある. |
キーワード | 知的活動,認知的介入,認知症,認知機能低下,予防 |
論文名 | 知的活動による認知症の進行抑制 |
著者名 | 朝田 隆 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,28(1):44-50,2017 |
抄録 | 認知症患者に対する知的活動による介入効果を扱った過去の総説では,知的活動は有望であるとしたものもある.しかし個々の研究報告をみると,それは容易に首肯できない.事実,2013年になされた最新の総説は効果に否定的である.そもそも認知的介入は,これを通して他の認知領域への効果波及を目指している.また認知症において生活障害の改善は本質的なものである.さらに介入対象となる個人の特性,たとえば自分のもの忘れに関する認識は重要である.ところが従来は,これらのポイントがほぼ検討されていない. |
キーワード | 認知症,認知トレーニング,認知リハビリテーション,介入,効果 |
論文名 | 高齢者や認知症の人が知的活動を継続するには |
著者名 | 繁田雅弘 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,28(1):51-55,2017 |
抄録 | 高齢者の知的活動は加齢による知的機能の減退や認知症疾患の予防を目的として行われることもあるが,それらに関しては十分なエビデンスがあるとはいえない.したがって知的活動自体は,楽しむため,自己実現や生きがいのため,あるいは対人交流の手段として,少なくとも現時点では行われるべきではないか.一方,アルツハイマー病などの認知症疾患の病名には先入観や偏見が伴い自尊感情や自己効力感を低下させる.知的活動を継続するには,低下しがちな自尊感情や自己効力感を支えることが重要と考えられる. |
キーワード | アルツハイマー病,生きがい,自尊感情,自己効力感,あきらめ |