老年精神医学雑誌 Vol.27-11
論文名 髄液循環動態の常識を再考する
著者名 宮嶋雅一,山田晋也
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,27(11):1155-1162,2016
抄録 髄液は脳室内の脈絡叢で産生され,一方向に流れて,最終的に頭蓋円蓋部のクモ膜顆粒から吸収される髄液循環説が常識とされ,この考えに基づいて水頭症病態が説明されてきた.しかし,髄液と脳間質液を一体としてとらえた場合,従来の髄液循環説に対して疑問が生じ,脳の毛細血管が髄液の産生と吸収の主要な部位であるとする微小血管説が新たに提案された.はたしてこの仮説により水頭症病態を説明しうるのか,今後検証する必要がある.
キーワード 髄液,脈絡叢,クモ膜顆粒,間質液,リンパ排液
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論文名 iNPHの疫学と家族性NPH
著者名 加藤丈夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,27(11):1163-1170,2016
抄録 近年,わが国において脳MRI検査を用いた地域高齢者の住民健診が宮城県,山形県,島根県で行われた.その結果を加重平均すると,地域高齢者の1.6%が特発性正常圧水頭症(iNPH)疑い(possible iNPH with MRI support)と推定された.2015(平成27)年9月15日現在の総務省統計局の推計データに基づいて計算すると,iNPH疑い例の有病率は人口10万人に対して約426人となり,パーキンソン病よりもはるかに高い有病率となった.一方,メンデル遺伝をするNPHが存在することがわが国から初めて報告され,その後,世界各地で相次いで報告された.
キーワード idiopathic normal pressure hydrocephalus(iNPH),familial normal pressure hydrocephalus(fNPH),asymptomatic ventriculomegaly with features of iNPH on MRI (AVIM),Hospital-based study,Community-based study
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論文名 iNPHの画像診断
著者名 石井一成
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,27(11):1171-1175,2016
抄録 特発性正常圧水頭症(iNPH)の大多数はdisproportionately enlarged subarachnoid-space hydrocephalus (DESH)であり,その画像の特徴的な脳室拡大,シルビウス裂開大,高位円蓋部・正中部の脳溝狭小化をとらえることが画像診断のポイントとなる.iNPH患者は高齢者が多く他の変性疾患との併存もあり得るので,アルツハイマー病などの併存を判定するのに脳血流SPECTが有用である.
キーワード idiopathic normal pressure hydrocephalus(iNPH),disproportionately enlarged subarachnoid-space hydrocephalus(DESH),MRI,SPECT
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論文名 特発性正常圧水頭症における髄液シャント術の脳波NPV解析による効果予測
著者名 青木保典,数井裕光,石井良平,吉山顕次,鐘本英輝,鈴木由希子,佐藤俊介,東 眞吾,末廣 聖,
松本拓也,武者利光,松崎晴康,今城 郁,畑 真弘,池田俊一郎,岩瀬真生,池田 学
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,27(11):1176-1182,2016
抄録 特発性正常圧水頭症(iNPH)とは,脳室拡大を認め,かつ認知障害,歩行障害,排尿障害の3徴のうち1つ以上を呈するが,脳脊髄液圧は正常な病態であり,全国で31万人が罹患している可能性が示唆されている.iNPH患者に髄液シャント術を施行した場合,必ずしも全患者が症状の改善を示すわけではないため,シャント術の効果を予測する客観的な指標が求められている.今回筆者らは,脳波律動の状態変化を鋭敏に検出する脳波NPV(Normalized Power Variance)解析を用いて,髄液シャント術の効果を予測することを試みた.25人の右利きpossible iNPH患者を対象にNPV解析を行い,シャント術反応群において非反応群と比較して,β帯域の右前頭部(Fp2),右側頭部(T4),右後頭部(O2)におけるNPV値が有意に増加していることを示した.さらにこれらの差異を用いて,髄液シャント術の効果を陽性的中率84%,陰性的中率75%で判別できた.以上のことから,脳波NPV解析が髄液シャント術効果予測に有用である可能性が示された.
キーワード 脳波,NPV解析,特発性正常圧水頭症(iNPH),シャント術
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論文名 アルツハイマー病とiNPH
著者名 橋本 衛
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,27(11):1183-1191,2016
抄録 ・アルツハイマー病(AD)は特発性正常圧水頭症(iNPH)に高頻度に合併する.
・ADとiNPHが合併しやすい要因として,糖尿病や脳血管障害などのリスク因子が両者に共通するだけではなく,両者がそれぞれの発症に影響している可能性がある.
・iNPH患者がたとえADを合併していても,シャント術によって患者本人や家族のQOLが大幅に改善する場合がある.
・シャント術が,AD合併iNPH患者にどのような効果を及ぼすかを,多面的かつ長期的に評価することが今後の課題である.
キーワード アルツハイマー病,特発性正常圧水頭症,鑑別診断,治療戦略,発現機序
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論文名 認知症専門医に必須のシャント術の知識
著者名 鮫島直之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,27(11):1192-1199,2016
抄録 特発性正常圧水頭症(iNPH)は,国内の2つの多施設共同研究でシャント術の有効性が証明され,その成果を国内外に発信することができた.とくに脳への穿刺を必要としないで,腰椎クモ膜下腔から腹腔へ髄液を導く腰部クモ膜下腔―腹腔短絡術(LPシャント)が最近注目されてきている.シャント術は,手術に加え,至適圧の調整,生活指導など,術後も常にシャントの効果が最大限に得られているか注視していくことが大切で,とくに認知症併存例では,術後の投薬治療など,きめ細やかな診察やフォローアップの連携が必要となる.本稿では,当センターのシャント手術症例をもとに認知症専門医に必須のシャント術の知識について説明した.
キーワード iNPH,LPシャント,VPシャント,iNPHの治療成績,LPシャント手術合併症
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論文名 iNPH診療における医療連携
著者名 末廣 聖,数井裕光
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,27(11):1200-1205,2016
抄録 特発性正常圧水頭症(iNPH)はシャント術によって症状が改善できる病態であるが,治療成績をよりよくするためには円滑な診療連携が必要である.まず早期診断と早期治療を実現させるために,かかりつけ医へのiNPHの啓発活動や,認知症診療医とかかりつけ医との連携強化が必要である.また内科系認知症診療医と脳神経外科医との連携推進のためには,iNPH診療ガイドラインの周知が欠かせない.さらにシャント術後のリハビリテーションにおいて,認知症診療医による,理学療法士,ケアマネジャー,ケアスタッフといった多職種との連携構築も重要である.
キーワード 特発性正常圧水頭症(iNPH),診療連携,認知症疾患医療センター,脳神経外科,リハビリテーション,診療ガイドライン
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