論文名 | 障害年金制度の経緯と現状 |
著者名 | 大西友弘 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(7):725-735,2015 |
抄録 | 障害者に対する経済的支援のひとつとしての現金給付制度は,年金制度のほか,さまざまな手当制度等が存在している.また,障害年金制度だけをみても,そのあり方は国によって異なっている.わが国の障害年金制度は,幾度にわたる制度改正を経て今日に至っているが,障害者の所得保障において中心的な役割を担っている. |
キーワード | 所得保障,現金給付,障害基礎年金,障害厚生年金,障害認定基準 |
論文名 | 精神障害年金の現状と課題;認知症を中心として |
著者名 | 宮永和夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(7):736-746,2015 |
抄録 | 精神障害年金の課題は,判定基準と申請用紙自体の問題に分けられる.判定基準については,非常に簡単にまとめられた内容であるために,恣意的になる可能性を指摘して,認知症に対する詳細な基準の作成を提案した.申請用紙については,統合失調症やうつ病に対しては記載しやすいが,認知症には不適切な項目立てであることや,認知症の診断に必要な臨床神経心理検査や画像検査の所見を記入する箇所が限定されていることを述べた.また,認知症の進行の経過別の症状固定の意味づけや,障害認定日にかかわる無年金問題についても問題点を指摘して,解決方法について提案した. |
キーワード | ICD-10 Version : 2015分類,能力障害,障害認定日,症状固定,申請用紙 |
論文名 | 皆が笑えるそんな社会を願って;夫はまわりから支えられながらたくさんの笑顔がありました |
著者名 | 越智須美子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(7):747-755,2015 |
抄録 | 私の夫の介護生活16年.自分のペースで息抜きをしたり,頑張ったり,葛藤したり,いつまで続くのか,なかなか前がみえなかった日々を振り返ると,長かったようでもあり,あっという間に過ぎ去った日々でもありました.もちろん,苦しんでいるのは私たち家族だけではなく,同じ苦しみをもつ多くの家族もいました.私は,夫の病気を通して多くの人に出会い,いろいろなことを学びました.今でも学んでいますが,病気とは無縁の普通の生活がしたかった,というのが本音です. |
キーワード | 若年性認知症,告知,葛藤,笑顔,障害年金,署名活動 |
論文名 | アルツハイマー型認知症に対する精神障害年金診断書の書き方のポイントと今後の課題 |
著者名 | 中村沙絵美,小口里織,高林良行,小坂八千代,天野直二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(7):756-761,2015 |
抄録 | 障害年金の対象となる年齢層は主に若年性アルツハイマー型認知症(DAT)が相当し,働き盛りの世代であるため生活への影響が甚大であり,さまざまな支援も十分ではない.若年性DATでは前駆期や初期からその病態には特徴があり,いったん症状が露呈化するとその後の進行が速いので速やかに年金の手続きを進める必要がある.障害等級の1級は,高度の認知障害,人格変化やその他の精神神経症状が著明なため,常時の援助が必要であり,Functional Assessment Staging(FAST)では“やや高度”“高度”が相当する.2級は日常生活が著しい制限を受けるもので,3級は認知障害や人格変化,あるいはその他の精神神経症状のため労働が制限を受けるものである. |
キーワード | アルツハイマー型認知症,若年性アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病),障害年金,Functional Assessment Staging(FAST) |
論文名 | レビー小体型認知症に対する精神障害年金診断書の書き方のポイント |
著者名 | 熊谷 亮,井関栄三 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(7):762-766,2015 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)の障害年金の診断書を記載するにあたり,注意すべき点をまとめた.DLBでは,診断に至るまでにさまざまな科を受診し,異なった診断名がつけられることがあるため,初診日を誤らないように注意する必要がある.また,認知機能障害や精神症状に加え,パーキンソニズムなどの身体症状で日常生活に支障が生じた場合,併合(加重)認定として障害認定の等級が変わることがある.これらを踏まえて,各関係科と連携しながら患者をサポートする必要がある. |
キーワード | レビー小体型認知症,障害年金,初診日,パーキンソニズム,併合(加重)認定 |
論文名 | 前頭側頭葉変性症に対する精神障害年金診断書の書き方のポイントと今後の課題 |
著者名 | 繁信和恵 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(7):767-771,2015 |
抄録 | 前頭側頭葉変性症は初期から性格変化と社会的行動の変化をきたす脳変性疾患である.発症年齢が50〜65歳であり,若年性認知症に当たることから経済的困窮をきたす事例も多い.生活活動能力が保たれていても,前頭葉症状により初期から社会生活能力が損なわれる場合も多い.そのため,精神症状に基づく社会生活能力,日常生活能力の障害を詳細に検討し,適切な時期に精神障害年金の申請を勧めることが重要である. |
キーワード | 前頭側頭葉変性症,精神障害年金,前頭葉症状,若年性認知症 |
論文名 | 血管性認知症に対する精神障害年金診断書の書き方のポイントと今後の課題 |
著者名 | 川勝 忍,小林良太,林 博史 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(7):772-777,2015 |
抄録 | 障害年金の対象となる65歳以下の血管性認知症が精神科を初診することはまれである.血管性認知症の病因,病態は多様であり,総合的に判断して障害の状態を考慮する必要がある.現行の診断書様式では,脳血管障害で認知症がなく高次脳機能障害のみの場合も同一の様式となっている.同じ脳血管障害が原因で身体障害も合併する場合はそれも合算して認定される.また,障害の程度が急に悪化した場合には,等級変更の申請ができる. |
キーワード | 血管性認知症,障害年金,若年性認知症,高次脳機能障害 |
論文名 | 脳炎,頭部外傷などのその他の認知症に対する精神障害年金診断書の書き方のポイントと今後の課題 |
著者名 | 宮永和夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(7):778-791,2015 |
抄録 | 脳炎や頭部外傷などが原因の「いわゆる認知症」は,本来の認知症ではなく,高次脳機能障害に属する.そのため,高次脳機能障害モデル事業で作成された臨床診断基準および,高次脳機能障害がかかわる障害年金の判定基準を提示するとともに,必要な臨床神経心理検査の内容,および年金申請用紙の記載のポイントについて述べた.さらに,障害年金の等級別に3事例を呈示し,その概略を説明した.最後に,高次脳機能の判定基準のもとである自動車損害賠償責任保険(自賠責)の判定基準を参考資料として提示して,解説した.また,高次脳機能障害は認知症と異なり判定基準が明確なため,正当な障害年金等級の認定を得るために,必要な記載を行うべきことを論じた. |
キーワード | 高次脳機能障害,ICD-10 Version : 2015,診断基準,臨床神経心理検査,自賠責の判定基準 |