論文名 | エイジング生物学の進歩と脳のアンチエイジング戦略 |
著者名 | 布村明彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(6):589-598,2015 |
抄録 | エイジングの基礎生物学の進歩によって,生物種を超えて進化的に保存された寿命制御因子が明らかにされてきた.いくつかの寿命制御因子が,エイジングに関連する種々の疾患モデルにおいて病態を修飾しうることも報告されている.食餌制限動物に認められるように,寿命制御のシグナルとストレス適応反応との間には密接な関連があり,健康寿命の延伸や脳のアンチエイジングを目指す介入戦略構築のうえで,有益な示唆を提供している. |
キーワード | アンチエイジング,基礎老化研究,健康寿命,ストレス適応反応,脳 |
論文名 | 脳の加齢変化とアンチエイジング |
著者名 | 田平 武 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(6):599-605,2015 |
抄録 | 老化のメカニズムが少しずつ明らかになり,それをもとにアンチエイジングが試みられている.これらは,活性酸素を除去し炎症を抑えるといわれる食べ物やサプリメントを摂ること,カロリーの摂りすぎに気をつけて腹八分とすること,飢餓の時間をつくること,有酸素運動を行うこと,ストレスを解消すること,気持ちを若く保ち好奇心を失わないこと,などである.それは歳をとってからでも遅くはないが,50歳代から始めるといっそう効果が現れるであろう.エビデンスのレベルはまだまだ低いが,やらないよりやったほうがよい. |
キーワード | カロリー制限,有酸素運動,活性酸素,オートファジー,サプリメント |
論文名 | 運動と脳のアンチエイジング |
著者名 | 兵頭和樹,岡本正洋,陸 彰洙,征矢英昭 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(6):606-614,2015 |
抄録 | 高次認知機能を担う前頭前野・海馬の機能は加齢により低下しやすい.高齢になってもこれらの機能を高く維持するには,海馬における神経新生やシナプス可塑性の維持,または残存する脳機能を効率的に使えるようにするなど,認知予備力を高めることが重要である.これまでの動物とヒトとの橋渡し研究を通して,低強度の運動や高強度間欠的運動は,さまざまな分子基盤を介してこの認知予備力を高める可能性があることが明らかになってきた. |
キーワード | 前頭前野,海馬,認知予備力,低強度運動,高強度間欠的運動 |
論文名 | 睡眠と脳のアンチエイジング |
著者名 | 宮崎総一郎,北村拓朗 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(6):615-623,2015 |
抄録 | 睡眠の量的不足や質的低下で脳機能や精神機能の障害,生活習慣病等の健康問題,死亡率の上昇などが引き起こされる.人それぞれ年齢や身体の状況に応じて適切な睡眠時間は規定されているので,ただ長く眠ればよいということにはならない.認知症において睡眠障害は頻度が高い.睡眠には加齢変化があるが,認知症における睡眠は加齢変化をさらに高度に増幅した状態であり,薬物療法がそれほど有効ではないと考えられている.脳のアンチエイジングを考える際には,睡眠の加齢変化や高齢者の睡眠障害の理解,睡眠衛生を知っておくことが必要である. |
キーワード | 睡眠衛生,光,体内時計,メラトニン,アミロイドβ |
論文名 | 脳機能維持に対する栄養学的保護因子;認知症・うつに着目して |
著者名 | 大塚 礼,安藤富士子,下方浩史 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(6):624-631,2015 |
抄録 | 認知症やうつの栄養学的予防因子として,魚由来のn-3系多価不飽和脂肪酸,葉酸,ビタミン等の抗酸化物質,アミノ酸に加え,これらの栄養素を豊富に含む果物や野菜,魚等の食品から構成される食事パターンが報告されている.日本人での栄養疫学的予防因子は十分に明らかでないが,認知症やうつの重大な危険因子である動脈硬化性疾患を含む生活習慣病を予防する食事が,これらの疾患予防につながるであろう.海外での先行研究と日本人独自の食生活様式を踏まえると,おそらく「米飯を中心とし,魚,肉,豆,野菜を豊富に含んだ古典的な日本食」から塩分摂取を控えた「減塩日本食」が好ましいと考える. |
キーワード | 認知症,うつ,栄養,疫学研究,減塩日本食 |
論文名 | サプリメント・嗜好品と脳のアンチエイジング |
著者名 | 阿部康二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(6):632-637,2015 |
抄録 | サプリメントやお茶などの生活嗜好品は,いわゆる医薬品としての明確な治療効果は確立していないが,脳卒中や認知症,心臓病などに対する補助的な治療,あるいは予防効果が期待されている.サバやイワシなどに含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA),赤ワインや緑茶に含まれるポリフェノール,イチョウ葉エキスなどはいずれも抗酸化作用があり,血管と脳のアンチエイジング効果が期待されている. |
キーワード | サプリメント,嗜好品,機能性食品,脳,アンチエイジング |
論文名 | 生活習慣病と脳;アンチエイジング医学の視点から |
著者名 | 里 直行 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(6):638-646,2015 |
抄録 | アルツハイマー病の危険因子として糖尿病,高血圧といった生活習慣病が注目されつつある.生活習慣病がアルツハイマー病患者における認知機能を修飾する機序は血管因子と代謝因子に分けられ,さらに可逆的,不可逆的なものに分けられる.最近の臨床試験の報告は生活習慣病の予防・コントロールが脳のアンチエイジングに重要であることを示唆している. |
キーワード | Aβ,tau,diabetes,insulin signal,aging |
論文名 | アルツハイマー病に対する栄養学的介入;脳の老化と神経変性疾患予防への応用可能性 |
著者名 | 植木 彰 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(6):647-657,2015 |
抄録 | アルツハイマー病(AD)と食事栄養との関連は今日最も関心を呼んでいるテーマのひとつである.ADの病態には活性酸素の増加が関与しているとの知見より,当初は抗酸化物や葉酸・ビタミンB群が試みられたが効果は乏しかった.次いで個別の栄養素よりも食品の組合せや食事パターンが重視され,欧米では地中海式食事が推奨されている.カロリーや脂質の摂取過剰が危険因子であり,n-3多価不飽和脂肪酸が予防因子である.さらに,最近,ADは脳に限局した糖尿病という概念が出され,脳内のインスリン・シグナルの伝達障害が疾患の背景にあると考えられるようになった.これらの因子は脳の老化とも密接に関連し,脳の老化を予防することがADのみならず,パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症など加齢に関連した他の神経変性疾患の予防・治療に応用される可能性がある. |
キーワード | アルツハイマー病,食事栄養,インスリン抵抗性,神経変性疾患,ケトン食 |
論文名 | うつ病と脳のアンチエイジング |
著者名 | 片山奈理子,三村 將 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,26(6):658-662,2015 |
抄録 | 日本は超高齢社会を迎え,認知症患者は増加傾向にある.そのなかで,認知症予防を含め,アンチエイジングに注目が集まっている.近年,うつ病は認知症の危険因子であるという報告が多くなされており,一方で認知症の前駆症状としてのうつ状態も注目されている.また,抗うつ薬をはじめとしたうつ病治療が認知機能の維持にもつながるとする報告もあり,うつ病の予防や治療が認知症の発症予防,すなわち脳のアンチエイジングにもつながる可能性が示唆されている. |
キーワード | 認知症,うつ病,アンチエイジング |