老年精神医学雑誌 Vol.26-1
論文名 血管性認知症の疫学
著者名 小原知之,清原 裕
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(1):11-18,2015
抄録 福岡県久山町で行われた時代の異なる認知症の有病率調査の成績を比較した結果,血管性認知症(VaD)の有病率に明らかな時代的変化はなかった.国内外の追跡調査の成績をまとめると,高血圧や糖尿病を含む糖代謝異常はVaD発症の危険因子であり,運動や和食+野菜+牛乳・乳製品という食事パターンはVaD発症の防御因子であった.VaDの有病率に時代的変化がなかった背景には,糖代謝異常の急増が高血圧治療の予防効果を相殺したことが影響している可能性が高い.
キーワード 血管性認知症,疫学,糖尿病,高血圧,食事
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論文名 血管障害とうつ病・アパシー
著者名 山下英尚,濱 聖司,村上太郎,町野彰彦,志々田一宏,小早川誠,淵上 学,土岐 茂,吉野敦雄,岡本泰昌,山脇成人
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(1):19-25,2015
抄録 脳血管障害は高齢者において,器質性の精神障害の原因のなかで大きな位置を占める.脳血管障害に関連した器質性の精神障害のなかで最もよく知られているのは血管性うつ病(VD)であるが,近年の報告ではモチベーションの障害であるアパシーも脳血管障害に関連した精神神経症状として高頻度に認められることが繰り返し報告されており,うつ病・アパシーともに認知機能障害との関連や脳卒中後の機能回復を阻害する要因として重要である.精神科領域ではアパシーはうつ病の部分症状としてとらえられることが多かったが,近年では独立した病態であるとの報告も数多くみられる.筆者らも,脳卒中患者に認められるうつ病とアパシーの認知機能や臨床経過に与える影響の違い,脳血管障害の部位や広がりの違いについて検討を行ったところ,病態の一部に重なりを認めるものの両者の病態の大部分は独立しており,治療を行ううえでも両者を独立した症候群としてとらえたほうがよいと考えられた.
キーワード vascular depression,アパシー,脳卒中,基底核,左側前頭葉
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論文名 血管障害とせん妄
著者名 長谷川典子,池田 学
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(1):26-31,2015
抄録 血管性認知症は,せん妄を高頻度に併発することが知られている.また,脳血管障害なかでも小血管病は,神経変性疾患に併存すると,せん妄を高率で惹起する.したがって,脳血管障害を有するか否かを評価し,脳血管障害を予防することは,せん妄の診断と予防の観点から意義がある.とくに,認知症の患者に対しては,せん妄のマネジメントにおいて,介護者,各種医療機関,介護事業所との連携が必要となる.
キーワード せん妄,脳血管障害,認知症,BPSD
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論文名 脳血管障害を合併したアルツハイマー型認知症の臨床像と薬剤反応性
著者名 中塚晶博,目黒謙一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(1):32-40,2015
抄録 アルツハイマー型認知症(AD)には高頻度で脳血管障害の合併が認められるが,血管性病変の部位によってその影響が異なる.とくに視床などの戦略的重要部位や,コリン作動性投射路における病変の評価が重要と考えられる.脳血管障害を伴うADに対するAD治療薬の有効性については,ある程度のエビデンスが得られており,現時点ではアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬,とくにガランタミンの有効性を支持するデータが比較的有力である.今後,脳血管障害の部位や程度の影響も含めて,各種薬剤に対してさらなる検討が必要と思われる.
キーワード 混合型認知症,脳梗塞,血管性認知症,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬,ガランタミン
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論文名 レビー小体型認知症における血管障害の影響
著者名 近藤大三,井関栄三
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(1):41-47,2015
抄録 実臨床において,アルツハイマー型認知症(AD)と同様に血管障害を伴うレビー小体型認知症(DLB)に遭遇する機会は少なくない.しかし,DLBは多彩な臨床症状を呈するため,血管障害が加わると臨床像がより複雑となり,病態理解が困難となる.本稿では,DLBに対する血管障害の影響を考慮するにあたって,両者に共通してみられる臨床症状に注目し,その発症機序や臨床像の違いについて概説した.
キーワード レビー小体型認知症,血管性認知症,血管性認知機能障害,血管性パーキンソニズム,血管性うつ病,一過性脳虚血発作
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論文名 特発性正常圧水頭症と血管障害
著者名 和田民樹,数井裕光,武田雅俊
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(1):48-53,2015
抄録 特発性正常圧水頭症(iNPH)とビンスワンガー病はその画像的特徴や症状の類似点から,鑑別が問題とされてきた.iNPHは治療可能な病態であり,より正確な鑑別診断を行うことが必要である.本稿では,両者の類似点および鑑別点について述べ,さらにiNPHの脳形態変化と大脳白質病変との関係について,筆者らの研究結果を交えて報告する.
キーワード 特発性正常圧水頭症(iNPH),血管障害,白質病変,ビンスワンガー病
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