老年精神医学雑誌 Vol.25-9
論文名 両親の認知症介護10年の軌跡が示すもの;トンネルの向こうに
著者名 早田雅美
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(9):967-974,2014
抄録 アルツハイマー型認知症であった父,レビー小体型認知症と生きる母.一人息子である私は10年にわたって2人の親の認知症を介護してきました.初めての「診断」から始まる戸惑いと「認知症」との戦い,挫折.そのなかから医療者の「応援」を力に,手探りで本人らしい生活の維持を得ることに成功した経験をご紹介しました.
キーワード 認知症,ポジティブ応援,アイデア,思いやり,ハート・リング運動
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論文名 ケアラーを支えるために
著者名 牧野史子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(9):975-983,2014
抄録 少子高齢化,小世帯化に伴い,介護者の層も高齢化と若年化の様相がある.認知症の高齢者が今後増えていくなかで,在宅での介護は,さらに厳しい状況になると見込まれる.そのため,“ケアラー”を地域で支えるためのさまざまな取組みが急がれる.早期に地域の支援につながる効果的な資源やツールとその運用について,これまでの地域活動での経験を踏まえて,紹介と提言を試みた.
キーワード 認知症,ケアラー支援,地域資源,カフェ,相談
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論文名 ケアラーへの情報提供;医療機関の情報提供に対する家族の満足度調査から
著者名 繁田雅弘,半田幸子,今井幸充
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(9):984-992,2014
抄録 認知症の人の家族を対象とした医療機関における情報提供に対するニーズと満足度の調査から,ケアラーへの情報提供のあり方を考えた.認知症の症状や検査,治療に関しては一定程度の情報は提供されていたが,行動・心理症状(BPSD)や介護に関すること,入院や施設入所に関する情報は,ケアラーのニーズに反してあまり提供されていなかった.ケアラーの情報提供のニーズにどのように応えるかが課題と考えられた.
キーワード 認知症,経過,予後,ニーズ,行動・心理症状(BPSD)
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論文名 ケアラーの心理過程と心理臨床的支援
著者名 扇澤史子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(9):993-999,2014
抄録 多くの家族は身内の認知症発症を契機にある一連の心理過程を体験する.それは個別的で必ずしも直線的に移行しないが,総じて〈戸惑い・衝撃・否認〉〈混乱・怒り〉〈あきらめ・居直り〉〈理解・受容〉の4つの段階をたどり,各段階と否定的・肯定的感情は相互に関連している.本稿では,レビー小体型認知症の夫を看取った妻の事例を通して心理過程と心理臨床的支援について検討し,ケアラーの看取り後までの心理過程の理解と,その理解に基づいた心理臨床的支援は有用であることを考察した.
キーワード 認知症,介護,ケアラー,心理過程,心理臨床的支援
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論文名 認知症者のケアラーが経験する喪失体験とこれに対する精神療法的介入について
著者名 大村裕紀子,深津 亮
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(9):1000-1008,2014
抄録 認知症者のケアラーの喪失と悲嘆,およびケアラーへの精神療法的介入について概観した.ケアラーの喪失・悲嘆には特有の臨床型と病態が知られている.その一部について,症例を呈示し,論及した.わが国は高齢多死社会を迎えている.認知症ケアラーは第2の犠牲者とされるとおり,多様な喪失や悲嘆を体験している.このため,喪失や悲嘆への介入は重要な課題であり,その介入法についても確立することが望まれている.ケアラーの生活史,性格,思考様式,家庭内外の環境などさまざまな背景と,喪失の内容と悲嘆の深さを評価したうえで介入方法を選択し,支援の効果についての経験を集積することが不可欠といえる.
キーワード 喪失(体験),悲嘆(反応),複雑性悲嘆,ambiguous loss,sandwich generation,精神療法的介入
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論文名 家族介護教室の実際と課題
著者名 佐藤典子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(9):1009-1016,2014
抄録 住み慣れた地域で認知症の人が暮らせるようにするためには,家族の協力は不可欠である.その家族を支援するために行われている家族介護教室は,病院・地域で開催されており,その実際はさまざまである.今後,介護家族のニーズに沿った家族介護教室を有効に開催するには,家族の心理的支援,開催者の質の向上,病期に応じた対応,ピアサポートの活用,地域・多職種連携,周知,選択方法など,多岐にわたる検討が必要である.
キーワード 家族教育,支援者の教育,地域連携,多職種連携,支援ニーズ
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論文名 介護保険サービス施設・事業所におけるケアラーの支援
著者名 矢吹知之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(9):1017-1024,2014
抄録 認知症の高齢者や介護する家族を支援するうえで,最も近い専門的知識や技術を有する支援者は,在宅介護サービスを提供する介護保険サービス施設・事業所の職員である.その支援のあり方を検討するうえでは,当事者である家族介護者の声に耳を傾け,そのニーズや背景にある個別的な要因を踏まえた関係性を構築することが求められる.本稿では,当事者性に視点を据えて支援者とケアラーの関係と具体的な支援のあり方を考察した.
キーワード 介護保険サービス,施設・事業所,相談ニーズ,助言,介護負担
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