老年精神医学雑誌 Vol.25-4
論文名 南魚沼市立ゆきぐに大和病院の活動
著者名 宮永和夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(4):359-370,2014
抄録 認知症に関連した南魚沼市立ゆきぐに大和病院の医療サービスおよび,当院が属する南魚沼市などの行政・保健・医療・福祉の活動の概略をまとめた.当院は認知症疾患医療センターの一般的な相談とともに,メモリークリニックを中心とした診断,治療,家族相談・指導を行っているが,あわせて当院外来通院者を中心とした院内家族会を開催している.南魚沼市全体では,認知症・うつ・自殺対策委員会の検討などを通じて,認知症予防事業や認知症徘徊SOSネットワーク事業を継続的に実施している.また,南魚沼市を含めた広域(二次医療圏にほぼ近い)では「あんしん手帳」を用いた連携パスを実施している.さらに,全国若年認知症家族会・支援者連絡協議会などの全国の団体との交流を通じて,全国の認知症の知識を得て,当院の実践の参考にしている.
キーワード あんしん手帳,若年認知症家族会・空の会(SKY),メモリークリニック,認知症アウトリーチ,認知症徘徊SOSネットワーク
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論文名 島根県・出雲市における重度認知症デイケアと認知症医療体制
著者名 高橋幸男
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(4):371-378,2014
抄録 典型的な過疎県である島根県の出雲市における認知症医療体制は,特別なシステムがあるわけではないが,認知症医療を行う者も多くは顔が見える関係にあり,連携は緩やかに保たれていて大きな困難はない.そのような舞台で,21年間行ってきた重度認知症患者デイケアは,激しいBPSDのある認知症の人たちが地域でその人らしく暮らせる手立てとして,また実践から得られた知見とともに,認知症医療体制に一定の役割を担っている.
キーワード 認知症医療,重度認知症患者デイケア,BPSD,かかりつけ医,ネットワーク
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論文名 滋賀県における認知症ケアネットワークの構築;もの忘れクリニックの取組みから
著者名 藤本直規,奥村典子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(4):379-391,2014
抄録 認知症の医療とケアでは,認知症の人と家族を,発症初期から継続的に支えるために,認知症初期の介入,その後のステージ別の支援を目指した統合型のケア(integrated care)を,地域を基盤としたケア(community-based care)のなかで実践しなければならない.そのためには,複数の専門職が共通の目標を設定し,達成を目指す実践である,専門職連携実践(IPW)の手法での連携が必要である.本稿では,もの忘れクリニックが現場のニーズから広げてきた多職種恊働・地域連携の取組みを紹介した.
キーワード 認知症初期支援,認知症ケアネットワーク,community-based care,integrated care,interprofessional work
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論文名 大都市における自発的なパス運用から認知症疾患医療センターへの変化
著者名 新里和弘
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(4):392-398,2014
抄録 東京都立松沢病院は平成24年4月に認知症疾患医療センターに指定された.対象とするエリアは,23区のうちの西南部3区(渋谷,目黒,世田谷)であり,130万超の人口を対象とする.従来から同地域には認知症診断のための地域連携が存在していた.この仕組みを用いた連携の現状と,そのなかで新たに設置された認知症疾患医療センターの役割を整理し,今後の大都市における認知症医療のネットワークに関して考察を行った.
キーワード 認知症,認知症疾患医療センター,大都市,地域連携,クリニカルパス
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論文名 熊本モデルにおける地域拠点型センターの活動
著者名 荒木邦生,戸谷修二,森上将章
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(4):399-406,2014
抄録 認知症疾患医療センター熊本モデルが始まり5年が過ぎようとしているが,センターの地域拠点型病院のひとつである当院では,外来数の増加への対応に課題がみられた.一方入院患者の増加はみられなくなり,平成24年度新規入院患者の70%が6か月以内で退院していた.熊本モデルの目指す基幹型センターと地域拠点型センター,かかりつけ医等の連携による認知症医療体制の3層化を達成するには,かかりつけ医との連携構築に今後も継続的な努力と工夫が必要であると考えられた.
キーワード 認知症疾患医療センター,熊本モデル,3層構造,地域拠点型センター,かかりつけ医,地域連携
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論文名 板橋区医師会における医師会が中心になった地域ネットワークの実践と課題
著者名 水野重樹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(4):407-410,2014
抄録 わが国は,高齢社会先進国である.これは認知症においても同様で,「オレンジプラン」の出現により,認知症対策が喫緊の重要課題であること,高齢者医療の観点から認知症を含めた医療体制整備が必要課題であること,国民会議での医療の機能分化の推進の提唱により,かかりつけ医機能の充実が望まれていること,等が挙げられている.板橋区医師会では,かかりつけ医が,もの忘れ相談医,認知症サポート医,かかりつけ医認知症対応力向上研修修了医としてその責を果たしている.しかし,認知症高齢者の増加に伴い,もの忘れ相談医のあり方の見直しの必要性を感じ,在宅療養認知症高齢者に対して適切なケアの提供が可能となるICT(情報通信技術)を活用したシステム構築について,課題を含め述べた.
キーワード もの忘れ相談医,多職種協働,在宅療養相談室
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論文名 地域差を超えて,地域ネットワークで支える認知症医療;統合の戦略について
著者名 粟田主一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(4):411-417,2014
抄録 「地域に根ざした,統合ケア」を実現するためには,ボトムアップ型のシステムづくりとトップダウン型の政策決定を調和させる必要がある.そのためには,@関係組織・団体のコミュニケーションの場の確保,A目標の明確化,B当事者中心のアプローチ,C偏見の克服,Dフォーマル/インフォーマル・サービスの統合,E「地域包括支援センター/身近な医療機関」複合体をコミュニティーに埋め込む,F地域の実情に応じたcare pathwayを考案することが重要である.
キーワード 地域包括ケアシステム,地域包括支援センター,認知症初期集中支援チーム,「診療所型」認知症疾患医療センター,認知症サポート医
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