論文名 | ソーシャル・キャピタル;認知症の人のコミュニティ・メンタル・ヘルス |
著者名 | 松下正明 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,25(3):239-247,2014 |
抄録 | 最近の高齢者のコミュニティ・メンタル・ヘルスの理念として,stigmaとrecoveryが挙げられているが,それに加えて,ソーシャル・キャピタル(social capital)という理念が必要である.とくに認知症の人を対象とした場合,その治療や介護・ケアは住み慣れた在宅で行うことが原則とされていることから,ソーシャル・キャピタル理念が必須となる.ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)は,地域社会における個人や集団がソーシャル・ネットワークを通して入手できる,信頼,社会的信用,規範,制裁,互酬性,援助といった手段的資源,社会的強化,社会的影響などのことをいうとされているが,ソーシャル・キャピタルの質量ともに豊かな地域では,高齢者の精神障害,認知症の治療や介護などコミュニティ・メンタル・ヘルスにとってきわめて有利な条件が整うことになる. |
キーワード | ソーシャル・キャピタル,ソーシャル・ネットワーク,高齢者のコミュニティ・メンタル・ヘルス,認知症,住み慣れた環境 |
論文名 | 認知症疾患医療センターの立場から |
著者名 | 繁信和恵 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,25(3):248-258,2014 |
抄録 | 近年,認知症の発症予防,早期発見,早期治療が盛んにいわれている.しかしそれらの実現のためには,地域住民への啓発・啓蒙,および医療だけでなく,介護,福祉領域の各機関との連携が非常に重要である.認知症はわれわれが最もかかりたくない病気のひとつである.そのため早期に診断された患者の心理的サポートや,進行する認知症患者を長期に介護する家族のメンタル・ヘルスを保つことは,非常に重要である.それらをサポートするために「顔の見える連携」は理想ではあるが,大都市では認知症の専門医療機関は複数あり,それらの連携医療機関,介護施設は膨大な数に上るため,連携は容易ではない.筆者が勤務する浅香山病院がある堺市は政令指定都市であるため,認知症疾患医療センターの指定は堺市が行っている.堺市では平成20年12月に当院,平成22年7月に阪南病院の2施設を認知症疾患医療センターに指定している.現在はいずれも地域型認知症疾患医療センターとして運営されている.堺市の認知症疾患医療センターでは,互いの活動を理解し,連携を発展させていくための会議の場として,認知症疾患医療センターの事業内容で開催が義務づけられている「認知症疾患医療連携協議会」を活用していくこととした.そこでかかりつけ医を中心とした認知症医療連携ネットワークの作成や,かかりつけ医とケアマネジャーの関係強化を進め,認知症高齢者および介護家族の支援を進めている. |
キーワード | 認知症,地域連携,認知症疾患医療センター,メンタル・ヘルス |
論文名 | 地域包括支援センター・在宅介護支援センターの立場 |
著者名 | 青木佳之 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,25(3):259-272,2014 |
抄録 | 地域包括支援センター・在宅介護支援センターは介護保険制度下で,地域包括ケアシステムの中核拠点機関である.すなわちそれは,地域ケアマネジメント機能と地域の介護サービスのネットワーク機能である.高齢者,とくに認知症における狭義のコミュニティ・メンタル・ヘルスにおいても,また広義のコミュニティ・メンタル・ヘルスにおいても,同様の機能の普遍化が必要である.医療と介護の連携は地域ケア会議のなかで多職種の協働作業によりなしうる.高齢者のコミュニティ・メンタル・ヘルスを機能させるためには,コミュニティ・メンタル・ヘルスマネジメント機能とコミュニティ・メンタル・ヘルスケア機能に分離し,地域の社会資源を再構築する必要がある. |
キーワード | 地域包括支援センター・在宅介護支援センター,地域包括ケア,地域ケアマネジメント,認知症,プライマリ・ヘルス・ケア,コミュニティ・メンタル・ヘルス |
論文名 | 高齢者のメンタルヘルスを保つ;自助,互助,公助を統合する保健師の役割の重要性 |
著者名 | 中板育美 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,25(3):273-279,2014 |
抄録 | 高齢期を無病で乗り切ることは,困難で酷な要求である.心身にまたがる複数の病をもちながら,自分らしさを失うことなく生活する力を養うことと,自助,互助,共助そして時に公助,要するに地域の「皆」で支え合える社会環境を築くことが要請されている.保健師は,年齢や疾患,障害で区切らずに「地域で生きていく」1人ひとりの生活(いのち)の質を支える仕組みを,医学的知識と看護の目で築き上げる役割を担っている. |
キーワード | 少子超高齢社会,老化関連疾患,QOL,QOD,自助・互助・共助・公助 |
論文名 | 作業療法士の立場;認知症カフェと生活行為向上マネジメントの研究を通して |
著者名 | 中村春基,苅山和生 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,25(3):280-287,2014 |
抄録 | 兵庫県K市における高齢者,要介護者の調査結果より,高齢者の生活状況を概観し,都市部の高齢者のコミュニケーション・メンタル・ヘルスの背景と地域づくりについて言及した.また,主に医療,介護の施設利用者の生活ニーズに沿った支援について,日本作業療法士協会により開発された,「生活行為向上マネジメント」による包括的支援の効果について述べた.加えて,認知症への対応として認知症カフェの取組みを紹介した.最後に,「だれもが地域で豊かに生活できる」ための拠点として,「アクティビティーセンター」の創設について提案した. |
キーワード | 作業療法,生活行為向上マネジメント,地域づくり,認知症カフェ |
論文名 | 介護支援専門員の立場から;メンタルヘルス面の課題をもった高齢者・家族を支援する介護支援専門員の課題 |
著者名 | 福富昌城 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,25(3):288-293,2014 |
抄録 | メンタルヘルス面の課題を抱えた高齢者・家族とかかわる際,介護支援専門員は支援において困難を感じることが多い.それは介護支援専門員がそうした利用者を理解する知識や技術を十分にもっていないことが一因である.この解決のために,メンタルヘルス専門職との連携,メンタルヘルス面の課題を抱えた高齢者・家族の支援スキルの蓄積,メンタルヘルス専門職からコンサルテーションが受けられる体制構築が必要と考える. |
キーワード | 介護支援専門員,メンタルヘルス,支援困難,バーンアウト,連携・協働 |
論文名 | 高齢者のコミュニティ・メンタル・ヘルスと精神保健福祉士 |
著者名 | 松本すみ子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,25(3):294-299,2014 |
抄録 | 今日,精神保健福祉士が高齢者の直面する課題に寄り添った実践を展開する必要性が高まっている.高齢者が認知症などの精神疾患を抱えながらも,地域で安全に暮らすための環境整備を推進することも求められており,精神保健福祉士が高齢者とコミュニティ・メンタル・ヘルスへの理解を深めることは不可欠である.本稿では,精神保健福祉士が高齢者のコミュニティ・メンタル・ヘルスにどのように貢献できるのか,支障となっているものはなにかについて述べ,ソーシャル・インクルージョンの実現に向けての課題を提示した. |
キーワード | 認知症,精神保健福祉士,専門職養成教育,交流体験,ソーシャル・インクルージョン |