老年精神医学雑誌 Vol.25-12
論文名 認知症予防とは
著者名 浦上克哉
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(12):1315-1319,2014
抄録 認知症予防には,第1次予防:認知症の発症予防,第2次予防:認知症の早期発見・早期治療,第3次予防:認知症の病気の進展防止の3段階がある.認知症の第1次予防は,つい最近まで不可能と思われていたが,近年の科学的エビデンスの蓄積から,発症予防の可能性が示されてきている.認知症の人が462万人,軽度認知障害(MCI)の人が400万人という日本の状況からは,第1次〜第3次までの認知症予防対策を徹底的に行っていくことが急務と考えられる.
キーワード 軽度認知障害(MCI),物忘れ相談プログラム,TDAS,認知症予防教室
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論文名 運動と認知症予防
著者名 加藤守匡,朝田 隆
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(12):1320-1327,2014
抄録 身体活動レベルを高く保ち,運動を習慣化することにより認知症予防が期待できる知見が増えている.最近では,ヒトを対象とした研究から運動介入により認知機能の改善とともに脳の構造的・機能的改善も示した結果が報告されている.しかし,運動介入後もフォローアップし検討を加えると,認知機能と脳の構造的変化は一様ではない.身体機能についてはこれまでも報告されているが,定期的運動の影響はその停止により数週間〜半年後には消失する.認知症予防の運動では,高齢者を対象にすることが多いと想定され,安全性が高い運動プログラムの構築が重要であるが,高齢者個人が家庭でも実施可能な日常的に継続できる内容であることも必要である.
キーワード 身体活動,有酸素運動,筋力トレーニング,運動強度,運動介入
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論文名 生活習慣病と認知症予防
著者名 秋下雅弘
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(12):1328-1334,2014
抄録 糖尿病や高血圧などの生活習慣病が血管性およびアルツハイマー型認知症の危険因子であることがさまざまな疫学研究から明らかになった.一方,生活習慣病への治療介入による認知症予防効果を示すエビデンスはほとんどなく,逆に厳密な管理に伴う低血糖などの有害事象が認知機能障害につながることが示されている.したがって,中高年期の生活習慣病管理は認知症予防にも期待して厳密に行うとしても,高齢者ではリスクも考慮にいれつつ生活習慣病治療を行うセンスが必要であろう.
キーワード アルツハイマー病,糖尿病,高血圧,脂質異常症,動脈硬化
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論文名 食事・栄養と認知症予防
著者名 篠原もえ子,山田正仁
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(12):1335-1338,2014
抄録 食事・栄養と認知機能との関連に関する観察研究では,少量の飲酒,野菜・魚の摂取および地中海式ダイエットが高齢者の認知機能低下に防御的に関連することが示された.しかし健常高齢者および軽度認知障害(MCI)を対象にした介入研究では,ビタミンE,ビタミンB群および?-3脂肪酸の認知症発症予防効果を確認できなかった.今後,大規模ランダム化比較試験による食事や栄養に関連する認知症予防のエビデンス確立が期待される.
キーワード 認知症,軽度認知障害,抗酸化ビタミン,ビタミンB群,ω-3脂肪酸
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論文名 学習およびコミュニケーションと認知症予防
著者名 若松直樹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(12):1339-1345,2014
抄録 アルツハイマー病の記憶障害は,DSM-5において複数ある必須項目のひとつとなったが,その出現は典型的とされ,記憶障害への介入は重要な支援のひとつである.記憶障害の訓練では,誤り排除学習が有効とされるが,加えて障害の進行に応じた潜在・顕在の記憶機能を考慮した学習の符号化により訓練効果は促進する可能性がある.また,認知症高齢者の想起負荷を軽減させることは,行動障害の低減・抑制につながる可能性を意識する必要がある.
キーワード 非薬物的対応,記憶障害,BPSD,誤り排除学習理論,学習の符号化
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論文名 地域での実践;愛知県武豊町の場合
著者名 竹田徳則
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(12):1346-1353,2014
抄録 ポピュレーション・アプローチによる介護予防・認知症予防について,愛知県武豊町における「憩いのサロン」事業の背景と経過,および,これまでに確認できている成果の一端を紹介し,さらに今後の課題を論じた.認知症予防では,健康との関連が示唆されている心理社会面に着目した地域介入が不可欠であることを述べた.
キーワード 認知症予防,一次予防,ポピュレーション・アプローチ,心理社会,サロン事業
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論文名 地域での実践;東京都世田谷区,豊島区を中心に
著者名 宇良千秋
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(12):1354-1359,2014
抄録 認知症の発症を遅らせるためには,住民が認知症予防活動に主体的に取り組むことが重要である.高齢者の単独世帯が増加するといわれる都市部では,より住民同士の交流や共感性を生み出すような認知症予防活動が必要とされるであろう.また,健常な高齢者もハイリスク高齢者も一緒に参加でき,自己効力感が高まるようなプログラムが,高齢者の主体的な参加を促進すると考えられる.ここでは,このような考えに基づいた認知症予防活動を地域で実践している東京都世田谷区と豊島区の例を紹介した.
キーワード 認知症予防,認知症予防プログラム,自己効力感,住民主体
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