論文名 | 血管性認知症概念の歴史的変遷 |
著者名 | 松下正明 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,24(4):333-338,2013 |
抄録 | 血管性認知症概念は,19世紀,進行麻痺と診断された認知症群の神経病理学的検索の過程から生まれてきた.1891年のKlippel,1894年のBinswangerにより,進行麻痺群のなかに血管障害による脳病変に基づく認知症群が明らかにされた.その後1902年,Alzheimerにより動脈硬化性精神障害という概念が提唱され,現在の血管性認知症概念の源泉となった.また,Binswangerが記述した進行性慢性皮質下脳症は血管性認知症の一型として考えられ,血管性認知症は,多発梗塞型の軽症群とビンスワンガー型の重症群の2群に大別されるようになった.とくに後者のタイプから,血管性認知症の発症にとって大脳白質病変が重要な意義をもつことが明らかとなった.血管性認知症概念の変遷をたどることは,血管性認知症の原因となる身体的基礎疾患と脳との関連を理解するためにも重要なことであると思われる. |
キーワード | 血管性認知症,Klippel M,Binswanger O,Alzheimer A,ビンスワンガー型血管性認知症 |
論文名 | 血管性認知症の疫学 |
著者名 | 清原 裕 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,24(4):339-346,2013 |
抄録 | 欧米を中心とした世界の追跡調査の成績では,高血圧および糖尿病が認知症に与える影響については結論が出ていない.福岡県久山町における精度の高い認知症の追跡研究では,高血圧は血管性認知症(VaD)発症の,糖尿病を含む糖代謝異常はVaDおよびアルツハイマー病(AD)発症の共通した危険因子であった.久山町では,2000年代にはいりADとともにVaDの有病率が人口の高齢化を超えて上昇している.高齢者の糖代謝異常の増加がその要因である可能性が高い. |
キーワード | 血管性認知症,コホート研究,危険因子,高血圧,糖尿病 |
論文名 | 血管性認知症の分子生物学と治療薬の開発 |
著者名 | 冨本秀和 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,24(4):347-356,2013 |
抄録 | 血管性認知症の過半数を占める皮質下血管性認知症では,ラクナ梗塞,白質病変,出血が認知機能低下の責任病変となる.大脳白質では慢性脳虚血とそれに起因する酸化ストレス,血液脳関門の障害によって神経血管ユニット(neurovascular unit)が障害され,白質病変が形成される.血管性認知症の治療薬開発の現状は不十分といわざるを得ないが,抗認知症薬と高血圧性脳小血管病の進展予防薬などが挙げられる. |
キーワード | Binswanger's disease,neurovascular unit,small vessel disease,vascular dementia,oligodendroglia |
論文名 | 血管性認知症の診断基準と基本的なタイプ |
著者名 | 高野大樹,長田 乾 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,24(4):357-365,2013 |
抄録 | 血管性認知症(VaD)は脳血管障害に起因する認知症の総称である.現在NINDS-AIREN基準が最も広く用いられているものの感度の低さが問題となる.最近VaDへの早期介入を実現するために,軽度認知機能障害の段階を含めた血管性認知機能障害(VCI)の概念が提唱されている.VaDはその原因により分類され,小血管病変性認知症が最も多いと考えられている.またアルツハイマー病との混合型認知症に対してもVaDの一種として危険因子の管理が求められる. |
キーワード | 血管性認知症,血管性認知機能障害,血管性軽度認知機能障害,診断基準,病型分類 |
論文名 | アルツハイマー型認知症に伴う脳血管障害 |
著者名 | 橋本 衛 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,24(4):366-374,2013 |
抄録 | 最近の疫学研究,神経病理研究,脳画像研究による数多くの知見の蓄積とともに,アルツハイマー病(AD)と脳血管障害は臨床的にも病理学的にも密接に関連した病態であるとの考えが優勢になっている.脳血管障害は,アミロイドβタンパクの蓄積の促進,AD患者の認知症の顕在化,AD患者のBPSDの悪化など,さまざまなレベルでADに作用する可能性が示されている.したがって,脳血管障害やその危険因子を予防することはAD予防の観点からも十分な意義がある. |
キーワード | アルツハイマー病,脳血管障害,Aβクリアランス,脳アミロイドアンギオパチー |
論文名 | 血管性認知症の地域リハビリテーション |
著者名 | 中村 馨,千葉正典,目黒謙一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,24(4):375-380,2013 |
抄録 | 血管性認知症(VaD)のリハビリテーションは,脳血管後遺症としての身体機能障害に対するリハビリと,認知症に対するリハビリが考えられる.地域におけるVaDのリハビリでは主に前者の際にみられる,学習障害によるリハビリ断念がしばしば問題になる.また,転倒による骨折の予防対策や皮質下血管性認知症への早期介入も重要である.これらについて筆者らが経験した事例を呈示し,保健医療介護連携による包括的介入の重要性を述べたい. |
キーワード | 学習障害,音楽療法,転倒骨折,皮質下血管性認知症,保健医療福祉連携 |