論文名 | 自らを寿げる老いに向けてのパラダイムシフト |
著者名 | 白波瀬丈一郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,24(1):11-17,2013 |
抄録 | 人類にとって未曾有の超高齢社会が目前に迫っているわが国の現状と比較すると,高齢者自身も社会も老いに対する認識は旧態依然としている.換言すれば,新たな老いのあり方の創造に向けて高齢者自身と社会とが一致団結して取り組むことが喫緊の課題となっている.本論では精神分析と社会心理学的知見に基づいて,高齢者と社会の双方が自らのこととして老いを寿ぐことのできる新たなパラダイムの創造を目指して考察を行う. |
キーワード | 対象喪失,ライフサイクル論,適応論,サクセスフル・エイジング,アクティブ・エイジング |
論文名 | 高齢社会における希望の醸成 |
著者名 | 熊本圭吾,荒井由美子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,24(1):18-25,2013 |
抄録 | 活力ある高齢社会を構築していくには,高齢者のみならず一般の生活者全てが,高齢社会に対し希望を有することが必要であるが,高齢社会における高齢期の希望について,これまでのところ十分には明らかになっていない.そこでsuccessful agingについての知見を参照しつつ,荒井らによる調査結果から検討したところ,高齢期における自己実現の期待を高めることにより,高齢社会における希望の醸成に資する可能性が示唆された. |
キーワード | successful aging,期待,自己実現,主観的年齢,生活満足度 |
論文名 | 高齢者の脳 |
著者名 | 尾昌樹,村山繁雄 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,24(1):26-34,2013 |
抄録 | 高齢者(65歳以上)の脳にみられる所見は,脳重を含めた外観の変化,正常加齢にみられる組織所見,神経変性疾患にみられる異常タンパクの蓄積,脳血管疾患,脳腫瘍,栄養障害,感染症などに分類される.一般に脳重は男性が女性より重く,65歳以降緩徐にその重さを減じる.よく知られた顆粒空胞変性,平野小体,Marinesco小体は正常加齢に伴いみられ,疾患特異性が低い.神経変性疾患に関連する異常タンパクの蓄積としては,アミロイドβタンパク,タウタンパク,α-シヌクレイン,TDP-43などがあり,臨床的な症候が出現する前段階の病変を認めることも高齢者では多い.脳血管疾患は脳梗塞,脳出血などが生じるが,時に無症候性であることも多い.脳腫瘍は,神経膠腫,星細胞系腫瘍,髄膜腫が多い.また,栄養障害に伴うビタミン欠乏などもまれではない.とくに100歳以上の超高齢者では,アルツハイマー病や重篤な脳血管疾患の症例は少ない.背景にある疾患を理解することは,高齢者の医療対応の面からも重要である. |
キーワード | 高齢者,神経病理,認知症,長寿 |
論文名 | 漢方からみた加齢 |
著者名 | 山田和男 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,24(1):35-42,2013 |
抄録 | 漢方医学からみた加齢について,筆者の私見も交えて論じた.陰陽の概念からみれば,加齢とは陽から陰への移行といえる.また,虚実の概念からみれば,加齢とは実から虚への移行といえる.気・血・水の概念からみれば,加齢とは気虚をきたしやすくなることといえる.気虚に対しては参耆剤を用いる.五行説の概念からみれば,加齢とは腎虚の進行といえる.腎虚に対しては地黄剤を用いる.食生活や養生にも十分に留意する必要がある. |
キーワード | 漢方,加齢,参耆剤,地黄剤,養生 |
論文名 | 百寿者の医生物学的側面と心理的側面 |
著者名 | 広瀬信義,権藤恭之 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,24(1):43-51,2013 |
抄録 | 百寿者の医学的所見から,@老化に伴い炎症が亢進すること,A脂肪組織が長寿に重要であること,B虚弱は超高齢者の予後に重要な役割を果たすことが明らかとなった.長寿に関する遺伝情報の解析が今後の重要なテーマとなる.百寿者では認知症有病率は40〜60%であった.百寿者の心理的な特徴は精神的な健康度の高さ(高い幸せ感)にある.この幸せ感は身体的な健康要因ではなく人生満足感の強さが影響していることが示された. |
キーワード | 百寿者,超百寿者,スーパーセンテナリアン,老化炎症仮説,虚弱,認知症,幸せ感,新たなサクセスフルエイジングモデル |
論文名 | 老いゆくことと死生観をもつこと |
著者名 | 島薗 進 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,24(1):52-59,2013 |
抄録 | 現代人は普段から死を意識することが少なく,死生観を持ち合わせないまま老いてゆくといわれる.実際,かつてのような死後の生命の存続の信仰は後退していく.また,死者とともにあることを印象づける儀礼も簡略化される傾向がある.老いて死に近づくと自ずから死に向けて心の準備ができる時代もあった.現代人にとってそれはむずかしいのだろうか.死生観をもち死に向き合う知恵を身につける生き方について考えたい. |
キーワード | 死生観,孤独,世代,超高齢社会,老いゆくこと |