論文名 | 脳循環代謝測定の意義 |
著者名 | 酒寄 修,三品雅洋 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(9):1001-1007,2011 |
抄録 | Ketyらによる全脳血流測定の成功からわずか70年に満たない脳循環代謝研究の歴史ではあるが,その成果から得られた知見は老年精神疾患における病態解明に多大なる貢献をしてきた.そしてその足跡をたどるとき,脳核医学検査の必要性と臨床的意義が改めて再認識できる. |
キーワード | 脳循環代謝,歴史,PET,SPECT |
論文名 | 脳血管障害と血管性認知症の疫学 |
著者名 | 清原 裕 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(9):1008-1014,2011 |
抄録 | 久山町では,過去40年間に高血圧治療の普及に伴って脳卒中の死亡率・発症率は着実に減少したが,近年脳卒中発症率の低下が鈍化した.その要因として,時代とともに肥満・糖代謝異常・脂質異常症など代謝性疾患が急増し,脳梗塞発症の重要な危険因子になっていることが挙げられる.久山町の高齢住民では,減少傾向にあった血管性認知症(VaD)の有病率が近年増加に転じた.追跡調査において,高血圧はVaDの,糖尿病/高血糖はVaDとアルツハイマー病の有意な危険因子であった. |
キーワード | 脳卒中,血管性認知症,高血圧,糖尿病,疫学 |
論文名 | 血管性認知症の診断基準;問題点とこれからの診断基準 |
著者名 | 高野大樹,長田 乾 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(9):1015-1022,2011 |
抄録 | 血管性認知症(VaD)は,血管性危険因子の管理や治療により発症や進行を抑制することが可能とされる反面,さまざまな脳卒中病型を基盤とすることから,これまでの診断基準では診断感度が低かった.近年アルツハイマー病に脳血管障害が併存する病態が広く受け入れられ,さらに軽症の認知機能障害をも包含した血管性認知機能障害(VCI)という概念が提唱されていることから,新たな包括的な診断基準の登場が待たれている. |
キーワード | 血管性認知症,vascular cognitive impairment,血管性認知機能障害,軽度認知機能障害,診断基準 |
論文名 | 脳循環代謝所見と血管性認知症の診断 |
著者名 | 川勝 忍,小林良太 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(9):1023-1029,2011 |
抄録 | 血管性認知症の画像所見は梗塞,出血,動脈硬化などの病態と病変の大きさおよび分布によって多種多様であり,画像だけで診断することは困難である.血管性認知症のなかでも中核をなす多発性ラクナ梗塞性認知症とビンスワンガー病では,前頭葉,時に側頭頭頂葉,視床・基底核,またはびまん性の脳循環代謝の低下がみられる. |
キーワード | 血管性認知症,脳血流,SPECT,PET,診断 |
論文名 | 脳血管障害とアルツハイマー病 |
著者名 | 中塚晶博,目黒謙一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(9):1030-1038,2011 |
抄録 | アルツハイマー病(AD)と脳血管障害の関係について概説する.臨床場面においては,ADと血管性認知症の鑑別はしばしば困難である.かりにADであったとしても,その多くで脳血管障害も合併しており,臨床症状や神経学的所見をいかに解釈すべきかが問題となる.疫学研究によって得られたデータは,血管性危険因子とみなされている高血圧,糖尿病,動脈硬化,ホモシステイン,喫煙,心房細動が,それ自体ADの危険因子としても作用することを示している.それに加え,いくつかの基礎研究は,血管障害に伴う機転がβアミロイドの沈着過程に深くかかわっていることを示唆している.ADと脳血管障害は密接に関係している.臨床場面のみならず,病態を理解するうえでも,血管性因子は重要な鍵のひとつといえるだろう. |
キーワード | アルツハイマー病,脳血管障害,血管性危険因子,慢性腎臓病,血管仮説 |
論文名 | 頸部内頸動脈狭窄症に対する血行再建術後の認知機能変化と脳循環代謝動態 |
著者名 | 小笠原邦昭 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(9):1039-1046,2011 |
抄録 | 頸動脈内膜剥離術前後に神経心理検査を行い,認知機能の変化を検討する試みが行われている.このとき,練習効果,うつ状態の改善,統計の魔術,スコアに上限のある神経心理検査を考慮すべきである.そのうえで手術前後の認知機能変化と脳循環代謝動態とを比較すると,認知機能の術後悪化例の原因は過灌流で大脳皮質神経細胞受容体および白質神経線維の障害が認められる.認知機能の術後改善例は脳血流,脳代謝および大脳皮質神経細胞受容体機能の改善が認められる. |
キーワード | 頸動脈内膜剥離術,神経心理検査,iomazenil SPECT,脳循環代謝 |
論文名 | 脳血管障害とアパシー |
著者名 | 山口修平 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(9):1047-1053,2011 |
抄録 | アパシーは興味や意欲の低下した状態で,その評価には「やる気スコア」が有用である.脳血管障害後のアパシーの頻度は高く,認知機能低下と関連し,病変部位,局所脳血流測定の結果からは,前頭葉や基底核部の障害との関連が示唆される.すなわち前頭-基底核-辺縁系の動機づけ神経機構の障害と関連が深い.アパシーの治療には,アセチルコリン作動薬やドパミン作動薬が有効である可能性がある. |
キーワード | アパシー,報酬系,腹側線条体,局所脳血流,事象関連電位 |