論文名 | 高齢者の社会的孤立と精神保健;総論 |
著者名 | 斎藤正彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(6):653-659,2011 |
抄録 | 今後,日本においては,伝統的な地縁,血縁による結びつきが弱い三大都市圏で高齢者が急増する.子ども家族との3世代世帯は減少し,高齢核家族世帯,高齢単身世帯が増大する.高齢者は,資産,家族・社会的ネットワークの有無などで二極化し,資産もなく人的資源にも乏しい高齢者層で精神保健上の問題が顕在化する.こうした層の精神保健を支援するためには,選別主義的な制度で医療,福祉政策の現状を補完していく政策が求められる. |
キーワード | 高齢社会,孤立,自殺,犯罪,精神保健 |
論文名 | 高齢者のソーシャルサポート・ネットワーク評価尺度 |
著者名 | 岩佐 一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(6):660-671,2011 |
抄録 | 本稿は,地域高齢者の社会的孤立の指標としてソーシャルサポート・ネットワークの評価方法について論じた.ソーシャルネットワーク,ソーシャルサポートの概念について述べ,わが国の地域高齢者を対象とした研究において使用できるソーシャルサポート・ネットワークの代表的な評価方法について紹介した. |
キーワード | 社会的孤立,ソーシャルネットワーク,ソーシャルサポート,知覚されたサポート,サポート源 |
論文名 | 高齢者の社会的孤立と自殺,自殺予防対策 |
著者名 | 本橋 豊,金子善博,藤田幸司 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(6):672-677,2011 |
抄録 | 高齢者の社会的孤立は生きがいの喪失や孤立死をもたらすことから社会問題化している.また,高齢者の社会的孤立は社会的排除につながり,社会的支援が乏しいなかで,自殺のリスク要因になると考えられる.大震災の被災者の心のケアにおいても自殺予防の観点は重要であり,官民連携による自殺予防活動が必要である.高齢者の社会的孤立に起因する自殺を防ぐためには,包摂的社会政策としての自殺対策を総合的に展開していくことが求められる. |
キーワード | 高齢者,社会的孤立,社会的包摂,ソーシャル・キャピタル |
論文名 | 高齢者の社会的孤立と精神病理 |
著者名 | 古城慶子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(6):678-684,2011 |
抄録 | 高齢者の精神病理学的現象の成立に,病態発生因子(陰性症状)として,あるいは病像賦形因子(陽性症状)として,孤立が重要な役割を演じていることを確認した.非疾病性の精神病理学的現象であれ,疾病性のうつ病,統合失調症,認知症の辺縁型であれ,陽性(周辺)症状の形成に孤立という状況が原因の中心にあることが指摘できた.治療論への架け橋として,陰性(中核)症状と陽性(周辺)症状の発生因の本質的相違を認識(構造分析)することの重要性を改めて論じた. |
キーワード | elderly,isolation,depression,late-onset paranoid-hallucinatory syndrome,dementia,psychopathology |
論文名 | 高齢者の社会的孤立と社会病理;孤立死の一般化 |
著者名 | 高橋紘士 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(6):685-691,2011 |
抄録 | 孤立死の問題が社会問題として認識される背景には家族的要因,失業等による社会的役割喪失や地域社会との関係性の希薄化等があり,健康を損なってサービス等に結びつかないことなどがある.今後単独世帯等は激増するため,社会的対処が必要とされる.早期発見体制,近隣組織や互助組織の訪問活動など関係づくりの活動,リーチ・アウト型の保健医療福祉サービスの充実,サービス付き高齢者向け住宅のような住宅からの配慮も重要となる. |
キーワード | 社会問題としての孤立死,孤立死リスク,リーチ・アウト型サービス,地域づくり,ともぐらし |
論文名 | 高齢の統合失調症患者と家族の社会的孤立 |
著者名 | 白石弘巳,伊藤千尋 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(6):692-698,2011 |
抄録 | 中高齢期の統合失調症患者は,日中過ごす場所からのリタイアや,家族の援助が途絶えることで,以前にも増して引きこもりがちな生活を送る可能性が高く,なかには再発に至る事例もあることから,高齢化への移行支援が必要である.中高齢者向けの日中の居場所の確保,「親亡き後」に向けた本人および家族への相談支援をはじめとする支援体制を整備して,早急に開始すべきであることを論じた. |
キーワード | 社会的孤立,統合失調症,家族,引きこもり,高齢化への移行 |
論文名 | 認知症患者と家族の社会的孤立;ソーシャルサポートとQOLに関する問題点 |
著者名 | 佐藤順子,仲秋秀太郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(6):699-708,2011 |
抄録 | 介護者を孤立させないためにソーシャルサポートの役割は大きい.主観的なソーシャルサポートは,精神と身体的健康の双方に大きな影響があるサポートの中心である.充実したソーシャルサポートと介護者のQOLの関連は深い.本稿では,まず認知症患者のQOLの測定方法の問題点に言及し,認知症患者の精神症状とQOLとの関係を述べた.次に,主観的なソーシャルサポートと関連した認知症の介護の問題点を概説した.最後に,介護者の孤立感を改善する介入方法を紹介した.認知症の中核症状のみならず,精神症状に関しての適切な介入は患者と介護者の社会的な孤立を改善する意義が大きい. |
キーワード | QOL,QOL-AD,精神症状,主観的なソーシャルサポート,SSQ,教育的介入 |
論文名 | 高齢者を孤立させない地域政策 |
著者名 | 秋山弘子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(6):709-715,2011 |
抄録 | 地域政策の最大の課題は人のつながりづくりである.「長寿社会のまちづくり」社会実験には,セカンドライフの就労事業やコミュニティ食堂が盛り込まれている.地域に戻ってきた定年退職者が家から出て人と交わって働く場をまちに沢山つくり,ワークシェアリングによる新たな就労モデルをつくる.地域の顔なじみの人たちが一緒ににぎやかに食事をする「わいわい食堂」はコミュニティのダイニングルームとしてまちづくりの拠点となる.だれも孤立しないまちを目指している. |
キーワード | 地域政策,まちづくり,人のつながり,多毛作人生,就労 |