老年精神医学雑誌 Vol.22-5
論文名 高齢者疾患と漢方
著者名 渡辺賢治
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):525-530,2011
抄録 超高齢社会を迎えたわが国では疾患単位で行う医療から全人的な医療への転換を迫られている.漢方医学は長年全人的な考え方で治療学として確立してきたもので,高齢者への医療として注目されている.薬の処方のみならず,予防医学的見地からは身体的養生も重要であるし,認知行動療法的「移精変気」など,薬に頼らない伝統的な知恵も活用する必要がある.医療経済的にも漢方医学の活用は今後ますます重要視されるものと思われる.
キーワード 漢方医学,高齢者,精神疾患,予防医学,全人医療
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論文名 アルツハイマー型認知症と漢方
著者名 水上勝義
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):531-537,2011
抄録 アルツハイマー型認知症に対する漢方治療について概説した.認知機能障害に対しては,加味温胆湯,八味地黄丸,帰脾湯,当帰芍薬散などの効果が報告されている.BPSDに対する代表的な薬剤は抑肝散であり,興奮,易刺激性などの効果が報告されている.このほか抑肝散加陳皮半夏,補中益気湯,釣藤散,黄連解毒湯について述べた.BPSDに対して漢方薬は第1選択薬のひとつである.今後は証を考慮した効果の検討が望まれる.
キーワード アルツハイマー型認知症,漢方,認知機能障害,BPSD
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論文名 血管性認知症と漢方
著者名 後藤博三,嶋田 豊
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):538-543,2011
抄録 近年,血管性認知症に対して比較臨床試験などにより,漢方薬の臨床評価がなされている.釣藤散は,139例を対象とした多施設二重盲検ランダム化比較試験で自覚症状全般改善度,精神症候全般改善度,日常生活動作障害全般改善度における有効性が報告されている.作用機序として微小循環改善作用と電気生理学的指標による認知機能改善作用の関与が示唆されている.ほかに加味帰脾湯,真武湯,黄連解毒湯などの漢方薬に血管性認知症に対する有効性が報告されている.
キーワード 血管性認知症,漢方薬,釣藤散,ランダム化比較試験
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論文名 レビー小体型認知症と漢方
著者名 小阪憲司
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):544-550,2011
抄録 三大認知症のひとつであるレビー小体型認知症(DLB)についての漢方薬治療として現在注目されているものが抑肝散であり,その効果について,いくつかの論文も報告されている.抑肝散は認知症そのものへの影響はないが,幻視,妄想,不安,抑うつなどのBPSDへの効果が知られている.本稿では筆者らが全国的に行ったDLBについての抑肝散の臨床研究の結果も含めて紹介するとともに,最近わかってきた抑肝散の薬理作用についても簡単に紹介することにする.
キーワード レビー小体型認知症,BPSD,抑肝散,抑肝散加陳皮半夏,薬理作用
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論文名 前頭側頭葉変性症と漢方
著者名 谷向 知
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):551-556,2011
抄録 前頭側頭型認知症だけでなく,語議失語を呈する意味性認知症においても3〜5年の経過で行動障害が出現する.他の認知症疾患と比較して前頭側頭葉変性症の介護者は介護負担が大きいことが知られており,行動障害を伴う患者に対して,過鎮静にすることなく症状の改善が望める薬剤が求められている.抑肝散はセロトニンの遊離促進作用や興奮性グルタミン酸上昇抑制作用があることが知られており,前頭側頭葉変性症でみられる興奮をはじめとする行動障害に比較的早期に効果が期待できる薬剤であると考えられる.
キーワード 前頭側頭葉変性症(FTLD),前頭側頭型認知症(FTD),意味性認知症(SD),漢方,抑肝散
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論文名 高齢者のうつ病・うつ状態と漢方
著者名 中田輝夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):557-561,2011
抄録 本稿では高齢者のうつ病,うつ状態の軽症例(ハミルトンのうつ状態評価尺度〈HAM-D〉で30点以下,自殺念慮に乏しい例)を対象に,漢方製剤である加味帰脾湯および抑肝散加陳皮半夏を主剤として処方した例について報告する.両製剤について5例ずつ,「やや有効」以上といえる症例のみであるが,すでに発表済みの症例についての経験から,抑制症状優位群に対しては前者を,不安・焦燥症状優位群に対しては後者を処方することによって,少なくとも6割以上の効果が期待できると考える.
キーワード 高齢者,軽うつ病,加味帰脾湯,抑肝散加陳皮半夏,使い分け
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論文名 高齢者の不眠症に対する非薬物的介入法と漢方
著者名 井口博登
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):562-570,2011
抄録 加齢とともに不眠の訴えは増加し,原発性不眠症(DSM-W)の有病率は,高齢者では25%に上るとされる.多くは睡眠導入薬による治療がなされるが,副作用の問題のほかに,加齢性の睡眠構築の変化が基礎にある高齢者では長期投与となりやすく,効果の限界もある.本稿では,高齢者の不眠症に対して効果が証明されつつある非薬物的な介入法とともに,日本の代替医療である漢方的な視点からの,睡眠障害に対する対応について紹介した.
キーワード 原発性不眠症,加齢,認知行動療法,漢方,養生
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論文名 高齢者の不安・身体化症状と漢方
著者名 山田和男
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(5):571-576,2011
抄録 高齢者の不安・身体化症状の治療薬のひとつとして,漢方薬を選択することがある.漢方薬を処方する際には,気の異常や胸脇苦満といった漢方医学的概念が役立つ.高齢者の不安・身体化症状に対しては,柴胡剤や気剤をはじめとしたさまざまな漢方方剤が用いられる.不安・身体化症状に対する漢方治療に関するエビデンスレベルの高い報告はないが,漢方治療が身体表現性障害患者のQOLの改善に寄与していることを示唆する報告がある.
キーワード 不安,身体化,身体表現性障害,漢方,高齢者
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