老年精神医学雑誌 Vol.22-4
論文名 成年後見制度10年の軌跡;公的後見制度の現状と課題
著者名 五十嵐禎人
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):389-399,2011
抄録 成年後見制度について,最高裁判所の「成年後見関係事件の概況」に基づいて検討を行った.この10年間で成年後見制度の利用は著しく増加したが,そのほとんどはほぼ全面的な能力制限を伴う後見であり,自己決定の尊重より保護に重きがおかれた運用状況にある.将来的には制度根幹にかかわる見直しが必要であること,より柔軟な能力判断を行うことにより現行制度に関しても柔軟な運用が可能であることなどを指摘した.
キーワード 成年後見制度,精神鑑定,高齢社会,行為能力,自己決定
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論文名 任意後見制度の現状と課題
著者名 中山二基子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):400-405,2011
抄録 任意後見制度は自分で任意後見人を決め,判断能力低下後の財産管理などを委任しておく制度である.判断能力低下後,家庭裁判所が任意後見監督人を選任したとき,後見は開始する.本人の自己決定を尊重した,老いじたくには有用な制度である.しかし,最近の利用状況をみると,利用者数の低迷に加えて,制度の理念から外れた利用が広がっていることが懸念される.今,この制度はどのような問題を抱えているのか.問題の克服にはなにが必要なのか.
キーワード 任意後見人,任意後見監督人,判断能力,自己決定の尊重,老いじたく
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論文名 社会貢献型後見人養成の現状と課題
著者名 金森順子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):406-413,2011
抄録 ・成年後見制度利用促進のため,「成年後見活用あんしん生活創造事業」を創設.
・区市町村に成年後見制度推進機関を設置・運営し,制度を普及・促進.
・都と区市町村が連携し,後見人等候補者養成事業を実施.
・区市町村が基礎講習受講者の募集・選考,都で基礎講習を実施,推進機関は基礎講習実習活動以降の支援.
・社会貢献型後見人の後見業務の標準化等,選任促進に向けた取組みが課題.
キーワード 成年後見活用あんしん生活創造事業,成年後見制度推進機関,後見人等候補者養成事業,社会貢献型後見人,基礎講習と実習活動
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論文名 社会福祉協議会による高齢単身者等の支援;自分らしく安心して地域で暮らすために
著者名 石渡和実,比留間敏郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):414-420,2011
抄録 東京都立川市の地域あんしんセンターたちかわ,町田市の福祉サポートまちだの実践に注目し,社会福祉協議会が成年後見制度を活用して,高齢単身者などの地域生活を支援している現状を紹介する.社協ならではのネットワークを生かし,自己決定を尊重したエンパワメントの視点に立つ,ソーシャルワーカーとしての支援が展開されている.その際,日常生活自立支援事業での蓄積を生かし,首長申立制度を活用し,市民後見人が大きな力を発揮していることが注目される.
キーワード 成年後見制度,社会福祉協議会,日常生活自立支援事業,法人後見,首長申立,市民後見人,エンパワメント
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論文名 成年後見鑑定の現状と課題
著者名 白石弘巳
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):421-427,2011
抄録 2000年4月に発足した現行の成年後見制度開始のための精神鑑定は,施行10年間で最高裁判所が用意した手引と書式に基づいて行われ,鑑定期間は1か月以内が約50%,鑑定費用は「5万円以下」が63.3%に増加するなど,鑑定期間の短縮化と費用の低廉化の傾向が認められた.また,2007年ころから鑑定の実施率が非常に低下し,診断書を重視した審判が行われる方向にあることに関し,診断書の充実と本人面接の重視が課題であると論じた.
キーワード 成年後見,精神鑑定,能力判定,本人面接,診断書
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論文名 後見人等の医療同意権について 医療の同意能力がない者に対する医療の保障
著者名 赤沼康弘
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):428-432,2011
抄録 医療の同意能力がなく,代わって同意する家族もいない成年者に対する医療はどうすればよいのか.医療を行う立場にある医師や医療ケアチームに判断を委ねることは,医療の同意を求める趣旨に反すると考えられる.したがって,通常の医療行為については,療養看護の事務を職務とする成年後見人に同意する権限を与えるのが相当である.ただし,過大な責任を負担させないため,重大な医療行為については第三者的機関の許可を必要とすべきであろう.
キーワード 医療の同意,同意能力,違法性阻却事由,成年後見人,療養看護の職務
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論文名 後見人等の医療同意権について 後見人への医療同意権付与に関する問題点
著者名 斎藤正彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(4):433-437,2011
抄録 成年後見人に医療同意権を付与することに反対する立場から意見を述べた.一身専属的な医療上の決定について特定の個人に他に優先する権限を与える根拠はないこと,現行制度で選任されている成年後見人の質には疑問があり,広範な法的権限に加えて医療上の意思決定についてまで他に優越する権利を付与することは危険であること,成年後見人は被後見人との間に利益相反をきたす可能性が高いことを反対の理由として挙げた.
キーワード インフォームド・コンセント,代諾権,意思能力,成年後見制度
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