老年精神医学雑誌 Vol.22-12
論文名 認知症を伴う高齢者の終末期の現状と課題
著者名 三山吉夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(12):1363-1368,2011
抄録 高齢社会が進むなか,認知症高齢者の終末期医療のあり方が問題になっている.認知症高齢者の終末期の現状と問題点を論じた.漸次,意思表示が困難となる認知症高齢者の看取りの場の現状と課題を論じた.認知症高齢者の尊厳の確保について,医療従事者と家族の関係を論じた.終末期の処置判断における関係者の役割と問題点および課題を論じた.認知症高齢者の死について,安楽死,自然死,平穏死,納得死の意義を考察した.
キーワード 認知症,末期医療,延命,在宅死,納得死
↑一覧へ
論文名 施設環境からみた認知症高齢者の終末期医療・ケア
著者名 北川公子,荒木亜紀
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(12):1369-1375,2011
抄録 現在,認知症高齢者の終末期医療・ケアを担う施設の多様化が進んでいる.本論では,介護保険3施設の入所者の状態や終末期を取り巻く諸状況,ならびに医療・介護制度の現状等を整理した.そのうえで,介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム),介護老人保健施設,グループホームについて,それぞれの施設環境の特性を生かした終末期医療・ケアの課題を検討した.
キーワード 認知症高齢者,終末期医療・ケア,介護老人保健施設,特別養護老人ホーム,グループホーム
↑一覧へ
論文名 進行期認知症の臨床症状;原因疾患による相違と対応法
著者名 数井裕光,和田民樹,野村慶子,山本大介,杉山博通,清水芳郎,吉山顕次,武田雅俊
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(12):1376-1383,2011
抄録 アルツハイマー病,レビー小体型認知症,前頭側頭型認知症は変性性認知症に分類されるが,これらの疾患は現在,完治させることはできず緩徐に進行していく.本稿ではこの3疾患の臨床症状の推移を整理した.初期から中期にかけては疾患によって出現しやすい症状が異なる.そして治療法,対応法も異なる.しかし進行期にはどの疾患でもADL障害が顕著になり,終末期には発語や自発運動がほとんどなくなり,ベッド上臥床となる.
キーワード アルツハイマー病,レビー小体型認知症,前頭側頭型認知症,重症度,BPSD,ADL
↑一覧へ
論文名 認知症終末期における感染症への対応
著者名 柴田朋子,大塚太郎,新井平伊
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(12):1384-1390,2011
抄録 認知症終末期患者の多くは長期療養施設に入院・入所している.認知症終末期における死因として,嚥下性肺炎は最も注意すべき疾患のひとつである.各施設によってとれる対策は異なるが,誤嚥の予防,向精神薬の調整,嚥下機能改善のための薬物療法について紹介した.一方,蔓延しやすい感染症として,ノロウイルス腸炎,インフルエンザ,疥癬が挙げられる.これら感染症には予防,迅速な初期対応が重要である.とくに徘徊がある認知症終末期患者では注意が必要である.
キーワード 認知症,嚥下性肺炎,ノロウイルス,インフルエンザ,疥癬,向精神薬,BPSD
↑一覧へ
論文名 認知症終末期の食事摂取と栄養
著者名 八木 孝,北村 伸
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(12):1391-1397,2011
抄録 認知症終末期には認知症の進行や身体合併症により経口で食事が摂れなくなる状態をきたす.経口摂取が困難になると栄養補給が不十分となり,さらに身体状態を悪化させることにつながる.現状では経口摂取のできない認知症患者に,経静脈,経管,胃瘻などの方法で栄養の補給が行われている.認知症終末期の食事摂取と栄養補給をいかにしていくべきかにはさまざまな問題点がある.本稿では各種栄養管理の方法について概説するとともにその実施をめぐる議論について述べた.
キーワード 栄養管理,中心静脈栄養,経管栄養,胃瘻
↑一覧へ
論文名 認知症終末期におけるスピリチュアルケア
著者名 田中雅博
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(12):1398-1404,2011
抄録 認知症の緩和ケア・スピリチュアルケアについて私見を記した.一度獲得した知的能力が失われていく苦しみは,自己存在の喪失にかかわる苦しみであり,すなわちスピリチュアルペインである.認知症患者の不安の根底にはスピリチュアルペインがある.そして,日本の伝統的文化や習俗のもとになっている仏教は,本来スピリチュアルケアであった.看病禅師と臨終行儀の歴史があり,安心(あんじん)を与えるケアが行われてきた.
キーワード 緩和ケア,スピリチュアルケア,インフォームド・コンセント,事前指示,追善供養
↑一覧へ
論文名 認知症終末期の臨床倫理
著者名 箕岡真子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(12):1405-1411,2011
抄録 認知症終末期ケアを考えるとき,患者本人の望む治療のゴールを踏まえ,“その本人にとって”“人生のそのときに”“その状況において”なにが最も望ましいQOLなのかを考慮することが倫理的には重要である.そして,倫理的に適切な“看取り”を実践するためには,@医学的視点,A本人の意思,B家族の意思,C法的視点,D社会のコンセンサスについて十分な考慮がなされる必要がある.
キーワード 看取り,終末期延命治療,自己決定権,事前指示,家族同意
↑一覧へ