老年精神医学雑誌 Vol.22-10
論文名 老年期精神科臨床と心理検査
著者名 本間 昭
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1113-1116,2011
抄録 老年期精神科臨床で用いられることが多い,認知症のスクリーニングを目的とした検査法の来歴とその運用に関する考え方を示した.今後の認知症者の増加を考えればより軽度の段階でスクリーニングを含めて疑う手だてが広く共有され,受診者の認知症の診断や治療に対する知識や認識によって,スクリーニングの効率が左右されることから,検査方法についての検討と同時にさらなる啓発活動が積極的に進められる必要がある.
キーワード 認知機能検査,認知症,スクリーニング,アルツハイマー病治療薬
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論文名 認知機能の加齢変化と高齢者への知能検査の適用
著者名 山中克夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1117-1124,2011
抄録 本稿では,臨床現場で利用頻度が高い知能検査(WAIS)のデータを中心に,認知機能の加齢変化(cognitive aging)に関する方法論や研究成果を具体的に紹介した.これまでの研究では,方法論による違いはあっても,ライフスパン全体でみた諸能力の保持・低下の順位は一貫した傾向が示されている.さらに本稿では,知能検査(WAIS)の高齢者への適用に関する解説を行った.
キーワード cognitive aging,横断法,縦断法,系列デザイン,WAIS
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論文名 高齢者の日常生活の遂行能力と心理検査
著者名 川合嘉子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1125-1130,2011
抄録 認知障害による日常生活の遂行能力の低下は,認知症疾患の重要なサインであり,両者の関連を抑えるために心理検査は欠かせない.本稿では「もの忘れ外来」のデータ分析と認知症疾患治療病棟の事例を通し,心理検査の活かし方を論じた.心理検査結果は認知症の進行や精神症状により変化しうるため,定期的な多面的アセスメントの一環として行うこと,結果を具体的な支援に結びつけることが重要である.高齢者と家族の支援のため,さらなる研究と実践を積み重ねていくことが老年精神医学の専門家の役割であろう.
キーワード 高齢者,遂行能力,認知症,心理検査,ADAS-J cog
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論文名 高齢者の経済行為能力と心理検査
著者名 松田 修
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1131-1136,2011
抄録 高齢者の経済行為能力(FC)を低下させる主たる要因は,認知能力の低下である.認知能力の評価には心理検査が用いられることが多いが,検査成績から高齢者のFCを判断する際には留意すべき点がある.認知症高齢者のなかには,IQや検査成績が正常域であっても,経済行為の遂行に問題のある高齢者は少なくない.正常加齢によっても,処理速度,知覚統合,ワーキングメモリが低下し,高齢者のFCを低下させる可能性もある.
キーワード 経済行為能力,心理検査,認知症,正常加齢
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論文名 高齢者の運転技能と心理検査の活かし方
著者名 藤田佳男,三村 將
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1137-1142,2011
抄録 高齢者が引き起こす交通事故は増加しているが,その運転適性を評価することは容易ではない.本稿ではまず高齢者や認知症者の運転行動の事故の特徴を概説し,次に認知機能スクリーニング検査だけでは運転能力は予測困難であることを述べた.運転能力の評価は認知症の重症度の判断に加え,神経心理学的検査,運転シミュレータ,路上テストと事故歴などを勘案して判断する必要があるが,有効視野の測定を加えることにより正確になると考えられる.
キーワード 自動車,認知症,有効視野,認知機能検査,高齢者
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論文名 高齢者の機能性精神疾患と心理検査;うつ病と認知症の鑑別における心理検査の役割
著者名 松澤広和
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1143-1147,2011
抄録 高齢者のうつ病と認知症の鑑別をめぐる心理検査の役割について論じた.前半は,筆者が心理検査を担当した症例として,うつ病と診断された70歳代男性への心理検査を取り上げ記述した.後半は,心理検査を実施し解釈する際の留意点について論じた.うつ病と認知症の鑑別に際しては,心理検査結果の量的な側面(点数)ではなく質的な側面(誤り方)を観察することが重要である.また,両疾患では課題への反応の仕方の一貫性に差があると考えられ,複数回の検査の実施が効果的であると考えられる.
キーワード うつ病,認知症,鑑別,心理検査,記憶障害
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論文名 認知症ケアにおける心理検査;認知症看護・介護における心理検査所見の活かし方,伝え方
著者名 浅見大紀
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1148-1153,2011
抄録 認知症看護・介護においてどのように心理検査の結果を活かすのか,活かすためには看護師・介護士にどのように伝えるべきなのかについて,筆者の見解を論じた.活かし方では検査態度,認知機能の障害プロフィールの把握,行動観察の協働実施の重要性についてふれた.伝え方では,点数のみの報告にしないこと,認知機能の低下と残存の両方に言及すること,スタッフの心理教育を意識することなどについて述べた.最も重要なのは検査結果を現場で活かしてくれる看護師・介護士との日頃からのコミュニケーションである.
キーワード 認知症,心理検査,チーム医療,認知機能,障害プロフィール
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