論文名 | 認知症の相補代替医療(CAM) |
著者名 | 山口晴保,牧 陽子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(1):9-15,2011 |
抄録 | 相補代替医療は通常の医療に含まれない医療の総称であるが,本特集では認知症を対象に人間が人間にかかわる療法のみを取り上げている.「脳には可塑性があり,脳病変に打ち勝つ力もある」という考えに立ち,「認知症という困難を抱えた人が,残された能力を発揮しながら前向きに穏やかに残りの人生を生きることを支える」ことが認知症医療である.プラセボ効果も味方にし,全人的な対応で自然治癒力/残存能力を引き出すholisticな医療という相補代替医療に通じるところがある. |
キーワード | 認知症,相補代替医療,治癒力,リハビリテーション,非薬物療法 |
論文名 | 認知症高齢者に対するアニマルセラピー |
著者名 | 横山章光 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(1):16-21,2011 |
抄録 | 認知症における「アニマルセラピー」という非薬物療法の位置づけを明確化し,どこにポイントをおいたらよいかを具体的に「犬を連れた散歩」というキーワードから読み解く.また同時に,補助療法としてのアニマルセラピーを動物の配置ごとに分類し,個々の注意点・配慮すべき点,そしてスタートさせるうえでの課題を指摘する. |
キーワード | 認知症,アニマルセラピー,補助犬,行動療法,作業療法 |
論文名 | 認知症高齢者に対する園芸療法 |
著者名 | 杉原式穂 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(1):22-26,2011 |
抄録 | 植物のもつ効果を感覚体験と能動体験から解説し,@植物の成長を通して得られる精神心理機能効果,A自ら活動を行うことによる身体機能効果,B先を見越して計画を立てる認知機能効果,C人との関係における潤滑油となる社会的効果,の4つの視点から認知症高齢者に対する園芸療法の効果について考察する. |
キーワード | 園芸療法,認知症高齢者,植物効果,相補代替療法の比較 |
論文名 | BPSDに対するアロマ・香り療法;視覚,体性感覚などの感覚刺激による療法も含めて |
著者名 | 藤井昌彦,松田宇泰,鞠子篤史,佐々木英忠 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(1):27-31,2011 |
抄録 | ラベンダーアロマ療法はラベンダーオイルをBPSDの患者の両手に1〜2滴たらすことにより,香りが広がり,香りに気をとられ,BPSDを一時的に忘れる方法である.この方法によりBPSDの症状が軽快している.この方法は大脳辺縁系を刺激する方法であり,大脳辺縁系から出る怒りなどの感情を向精神薬で抑制する方法ではなく,むしろ刺激する方法がよい. |
キーワード | ラベンダーアロマ療法,大脳辺縁系,新皮質,向精神薬,認知症 |
論文名 | 笑い・ユーモア療法による認知症の予防と改善 |
著者名 | 大平哲也,広崎真弓,今野弘規,木山昌彦,北村明彦,磯 博康 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(1):32-38,2011 |
抄録 | 地域住民2,471人を対象として笑いの頻度と生活習慣との関連を検討した結果,声を出して笑う頻度は男性よりも女性のほうが多く,年齢とともに少なくなった.また,男女ともにうつ症状との負の関連,野菜の摂取頻度との正の関連がみられ,男性では,喫煙者ほど笑う頻度が少なかった.65歳以上の高齢者では,笑う頻度が少ないほど,認知機能低下症状ありの割合が多くなり,さらに,笑う頻度が少ない群ほど,1年後に認知機能低下症状が出現するリスクが高かった.一方,半年間の笑いによる介入の結果,参加者の心拍数の低下,QOLの改善がみられたが,認知機能に変化はみられなかった.笑い・ユーモア療法は認知症の予防,およびうつ症状や睡眠障害など認知症の周辺症状の改善に効果が期待できる. |
キーワード | 笑い,ユーモア,認知機能,疫学研究,介入研究 |
論文名 | 認知症高齢者の音楽療法 |
著者名 | 丸山敬子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(1):39-44,2011 |
抄録 | 認知症高齢者に対する音楽療法はBPSD軽減に有効だとの報告がある.音楽療法が相補代替療法としての機能を発揮するためには,治療手段としての音楽の有効的活用と,パーソン・センタードの治療過程が重要である.音楽の芸術的性質から,その治療効果を定量的に立証することが困難な面があるが,筆者はBPSDが軽減したケースを多く経験しており,今後の音楽療法の普及に期待する. |
キーワード | 認知症,高齢者,BPSD,相補代替療法,音楽療法 |
論文名 | 認知症高齢者への心理劇(サイコドラマ)療法 |
著者名 | 高良 聖 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(1):45-50,2011 |
抄録 | 心理劇は,即興劇というアクションを媒介とした集団精神療法である.認知症高齢者への適用においては,ドラマのうえで表現される役割体験を通して,自発性の獲得,情動の賦活そして統合を目指す.認知症者は,その記憶障害に伴い,社会的役割の認識は困難であり,自己役割を関係性のなかで展開することがむずかしい.したがって,セラピストとして,できるかぎり現実に即した具体的な主題を取り上げる,そして積極的に相手役をとるなどの治療的介入が必要である. |
キーワード | 心理劇,認知症高齢者,役割,具体的主題,治療的介入 |
論文名 | 認知症に対する東洋医学による療法;鍼灸・指圧・漢方など |
著者名 | 松本 勅 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(1):51-57,2011 |
抄録 | 東洋医学の治療法には,薬物療法としての漢方薬治療と,刺入,圧迫などの機械的刺激や温熱刺激,鍼通電刺激などを用いる物理療法としての鍼・灸・指圧・按摩等の治療がある.東洋医学では独特な臓腑や生命活動のエネルギーとしての気,血,津液(水)の存在を考えており,気血の生成や循環の異常による不足(気虚,血虚)や流れの停滞(気滞,血?=?血)が病的状態の原因と考えている.認知症はとくに血虚,血?と関係が深く,臓腑は心が最も関係が深く,さらに肝,腎,脾,肺の影響も受けているので,それらの異常を明らかにして調整する治療が中心になる. |
キーワード | 認知症,東洋医学的治療,鍼灸治療,漢方治療,指圧 |
論文名 | 認知症に対する運動療法 |
著者名 | 菅野圭子,横川正美,山田正仁 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(1):58-61,2011 |
抄録 | 認知症に対する運動療法の適用は,身体の活性化,生活リズムの調整,良質な睡眠の獲得から認知症の行動心理学的症候の軽減を間接的に目指すアプローチ法から,認知機能改善を直接的に目指すアプローチ法へと変化している.また,運動を認知症の認知機能改善に用いることが有効であることを示唆するRCTが増加してきている.本稿ではそれらを文献的に考察する. |
キーワード | 認知症,運動療法,有酸素運動,介入研究 |
論文名 | 認知症高齢者に寄り添うタクティールケア |
著者名 | 木本明恵 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(1):62-69,2011 |
抄録 | タクティール?ケアは,皮膚に柔らかく触れるソフトマッサージである.タクティールケアが開発されたスウェーデンでは,不安やストレスの緩和を目的に,また非言語的コミュニケーション方法のひとつとして,保健,医療,福祉の分野で幅広く活用されている.とくに介護の現場においては,認知症高齢者の行動・心理症状(BPSD)の緩和を目的とした活用が目立つ.日本においても,認知症高齢者のケアにおいて,タクティールケアの活用が広まっている.日本における研究成果としては,鈴木らの研究によって,タクティールケアの長期介入によってBPSDが有意に改善されたことが報告されている. |
キーワード | 認知症高齢者,タクティールケア,BPSD,手当て,give-and-take |