老年精神医学雑誌 Vol.21-7
論文名 司法精神医学における老年精神医学の位置と役割
著者名 斎藤正彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(7):735-740,2010
抄録 高齢社会を背景に,司法精神医学の分野において,老年精神医学が果たすべき役割が増している.刑事,民事の司法にとどまらず,法律と精神医学との関連において,老年精神医学が果たすべき役割について述べた.正常加齢に関する多次元的な評価,民事,刑事精神鑑定の問題,高齢者の犯罪に関する問題,矯正施設や医療観察法施設内での高齢者の問題,成年後見制度に関する問題,高齢者の人権擁護,生活上のセーフティーネットの問題などについて概観した.
キーワード forensic psychiatry,geriatric psychiatry,crime,prison,guardianship
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論文名 高齢者にかかわる民事,刑事事件の状況
著者名 朝比奈次郎,三澤孝夫,平林直次
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(7):741-746,2010
抄録 5人に1人が高齢者という「本格的な高齢社会」となり,高齢者にかかわるさまざまな事件について取りざたされる機会も多くなっている.本稿では,高齢者による犯罪,高齢者が被害者となる犯罪,高齢者がかかわる民事事件における遺産相続に関する問題,成年後見制度について概観する.
キーワード 高齢社会,粗暴犯,自動車事故,成年後見制度,遺産相続
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論文名 成年後見に関する精神鑑定,現状と課題
著者名 水野 裕
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(7):747-755,2010
抄録 新しい成年後見制度のもとで,後見を中心に利用件数が増加している.その一方,申立手続きの簡略化,省略化もあまり論議をされることなく,進められてきた.以前は家裁が行っていた鑑定人の選定,依頼などは,申立ての手続きのひとつとして利用者がしなければならなくなり,鑑定書の簡略化,さらに近年では,面接および鑑定自体が省略されることが増えている.これらによる利用者の不利益,または制度の悪用の危険について事例を通して検討を試みた.
キーワード 成年後見制度,申立手続きの簡略化・省略化,鑑定連絡票,鑑定の省略,面接の省略
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論文名 民事裁判における高齢者の意思能力
著者名 熊谷士郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(7):756-762,2010
抄録 本稿は,高齢者の意思能力に関して,財産上の契約における意思能力,遺言能力,その他の身分行為能力(とくに,養子縁組能力)に分け,裁判例の現状を概観するとともに,理論的な課題について指摘するものである.従来から裁判例の分析は豊富であるが,そのような裁判例を理論的に受け止め評価するための分析枠組みが必ずしも十分でなく,これを構築することが今後の課題であると思われる.
キーワード 意思能力,遺言能力,婚姻能力,養子縁組意思
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論文名 刑事施設における受刑者の高齢化問題
著者名 奥村雄介
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(7):763-769,2010
抄録 近年,刑事施設においては過剰収容が続くなか,高齢化の波が押し寄せ,介護を含む医療需要がますます増大している.欧米などの先進国と比較すると,一般人口における高齢者比の増加以上に受刑者における高齢者比が増加していることが,わが国の特徴である.本稿では,まず高齢者犯罪の全般的傾向と特徴について述べ,次に高齢受刑者の処遇・医療上の課題について検討し,最後に社会復帰するにあたっての問題点と対策についてふれる.
キーワード 高齢化,受刑者,矯正医療,養護処遇,社会復帰
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論文名 刑事精神鑑定と高齢者の精神障害
著者名 五十嵐禎人
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(7):770-778,2010
抄録 高齢者人口の増加もあり,近年,高齢犯罪者の増加が指摘されており,高齢犯罪者に関する刑事精神鑑定も増加傾向にあると推測される.本稿では,刑事精神鑑定の種類や裁判員制度のもとでの刑事精神鑑定について解説し,次いで,わが国における高齢者犯罪の現状や触法行為を行った高齢者の精神医学的特徴について概観した.それらを踏まえて,高齢者の刑事精神鑑定の特徴と課題について,判例の紹介も含めて述べた.
キーワード 責任能力,訴訟能力,精神鑑定,司法精神医学,認知症高齢者
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