老年精神医学雑誌 Vol.21-2
論文名 軽度認知症をスクリーニングするためのpsychometrics
著者名 本間 昭
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(2):169-172,2010
抄録 従来汎用されている認知症のスクリーニングツールは必ずしも軽度の判別を目的として作成されていないため,軽度認知症を判別する十分なsensitivityとspecificityが得られない場合がある.わが国では病院等の受診例を対象にツールが検討されているが,プライマリ・ケア現場での検討とそのニーズを踏まえた専門家によらずに実施できるツールが開発される必要がある.認知症のスクリーニングの倫理的側面はさらに論議されるべき課題である.
キーワード 軽度認知症,スクリーニングツール,プライマリ・ケア
論文名 軽度認知症スクリーニングの臨床実践
著者名 松田 修
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(2):173-176,2010
抄録 本稿では,軽度認知症スクリーニングの臨床実践について神経心理学の観点から論じた.軽度認知症スクリーニングにおける神経心理学的検査の役割は軽度認知症ないしは原因疾患の初期に起こる軽微に神経心理学的症状の検出であること,エピソード記憶と実行機能が重要な標的症状であること,検査場面では検査の標準的な実施法を遵守しつつ,被検者の能力をいかに引き出すかが重要であることなどを指摘した.
キーワード 軽度認知症,認知症の早期発見,神経心理学的検査
論文名 軽度認知症スクリーニングテストとしてのリバーミード行動記憶検査
著者名 和田民樹,數井裕光,武田雅俊
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(2):177-182,2010
抄録 リバーミード行動記憶検査は,欧米を中心にわが国においても日常記憶の検査として広く用いられているが,定型的な記憶検査と異なり,指示や手順が容易で短時間で施行できるという特性を有している.筆者らは認知症患者に対するスクリーニング検査としての本検査の有用性を検討した.その結果,軽度のアルツハイマー病患者のみならず,アルツハイマー病の前段階を多く含むとされている軽度認知機能障害(MCI)患者に対しても有用であると考えられた.
キーワード リバーミード行動記憶検査,スクリーニング,アルツハイマー病,MCI,日常記憶
論文名 7-Minute Screen(7MS)とMemory Impairment Screen(MIS)
著者名 伊集院睦雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(2):183-189,2010
抄録 軽度認知症例をスクリーニングするための神経心理学的検査として2つのツールを紹介した.7-Minute Screenはとくにアルツハイマー型認知症を鑑別するために開発された4つの下位検査からなるツールであり,感度92%,特異性96%と非常に高い精度をもつ.Memory Impairment Screenは,わずか4単語の簡便な手がかり再生課題ながら,感度87%,特異性96%と十分な鑑別力を有する.スクリーニングにあたっては,実施目的にあったツールを選択し,その特性を理解したうえで利用する必要がある.
キーワード 7-Minute Screen,Memory Impairment Screen,アルツハイマー型認知症,軽度例,スクリーニング
論文名 The Rapid Dementia Screening Test(RDST)
著者名 酒井佳永
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(2):190-197,2010
抄録 The Rapid Dementia Screening Test日本語版は言語流暢性検査と数字変換課題の2課題からなる.施行時間が3〜5分と短く特別な用具を必要としないため,集団検診やかかりつけ医による認知症の早期発見に役立つ.ごく軽度〜軽度認知症のスクリーニングにおいて,カットオフを7/8としたとき感度71.0,特異度87.7でありMMSEと同等もしくはより高い判別精度がある.また数字変換課題では認知症患者に特有の誤りであるshift errorが存在し,誤りの質に注目することで有用性はより高まると考えられる.
キーワード dementia,early detection,screening,neuropsychological test,SSLR
論文名 Montreal Cognitive Assessment(MoCA)の日本語版作成とその有効性について
著者名 鈴木宏幸,藤原佳典
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(2):198-202,2010
抄録 軽度認知障害(MCI)を鑑別する,国際的にも認知された簡易スクリーニング検査の開発が求められている.そのような要求に応えうる検査のひとつとしてMontreal Cognitive Assessment(MoCA)が開発されている.本稿ではMoCAの概要について紹介し,次いで筆者らが作成した日本語版MoCA(MoCA-J)の紹介とその有効性について述べる.MoCA-JはMCIの鑑別において高い感度と特異度を示した.軽度アルツハイマー型認知症の鑑別においてはさらに高い感度を示した.
キーワード Montreal Cognitive Assessment(MoCA),日本語版,軽度認知障害(MCI),軽度アルツハイマー型認知症,スクリーニング
論文名 A Quick Test of Cognitive Speed of Dementia(AQT)
著者名 高橋ふみ,粟田主一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(2):203-208,2010
抄録 A Quick Test of Cognitive Speed(AQT)は,知覚速度および認知速度を測定する簡便な認知障害スクリーニング検査である.日本人高齢者を対象に,AQTの軽度認知障害(MCI)スクリーニング検査としての妥当性を検討した結果,AQTは,感度80%,特異度76%で,MCIと健常高齢者を弁別することが確認された.
キーワード A Quick Test of Cognitive Speed(AQT),軽度認知障害(MCI),アルツハイマー型認知症(AD),スクリーニング検査,認知速度
論文名 軽度認知症をスクリーニングするための神経心理学的テスト・バッテリー
著者名 河野直子,梅垣宏行
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(2):209-214,2010
抄録 本稿では,神経心理学的検査およびそのバッテリーについて,認知症臨床における位置づけ,基本特性,現代的な課題を概観した.神経心理学的テスト・バッテリーを用いた軽度認知症のスクリーニングでは,最小限のコストで最大限の精度を得ることを目指し,教育歴など被検査者内要因を制御すること,記憶課題の認知負荷を高めること,注意・作動記憶や言語流暢性の指標を取り入れることなどが,具体的な戦略として望まれる.
キーワード 神経心理学的検査,バッテリー,認知症,早期診断,認知機能の領域
論文名 集団認知検査ファイブ・コグ
著者名 矢冨直美
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(2):215-220,2010
抄録 ファイブ・コグは,高齢者の認知機能を評価する集団認知検査として開発された.5つの認知領域の機能を測定するものとして作られ,手がかり再生課題(記憶・学習),文字位置照合課題(注意),動物名想記課題(言語),時計描画課題(視空間認知),類似課題(思考)の5つの課題と手先の運動機能を図る運動課題とからなっている.集団で実施でき,年齢と教育年数,性で調整された標準化得点が得られるという点で特徴的である.
キーワード 集団認知検査,認知機能,AACD(加齢関連認知的低下),MCI(軽度認知障害),標準化
論文名 電話による認知機能スクリーニング
著者名 小長谷陽子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(2):221-227,2010
抄録 近年の高齢者の増加に伴い,認知症の患者数も増えている.認知症の早期診断・治療および予防には認知機能の適切な評価が重要である.電話による認知機能スクリーニングは簡便で受け入れられやすく,感度,特異度も十分であり,大規模調査や疫学調査のみならず,臨床面での応用も可能であり,医療機関に来られない場合や,定期的なフォローアップにも応用できる.代表的な電話による認知機能スクリーニングを紹介する.
キーワード 認知機能,電話スクリーニング,TICS,TELE
論文名 軽度認知症のための簡便な神経心理学的検査:Small Test;その考え方
著者名 鹿島晴雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(2):228-231,2010
抄録 筆者が作成,実施している「軽度認知症のための簡便な神経心理学的検査:Small Test」につき,その作成に至った考え方と経緯を紹介した.認知症を類型としてとらえ機能局在の立場から検査課題を選択したこと,また課題の実施と評価に関し神経心理学的検査における中庸的アプローチを重視したことを述べた.
キーワード 認知症,神経心理学的検査,中庸的アプローチ
論文名 軽度認知症のための簡便な神経心理学的検査:リバーシブルテスト,手指模倣検査,左右手指構成パターンの変換検査
著者名 玉井 顯,寺川悦子,加藤千穂,小山善子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,21(2):232-238,2010
抄録 認知症の啓発活動が進むにしたがい,近年軽度の認知症患者の受診率が高まってきている.認知症の早期発見,早期治療と啓発しているなか,初診の段階で効率的に診察するためにも,より簡易な神経心理学的検査が求められている.本稿では,筆者らが外来で主に使用している3つの簡便な神経心理学的検査(リバーシブルテスト,手指模倣検査,左右手指構成パターンの変換検査)を紹介する.また,これらの検査は認知症を専門としない主治医にも手軽に利用でき,認知症専門医につなぐアルツハイマー病診断のヒントとなり得る,検査用紙のいらない簡便な検査として利用可能であると思われる.
キーワード 軽度認知症,アルツハイマー病,神経心理学的検査,手指模倣検査,リバーシブルテスト
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