論文名 | 認知症のための医療資源整備をどう進めるか;特集にあたって |
著者名 | 粟田主一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,21(11):1183-1188,2010 |
抄録 | 認知症高齢者の多様な臨床像に対応するための医療資源整備が強く求められている.認知症のための医療資源整備を進めるには,認知症の医療に求められる役割とそれに対応する医療資源の質・量の明確化が欠かせない.本特集では,認知症疾患医療センター,メモリークリニック,認知症専門病院(病棟),介護老人保健施設,かかりつけ医療機関,一般病院,救命救急センターに求められる役割と今後の方向性,および東京都とわが国の認知症対策について解説していただいた. |
キーワード | 認知症高齢者の将来推計,わが国の認知症対策,認知症疾患医療センター,メモリークリニック,かかりつけ医 |
論文名 | 認知症疾患医療センターの役割と今後の方向性;熊本モデルを中心に |
著者名 | 池田 学,小嶋誠志郎,冨岡大高 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,21(11):1189-1192,2010 |
抄録 | 筆者らが熊本県で展開している独自の認知症疾患医療センターの活動(通称:熊本モデル)を通して,認知症疾患医療センターの役割を紹介するとともに,認知症疾患医療センターの今後の方向性について論じた.専門医療スタッフの人材育成,地域連携,業務集中を回避するための役割分担が,今後の課題として考えられた.また,都市型認知症疾患医療センターの新たなモデルの必要性も指摘した. |
キーワード | 認知症疾患医療センター,熊本モデル,人材育成,専門医療相談,地域連携 |
論文名 | メモリークリニックの役割と今後の方向性 |
著者名 | 中嶋義文 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,21(11):1193-1196,2010 |
抄録 | メモリークリニック(もの忘れ外来)は1980年代より認知症の医療化の流れとともに広がった.従来機能としては,早期診断,BPSDへの対処や認知リハビリテーションなどを含む治療,ケア支援,臨床研究,教育研修がある.「希望を与える」ことは重要な機能であろう.多職種連携や複数科連携,地域連携の重要性について論じた.診療報酬上の評価や連携研究が将来の課題であろう. |
キーワード | メモリークリニック,もの忘れ外来,認知症の医療化,希望を与える,多職種連携 |
論文名 | 認知症医療における認知症専門病院(病棟)の役割と今後の方向性 |
著者名 | 斎藤正彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,21(11):1197-1201,2010 |
抄録 | 現状において,認知症専門病院(病棟)は,長期療養,BPSD対応,身体合併症医療の3分野において,介護家族のニーズに応えている.しかしながら,現行の人的資源配置で,BPSDへの緊急介入,身体合併症急性期,亜急性期の治療を行うことには限界がある.一方,精神科救急が認知症のBPSDに対応すること,総合病院が認知症の合併症医療を行うことにも限界がある.医療施設ごとの機能分化ではなく,1つの医療機関が患者のニーズに応じたさまざまな対応ができるようなシステムが求められている. |
キーワード | 認知症専門病棟,合併症,BPSD,機能分化 |
論文名 | 認知症医療における介護老人保健施設の役割と今後の方向性 |
著者名 | 天本 宏 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,21(11):1202-1206,2010 |
抄録 | 認知症を多く抱えている実態からして,介護老人保健施設への認知症医療の導入は早急に具現化すべきである.介護保険か,医療保険かといった二者択一の制度設計そのものを改革し,医療と介護との分断をなくし,それらを一体化したサービス形態に変容していくべきである.介護老人保健施設に求められる認知症医療のあるべき姿だけではなく,認知症医療全般に求められる新たな使命・役割にも言及する. |
キーワード | aging in place,I-ADL,見守り,生活支援,地域包括ケアシステム,care in community,外部サービス活用型介護老人保健施設 |
論文名 | 認知症医療におけるかかりつけ医療機関の役割と今後の方向性 |
著者名 | 弓倉 整 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,21(11):1207-1212,2010 |
抄録 | 全国的に認知症患者の増加が見込まれるなかで,かかりつけ医療機関に期待される役割とは,認知症に対する早期の気づきと介入,日常的健康管理,さらに専門医療機関や多職種との連携構築を行い,認知症患者と家族の生活の質の保持に努めることである.本稿では,東京都板橋区における板橋区医師会の活動の一端を紹介するとともに,東京都医師会が都の委託を受けて行っている認知症サポート医フォローアップ研修について概要を述べる. |
キーワード | かかりつけ医,もの忘れ相談,多職種連携,認知症サポート医,認知症サポート医フォローアップ研修 |
論文名 | 認知症医療における一般病院の役割と今後の方向性 |
著者名 | 本田 徹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,21(11):1213-1218,2010 |
抄録 | 都内の一般病院でも認知症患者が増加しているが,当院は山谷地域を診療圏として含むこともあり,生活困窮し,孤立したうえ,種々の身体疾患を有する認知症患者を救急診療の場で診る場面が増えている.本稿では,社会的資源としての医療・居住・看護・介護サービスなどを患者中心に活用した地域ケア連携の取組みと,そこでの病院の役割を論じる. |
キーワード | 地域ケア連携,認知症,生活困窮高齢者医療,一般病院,山谷地域 |
論文名 | 認知症医療における救命救急センターの役割と今後の方向性 |
著者名 | 中田一之,山口 充,熊井戸邦佳,堤 晴彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,21(11):1219-1224,2010 |
抄録 | 日本では,医療技術の進歩や皆保険制度・フリーアクセスといった制度により国民の多くが手厚い医療を受けることが可能である.一方,救命救急センターは突然発症した重篤な患者の治療を目的とするが,多忙かつ医療資源確保の問題から,近年救急医療は継続が困難な状況におかれている.このような社会的背景に加えて認知症患者の医療には周囲の援助が必要であり,したがって家族への精神的・経済的負担が大きく,これが新たな問題を引き起こしていることもまた事実である.以上より,救急患者が認知症を有する場合の救命救急センターがとるべき対応は,患者の病態のみならず患者背景にも留意することが必要であり,今後は適切な救急医療について慎重に検討することが重要と考えられる. |
キーワード | 救急医療,医療崩壊,終末期医療,後方病棟,心肺蘇生 |
論文名 | 東京都の認知症にかかわる医療資源と課題 |
著者名 | 繁田雅弘 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,21(11):1225-1229,2010 |
抄録 | 認知症医療にかかわる東京都の医療機関について,東京都福祉保健局高齢社会対策部在宅支援課が平成19年に行った調査結果を概観した.続いて,都の認知症対策について検討を行っている認知症対策推進会議,同医療支援部会,同認知症疾患医療センターのありかた検討部会(同在宅支援課)の議論を紹介した.喫緊の対応が必要な課題として,鑑別診断と初期対応の遅れが生じている患者が少なくないこと,認知症患者が身体合併症を有する場合や介護者への影響の大きいBPSDが生じている場合には,適切な治療が受けられる医療機関を探すことがしばしば困難であること,などの議論を紹介した. |
キーワード | 専門医療機関,実態調査,東京都認知症対策推進会議,BPSD,合併症 |
論文名 | わが国の認知症対策と医療資源整備 |
著者名 | 武田章敬 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,21(11):1230-1234,2010 |
抄録 | 増加しつつある認知症の人を支援するために,わが国の認知症対策は,@実態の把握,A研究開発の推進,B早期診断の推進と適切な医療の提供,C適切なケアの普及および本人・家族支援,D若年性認知症対策の推進,の5本柱に沿って進められている.さまざまな施策のなかには順調に進捗しているものとそうではないものがあり,当事者や家族,認知症支援の関係者,自治体等の意見や要望を踏まえより効果的なものにしていく必要がある. |
キーワード | 認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト,有病率調査,研究開発,医療,介護,若年性認知症 |