論文名 | 若年認知症の臨床的課題 |
著者名 | 斎藤正彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(8):829-834,2009 |
抄録 | 近年,若年発症の認知症およびその介護について,社会的な関心が高まり,厚生労働省,東京都などの行政機関が相次いで対策を打ち出している.最近行われた厚生労働科学研究によれば,若年認知症患者は全国におよそ37,800人と推定されている.高齢期に発症する認知症が女性に多いのに比較して,若年認知症では男性の有病率のほうが高い.事例を通じて,若年認知症患者や家族が抱える経済的問題,医療,福祉サービスの問題,家族の心理的負担の問題などについて概観した. |
キーワード | early onset dementia,Alzheimer's disease,frontotemporal lobar degeneration,care burden |
論文名 | 若年認知症患者と家族が抱える諸問題について |
著者名 | 松ア陽子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(8):835-838,2009 |
抄録 | 若年認知症は,患者が執筆した本が刊行されたり小説が映画化されるなど,病気としての認知度は上がっている反面,病気自体についての理解や,患者や家族がおかれている状況についての認識はいまだ薄い.ピック病の患者が万引きで懲戒免職になるなど職場での理解不足も明らかである.患者や家族にとっては必要な情報が得られず,経済的な困窮に対する支援もないというのが現状である.精神科と歯科,リハビリ科などとの連携の提案も含め,患者と家族のおかれた状況を報告する. |
キーワード | 若年認知症,医療連携,口腔ケア,摂食障害,嚥下リハビリテーション |
論文名 | 若年発症アルツハイマー病 |
著者名 | 朝田 隆 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(8):839-845,2009 |
抄録 | 65歳未満で発症する若年認知症(EOD)が注目されている.EODを扱った従来の大多数の報告では,その基礎疾患としてアルツハイマー病(AD)が最多であったと示されている.17〜53%と幅は大きいが,概して30%台とした報告が多い.わが国の専門外来からの報告についてもほぼ同様の結果が示されている.しかしわが国の2つの大規模な地域調査では血管性認知症が最多で,ADが第2位と示されている.このような早発性のADについてその臨床特徴や,画像所見,病理所見の特徴を紹介した.このような疾患の当事者と家族が抱える問題点として,(1)本人の医療とケア,(2)家庭生活の経済的基盤,(3)家族の心と子どもへの遺伝の懸念について説明した. |
キーワード | early onset dementia,Alzheimer's disease,epidemiology,clinical features |
論文名 | 前頭側頭葉変性症 |
著者名 | 勝屋朗子,橋本 衛,池田 学 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(8):846-854,2009 |
抄録 | 前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration ; FTLD)は,前頭葉と側頭葉前部に限局性萎縮を呈し,性格変化や行動障害を主徴とする変性性認知症である.その多くは初老期に発症し,著明な行動障害のため病初期より社会適応への著しい困難さを示し,家族に多大な心的,経済的負担をもたらす.FTLDの症候を正しく理解し,早期に妥当性のある診断を下し,FTLDの特徴を活かした就労支援などの適切なマネジメントを実践することが臨床医には求められる. |
キーワード | 前頭側頭葉変性症(FTLD),若年認知症,症候,鑑別診断,就労 |
論文名 | 若年認知症の治療とケア |
著者名 | 宮永和夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌, 20(8):855-864,2009 |
抄録 | 若年認知症治療の困難さについて,診断,薬物療法とBPSDの面から,ケアの困難さについては老年期と異なるBPSDの面から論じた.また,新しいケアの流れとして,若年認知症全体に応用可能な就労型ケアと,前頭側頭型認知症に対する環境療法の内容を紹介した.さらに,認知症の告知時期と終末期医療のあり方について,持論を述べた. |
キーワード | うつ状態,アパシー,FTDワークショップ,就労型ケア,ターミナルケア |
論文名 | 若年認知症患者を発症初期から進行期に至るまで継続的に支えるために;若年認知症専用デイサービスでの取組みから考える |
著者名 | 藤本直規,奥村典子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(8):865-873,2009 |
抄録 | 若年認知症患者を発症初期から進行期に至るまで継続的に支えるためには,診断後の病名告知と心理教育によって病気と向き合ってもらうことが必要である.その後の若年認知症ケアでは,症状の改善ないし機能維持を目的とした中核症状に対する認知リハビリテーション的なケアを行い,望んでいる自主活動の継続と社会での役割の確保を目指す.また,病気の進行期には,それぞれの疾患に特徴的な中核症状に対するケアを行う.そして,本人の声を聞きながら活動の到達目標を決めることと,それを実現するために病気のステージにあわせて中核症状に対するケアを行うという,“人”と“病気”の両方に配慮したケアは,年齢にかかわらず,すべての認知症患者に必要なケアのあり方である. |
キーワード | 若年認知症,病名告知,心理教育,デイサービス,認知リハビリテーション |
論文名 | 前頭側頭型認知症の施設ケア── 現状と課題 ── |
著者名 | 横田 修,藤沢嘉勝,藤川顕吾,佐々木健 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,20(8):874-881,2009 |
抄録 | 前頭側頭型認知症(FTD)はその著しい行動障害のため治療とケアが非常に困難な認知症である.筆者らはFTD患者を通常の認知症治療病棟,個別性の高い介入を行えるユニットケアを導入した認知症治療病棟,およびFTD専門グループホームで治療しているが,それぞれの施設の治療理念や治療システムの違いを反映して,治療のあり方は互いに異なる.本稿では3施設におけるケアのシステム,薬物介入,行動制限の内容を示してFTDの施設ケアの現状と問題点を述べ,FTD患者の尊厳を保つために有効な治療の理念と構造を指摘した. |
キーワード | 前頭側頭型認知症,施設ケア,薬物治療,治療環境,パーソン・センタード・ケア |