老年精神医学雑誌 Vol.20-7
論文名 味覚・嗅覚の老化
著者名 任 智美,阪上雅史
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,20(7):725-730,2009
抄録 高齢者は加齢による生理的な神経細胞の減少,全身疾患の合併による薬剤の副作用,中枢疾患や精神疾患による感覚障害など味覚・嗅覚が障害される原因は多い.しかしこれらの分野の見解は一致しないことも多く,未解明な部分も多い.今回,本稿では味覚・嗅覚の加齢性変化や認知症の報告を述べるとともに,当科味覚嗅覚外来を受診した高齢者の味覚・嗅覚障害の特徴を検討したので報告する.
キーワード 味覚障害,嗅覚障害,高齢者,認知症,加齢性変化
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論文名 生活習慣病と認知症
著者名 清原 裕
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,20(7):731-737,2009
抄録 福岡県久山町では,剖検を基盤にした精度の高い老年期認知症の疫学調査が20年以上にわたり進行中である.久山町高齢者の追跡調査では,高血圧は脳血管性認知症(VaD)発症の有意な危険因子であったが,アルツハイマー病(AD)発症とは関連がなかった.一方,耐糖能異常は両者の有意な危険因子となった.また,高コレステロール血症やメタボリックシンドロームがADと関連するとの報告があり,今後検討すべき課題として残されている.
キーワード アルツハイマー病,脳血管性認知症,高血圧,糖尿病,代謝性疾患
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論文名 栄養と認知症
著者名 朝田 隆
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,20(7):738-743,2009
抄録 アルツハイマー病(AD)発症に,酸化ストレス,ホモシステイン関連ビタミン,脂質,アルコールなどが関係するという基礎研究のエビデンスがある.またこのような栄養素や青魚などの食品の摂取,あるいは地中海式の食事様式が認知症発症に防御的に働くのではないかとした疫学研究もある.しかし,こうした研究結果は今のところ確立したものではない.サプリメントであるビタミンE,B6,B12,それに葉酸を用いたrandomized clinical trial(RCT)において,これまでのところ認知症予防効果は見いだされていない.その他のサプリメントについてはこのような試験もなされてない.こうしたところから,現時点では,ADの予防法としてある種の栄養素や食品・サプリメントを推奨できるわけではない.しかし今後は,地中海式ダイエットに代表される多様な食物摂取や栄養のバランスという観点が注目されるであろう.
キーワード 認知症,アルツハイマー病,食事,抗酸化,疫学研究
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論文名 認知症の食行動
著者名 品川俊一郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,20(7):744-749,2009
抄録 認知症の食行動の問題は他のBPSDと同様にさまざまな因子に影響されて出現する.変性認知症疾患のAD,FTD,DLBを比較しても各疾患によって食行動の問題のプロフィールは大きく異なる.患者に食行動の問題が認められた場合は,原因疾患や重症度,病態などの背景因子を正確に把握し,それに基づいた対処を行うことが重要である.
キーワード 認知症,食行動,BPSD,アルツハイマー病,前頭側頭型認知症,レビー小体型認知症
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論文名 嚥下障害と認知症
著者名 横山通夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌, 20(7):750-755,2009
抄録 わが国では,高齢化が急速に進んでいる.今後さらに高齢者数と高齢化率は増加し,これに伴  い,障害をもつ高齢者も増加の一途をたどっている. 人口の高齢化に伴いわが国の認知症患者数は著しい増加をしているものと推定される. 認知症高齢者は加齢をはじめとする種々の要因により摂食・嚥下障害を呈しやすい. 本稿で認知症患者における摂食・嚥下障害の評価,対応法について述べる.
キーワード 認知症,摂食・嚥下障害,アルツハイマー病,血管性認知症,レビー小体型認知症
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論文名 認知症と胃瘻
著者名 横田 修,檜垣文代,大石正博
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,20(7):756-764,2009
抄録 現在,認知症終末期の嚥下障害に対し胃瘻による経管栄養が広く行われている.一方,栄養状態,褥瘡,誤嚥性肺炎,生命予後に対する胃瘻の効果は十分に証明されているわけではないため,胃瘻の普及した現状を問題視する意見がある.認知症高齢者の胃瘻の問題は,優れて人間学的な要素を含む全人的な医学の問題である.それゆえその妥当性は,予後に関する自然科学的データの蓄積と並行して,認知症高齢者の尊厳とケアのあり方に関する議論と実践のなかで考えていく必要がある.
キーワード 1年生存率,高齢者,終末期医療,認知症,胃瘻
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論文名 認知症の食行動の混乱への対応
著者名 得居みのり,原 昭
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,20(7):765-770,2009
抄録 認知症患者に安全で楽しい食事を提供することは,その人の身体的機能のみならずQOLの向上にも寄与し,「その人らしく」生活することを支える. 認知症患者の食行動の障害について,認知症疾患の代表的な症状別に分類し,そのケアのあり方を示した. 認知症患者への食事支援では,症状の観察と予測に基づいたケアの工夫が求められる.
キーワード 認知症,食行動,食事支援,症状の観察・予測
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