論文名 | 高次脳機能の障害とは |
著者名 | 萩原万里子,北村 伸 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(8):837-840,2008 |
抄録 | “高次脳機能”について欧米では“認知機能”や“神経心理学的機能”という言葉を用いており,その症状は多岐にわたり,記憶障害,注意障害,実行機能障害,社会的行動障害などの認知障害等で脳の損傷部位によって特徴がでる.“高次脳機能障害”は,科学的学術用語と行政用語と二面性があり理解に混乱をきたすことが少なくない.この特集でわれわれが扱うのは科学的な学術用語としての高次脳機能障害で,大脳の器質的病因に伴い,失語・失行・失認に代表される比較的局在の明確な大脳の巣症状,注意障害や記憶障害などの欠落症状,判断・実行・問題解決能力の障害などのことである. |
キーワード | 高次脳機能障害,科学的学術用語,行政用語,神経内科疾患,認知症 |
論文名 | パーキンソン病 |
著者名 | 藤本健一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(8):841-8847,2008 |
抄録 | ドパミン補充療法や脳深部刺激治療によって,パーキンソン病の運動症状はかなり改善された.その一方で,ドパミン受容体の過剰な刺激や神経回路網の不自然な調整に基づく高次脳機能障害が問題となっている.若年者では衝動制御障害,反復常同行動,ドパミン調整異常症候群などの行動異常や突発的睡眠が,高齢者では幻覚・妄想や認知症が問題になる.レビー小体が広範に出現するレビー小体型認知症への移行も問題である. |
キーワード | 衝動制御障害,反復常同行動,ドパミン調整異常症候群,突発的睡眠,レビー小体型認知症 |
論文名 | 多系統萎縮症 |
著者名 | 和田健二,北山通朗,周藤 豊,中島健二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(8):848-855,2008 |
抄録 | 多系統萎縮症(MSA)は小脳失調,錐体外路症状,自律神経障害や錐体路症状をきたす神経変性疾患である.MSAの診断基準においては認知症は除外項目に含まれており,発症早期に認知機能障害を呈する症例は少ない.しかし,神経心理検査においてMSAにおける前頭葉機能低下を示唆する報告が蓄積されており,MSAにおける認知機能障害は注目されている.本稿においては認知症を伴ったMSAの自験症例とともにMSAにおける認知機能障害について概説した. |
キーワード | 多系統萎縮症,認知症,実行機能障害,白質病変,MIBG心筋シンチグラフィー |
論文名 | 脊髄小脳変性症(MSAを除く) |
著者名 | 矢部一郎,佐々木秀直 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(8):856-862,2008 |
抄録 | 1.遺伝性脊髄小脳変性症の高次脳機能障害につき記載した. 2.どの病型においても高次脳機能障害を呈しうる. 3.DRPLAとSCA17は高率に認知症を伴う. 4.遺伝性脊髄小脳変性症においては,高次脳機能障害のうち,言語記憶障害や行為遂行障害を呈する頻度が高い. 5.遺伝性脊髄小脳変性症においては,高次脳機能障害の存在を念頭におきながら診療を行うことが望ましい. |
キーワード | 脊髄小脳変性症,認知症,言語記憶障害,行為遂行障害,cerebellar cognitive affective syndrome |
論文名 | 進行性核上性麻痺 |
著者名 | 冨安 斉,平林輝良寛,吉井文均 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(8):863-870,2008 |
抄録 | 進行性核上性麻痺の認知障害は皮質下性認知症と呼ばれる.大脳基底核の病変で,線条体-前頭葉の連絡経路の機能障害により前頭葉機能障害が出現する.一方1990年代後半からtufted astrocyteなどグリアの変性が注目され,大脳皮質,白質の病変の関与も考えられるようになった.PSPの認知障害はまだ十分整理ができておらず,今後も臨床病理学的な検討を進めることが必要である. |
キーワード | 進行性核上性麻痺,タウオパチー,核上性注視麻痺,皮質下性認知症,前頭葉症状 |
論文名 | 筋萎縮性側索硬化症 |
著者名 | 田中 真,池田祥恵,相原優子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(8):871-876,2008 |
抄録 | 認知症を伴うALS(D-ALS)の存在はわが国の多くの症例報告から明らかになり,知的機能が正常にみえるALS(N-ALS)においても行動・言語・認知の面で高率に変化がみられる.軽重の差はあれ前頭側頭型認知症(FTD)の特徴を示し,N-ALSとD-ALSの間で病態の連続性が推定される.画像上もALSの特徴を差し引くとFTDの特徴に一致する.N-ALSとD-ALSはタウ陰性ユビキチン陽性封入体やTDP-43の生成を共通病態とした連続体の可能性がある. |
キーワード | 筋萎縮性側索硬化症,前頭側頭型認知症,タウ陰性ユビキチン陽性封入体,TDP-43,認知機能 |
論文名 | 筋強直性ジストロフィー |
著者名 | 石渡明子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(8):877-883,2008 |
抄録 | ・筋強直性ジストロフィーは骨格筋病変だけでなく全身性疾患であり,高率に中枢神経障害を伴う. ・高次脳機能障害では,構成能力,視空間認知障害の障害や,前頭葉障害である意欲の低下,遂行能力の低下がある.また病識の欠如や無関心,注意力低下,自発性の低下などの精神症状も認められる. ・形態画像では脳室拡大,白質病変,萎縮が認められ,機能画像では前頭葉,前頭側頭連合野の代謝や血流の低下が報告されている. |
キーワード | 筋強直性ジストロフィー,高次脳機能障害,知的機能低下,精神症状,画像 |
論文名 | 多発性硬化症 |
著者名 | 萩原綱一,吉良潤一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(8):884-889,2008 |
抄録 | ・多発性硬化症患者はまれならず認知機能障害を呈し,思考過程の緩慢化,注意力の低下,作業記憶やエピソード記憶の障害が主な特徴である. ・認知機能障害の特徴をよく理解して神経心理検査を行う必要がある. ・画像的には脱髄病変の総容積よりも大脳萎縮や脳室拡大の程度との相関が強い. ・認知機能障害の発症は必ずしも総合障害度(EDSS)・罹病期間・病型などから予測できない. ・認知機能障害の有無は治療経過のフォローや日常生活に関する指導に際し非常に重要な情報である. |
キーワード | 多発性硬化症,認知機能障害,神経心理検査,画像検査 |