論文名 | 遅発性統合失調症と老年期の幻覚妄想状態 |
著者名 | 古茶大樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(5):509-514,2008 |
抄録 | M. Bleulerの遅発統合失調症,Rothの遅発パラフレニー,米国の遅発性統合失調症,遅発緊張病といった遅発性統合失調症を理解するうえで重要な概念を紹介した.その他の老年期の幻覚妄想状態の鑑別診断として,Kraepelinのメランコリー,皮膚寄生虫妄想,口腔内セネストパチー,シャルル・ボネ症候群,音楽幻聴がある. |
キーワード | late onset schizophrenia,late paraphrenia,late catatonia,Melancholie |
論文名 | 高齢者の気分障害 |
著者名 | 門司 晃,神庭重信 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(5):515-519,2008 |
抄録 | 高齢者はもともと加齢による脳器質的変化を多少なりとも有するうえに,孤立的環境から生じる心理社会的ストレスにさらされることが多く,気分障害発症の高いリスク状態に常におかれている.老年期うつ病では抑うつ気分が軽度である一方で意欲低下や精神運動抑制が前景となることがその特徴である.また,うつ病が認知症とくにアルツハイマー型認知症のリスクファクターとの報告が最近増加しており,神経生物学的にも共通する基盤も近年指摘されている.したがって,適切なうつ病への治療介入が認知症への予防となりうる可能性が示唆されている. |
キーワード | 老年期うつ病,認知症,BDNF,視床下部−下垂体−副腎皮質(hypothalamic-pituitary-aderenal ; HPA)系,炎症性サイトカイン |
論文名 | 高齢者の不安障害 |
著者名 | 堀口 淳 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(5):520-525,2008 |
抄録 | 人口の高齢化は高齢者の心理社会的な不安を増幅させ,精神・身体疾患の発現や重篤化を促進している可能性がある.本稿では高齢者の不安障害を取り上げ,留意すべき以下の内容について論じた.1.老年期の不安障害のなかでは全般性不安障害と恐怖症の頻度が高く,パニック障害の頻度が低いとする報告が多い.2.併発することの多い精神障害の第一はうつ病性障害である.3.全般性不安障害の症状は,非特異的かつ了解可能な症状であるため,とくに身体疾患の患者では見逃してはならない.4.各種のSSRIやSNRIなどの抗うつ薬の有効性が確認されているが,ベンゾジアゼピン系の抗不安薬の投与が抑うつ症状をマスクしてしまう場合があるので注意する.5.治療は支持的・受容的なサイコセラピーを基盤とし,不安や感情の言語化を促進する. |
キーワード | anxiety disorder,elderly,treatment,epidemiology,clinical symptoms |
論文名 | 高齢者のパーソナリティ障害 |
著者名 | 古川はるこ,加田博秀,笠原洋勇 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(5):526-533,2008 |
抄録 | 高齢者のパーソナリティ障害に関する研究は少ないが,臨床場面においてパーソナリティの概念は欠かせない.本稿ではパーソナリティの定義を,DSM-WやICD-10の診断基準で定義されるような狭義のパーソナリティ障害と,老化や器質性障害によって生じる広義のパーソナリティ障害に分類して論じた.高齢者のパーソナリティ障害はさまざまな要素にマスクされて,その本態がみえにくいが,器質的/生理的/心理社会的要因を精査して治療方針を決定する必要がある. |
キーワード | 高齢者,パーソナリティ障害,加齢,器質性パーソナリティ障害,認知症 |
論文名 | 高齢者のアルコール乱用・依存 |
著者名 | 中山寿一,松下幸生,樋口 進 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(5):534-539,2008 |
抄録 | わが国はかつてない高齢社会を迎え,アルコール乱用・依存のなかで高齢者の占める割合も増加している.本稿では,高齢化とアルコール乱用・依存についてまとめている.今後ますます高齢社会が進むなか,高齢者のアルコール乱用・依存者は増加していくであろう.高い治療反応性や治療後のQOLの向上等を考慮すると,諦めないで高齢症例を積極的に治療に導入していくことが重要である. |
キーワード | alcohol abuse,alcohol dependence,diagnosis,treatment,prevention |
論文名 | 高齢者の睡眠障害 |
著者名 | 清水徹男 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(5):540-548,2008 |
抄録 | 高齢者,とりわけ女性ではその半数以上に睡眠障害が認められる.最も多い睡眠障害である不眠はとくにうつ病との関連が重要である.また,高齢男性の半数近くにみられる睡眠時無呼吸症候群が生命予後や心身の健康にどのような影響を及ぼすものかという点も興味深い.最後に,レビー小体病との関連で注目を集めているREM睡眠行動障害についても解説する. |
キーワード | 原発性不眠,うつ病,睡眠時無呼吸症候群,REM睡眠行動障害,レビー小体病 |
論文名 | 高齢者の自殺 |
著者名 | 忽滑谷和孝 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(5):549-555,2008 |
抄録 | 日本の自殺は毎年3万人を超え,とくに諸外国と比較しても高齢者の自殺が際立っている.その特徴としては,加齢に伴う社会的背景が変わり,高齢者は苦しまず,周囲に迷惑をかけたくないと死に対しての構えが違い,心中という特殊な形態での自殺もある.高い既遂率,精神科受診へのスティグマの存在,うつ病や認知症などの精神障害や身体合併症との関連などが挙げられる.自殺対策は,事前対応としてセーフティーネットの充実,サクセルフルエイジングを目指し,生きがいづくりを推し進めていくことである.ポストベンションとして,サバイバーへの配慮が重要である.自殺対策基本法による改革による今後の成果を期待するところである. |
キーワード | 自殺(suicide),高齢者(elderly),幸福な老い(successful aging),セーフティーネット(safety net),生きがい(purpose in life) |
論文名 | 高齢者の薬物療法 |
著者名 | 田中徹平・黒木俊秀 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(5):556-561,2008 |
抄録 | 高齢者は加齢に伴い種々の生理機能が変化しており,薬物動態の変化や薬物に対する反応性が若年者と異なっている.またさまざまな身体合併症を抱えており,身体疾患に対して用いられている薬物との相互作用といった問題がある.ここでは加齢に伴う生理機能の変化や薬物相互作用の問題を述べ,さらに高齢者に対して主に用いられている向精神薬の概要と問題点についても解説した. |
キーワード | elderly,pharmacotherapy,pharmacokinetics,psychotropic drug,risk-benefits |
論文名 | 高齢者の精神療法;他の心理社会療法を含む |
著者名 | 藤澤大介 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(5):562-567,2008 |
抄録 | 高齢者に対する精神療法は,とくにうつ病に対して薬物療法に匹敵する有効性が実証されている.有効性が高い治療に共通する特徴は,さまざまな社会資源を利用して,多面的に働きかけを行い,多職種間の協力と調整を行うなど,共同的な形態をとっていることである.個別の対応においては,高齢者の特性を踏まえ,身体障害への適切で柔軟な対応,現在の問題を生育史との文脈からとらえるようにすること,死の話題を避けないこと,生活環境の調整も含め,保護的・能動的な役割をとること,などの配慮が重要である. |
キーワード | うつ病(depression),うつ病のケアマネジメント(depression care management),認知行動療法(cognitive behavioral therapy),対人関係療法(interpersonal psychother-^napy),問題解決療法(problem solving therapy) |