老年精神医学雑誌 Vol.19-4
論文名 高齢者うつ病の臨床
著者名 笠原洋勇
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(4):395-402,2008
抄録 Epidemiological Catchment Area(ECA)により,うつ病は年長者でも罹患することが再確認された.65歳以上で,大うつ病の診断基準を満たすものは,男性0.4%,女性1.4%であった.また,うつ病の初診の割合をみると施設により異なるが,高齢者は17〜30%を占めていた.また,大うつ病が入院する患者の11%にみられ,入院が長期化したものは12%にみられた.うつ病症状は,認知障害の50%にみられ,認知症に大うつ病が合併する頻度は17〜30%であった.精神病性うつ病は,入院した高齢者うつ病の20〜45%であり,地域に住む高齢者うつ病の3.6%にみられる.高齢者うつ病の再発は21%であり,他の世代に匹敵している.
キーワード 高齢者,大うつ病,精神病性うつ病,身体合併症,疫学
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論文名 身体疾患に伴ううつ病
著者名 矢ア健彦,天野直二
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(4):403-408,2008
抄録 うつ病は,さまざまな身体疾患に伴って高い頻度で出現する.こうしたうつ病は,患者の予後とQOLに重大な影響を及ぼすため,適切な治療開始時期と,薬物の選定によって,重症化,遷延化を防止する必要がある.身体面と精神面を並行して治療を行うため,精神科医と各部門との密な連携により,リエゾン・コンサルテーション精神医療のいっそうの充実が図られることが望ましい.
キーワード depression accompanied by somatic deseases,vascular depression,drug-induced depression,SSRI
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論文名 うつ病がリスクファクターとなる身体疾患;No Health without Mental Health
著者名 西田 朗,長濱道治,河野公範,家田麻紗,堀口 淳
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(4):409-413,2008
抄録 精神疾患であるうつ病が種々の身体疾患のリスクファクターとなることが,大規模疫学研究による明確なエビデンスレベルのある報告が多数なされ,明らかになってきている.そのなかではとくに,心筋梗塞や脳卒中のような急性致死性疾患や,糖尿病のような慢性生活習慣病のリスクファクターとしてうつ病が注目されていることから,高齢者の代表的なこの3身体疾患へのリスクファクターとしてのうつ病について論じる.
キーワード うつ病,リスクファクター,心筋梗塞,脳卒中,糖尿病
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論文名 認知症とうつ病
著者名 楯林義孝
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(4):414-419,2008
抄録 老年期うつ病による認知障害は認知症と鑑別困難であることが多い.2006年に認知症の蓄積異常タンパク質がほぼすべて同定されたことから,それらの蓄積形態から認知症病態を再検討する動きがでている.とくにTDP-43はアルツハイマー病やレビー小体型認知症にも蓄積しており,うつ症状などの発症にも関与している可能性がある.本レビューではそのような状況を鑑み,前頭側頭型認知症,レビー小体型認知症,パーキンソン病,アルツハイマー病などの前駆・初期症状におけるうつ症状の特徴について比較し総説した.今後はそれら異常タンパク質の蓄積形態の詳細な解明が,認知症におけるうつ病などの周辺症状の発症機序の解明につながることが期待される.
キーワード 老年期うつ病,アルツハイマー病,前頭側頭型認知症,レビー小体型認知症,TDP-43
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論文名 高齢者のうつ病とアパシー
著者名 城野 匡,池田 学
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(4):420-427,2008
抄録 高齢者のうつ病の診療においては,壮年期のうつ病と異なり,活動性の低下,思考・行動の制止とともに,注意・集中力の低下により記憶障害などの認知機能障害が出現すると,認知症との鑑別の検討が必要となることがある.一方アルツハイマー病(AD)などの認知症・器質性精神障害は,「アパシー」としての活動性の低下がみられることが多く,うつ病との鑑別が必要なことがある.うつ病でみられる「抑うつ」に伴う活動性の低下と「アパシー」でみられる活動性の低下を,両者ともうつ病の一部としてとらえられている場合もあるが,近年,「抑うつ」と「アパシー」の病態生理の違いが存在することが提唱されており,とくにADにおける症状面の違い,神経生物学的な違いなどについての検討がなされている.高齢者のうつ病の診療においては,「抑うつ」と「アパシー」について注意して鑑別・評価を行い,薬物療法をはじめとした理論的な治療計画の検討が必要であろう.
キーワード アパシー,抑うつ,アルツハイマー病
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論文名 高齢者のうつ病に関する文化的背景
著者名 陳 峻文,古川壽亮
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(4):428-436,2008
抄録 本稿は,高齢者うつ病の有病率,および文化背景に基づいたうつ病の理解や表現を中心に,最近の研究結果を紹介した.まず,欧米諸国および,主要なアジア諸国における高齢者うつ病の有病率を概観した結果,一般人口においては0.9〜9.4%であることが明らかになった.次に,人種・文化・民族によってうつ病の表現や概念の違いを示し,文化背景の理解を踏まえたうえでサービスを提供することの重要性を論じた.
キーワード 高齢者,うつ病,文化,有病率
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論文名 高齢者のうつ病とECT
著者名 安田和幸,本橋伸高
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(4):437-442,2008
抄録 ・老年期うつ病に対する電気けいれん療法(ECT)に関して,エビデンスレベルの高い研究を中心に過去の文献を検索し,有効性,安全性,刺激条件についての知識をまとめた.
・老年期うつ病おいて,ECTは短期的,長期的に優れた有効性をもつ.
・ECTは認知・記憶機能,循環動態に影響を与える.標準的な両側性ECTに比べて片側性ECTでは認知機能障害は少なく,むしろうつ症状の改善に伴って認知機能は改善する.
キーワード 電気けいれん療法(ECT),老年期うつ病,有効性,安全性,刺激条件
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論文名 薬物療法と精神療法の統合
著者名 忽滑谷和孝
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(4):443-448,2008
抄録 うつ病の治療は薬物療法が主流となっているが,高齢者のうつ病では,身体的,社会的影響により遷延化するために,薬物療法単独では治療に限界があり,精神療法との併用が有効である.高齢者のうつ病の特徴を理解したうえで,病状に合わせ臨機応変に使い分けることが,より有効な治療結果をもたらす.治療技法にとらわれすぎず,精神療法を通してよい患者-治療者関係を築くことが,薬物療法の効果を引き立たせているのかもしれない.
キーワード combination therapy,pharmachotherapy,psychotherapy,elderly,depression
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