論文名 | わが国における高齢者自殺とその予防;現状と課題 |
著者名 | 大山博史・坂下智恵 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(2):153-161,2008 |
抄録 | 高齢者自殺の特徴についてわが国の知見を中心に概観し,また,わが国の自殺予防の経緯を概説した.高齢者自殺の危険因子のうち,予防的観点からうつ病,社会的孤立および喪失体験等のライフイベントが重視されている.高齢者自殺の減少に成功した知見は数少なく,大半はわが国における地域介入に限られている.これらの地域介入では,うつ病スクリーニングや集団援助が実施されており,また,自殺率低減の程度に性差が認められた.地域介入による自殺予防効果の発現機序について考察し,若干の課題に言及した. |
キーワード | 高齢者自殺,自殺対策,地域介入,うつ病,スクリーニング |
論文名 | 高齢者の自殺の精神医学的側面 |
著者名 | 高橋祥友 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(2):162-168,2008 |
抄録 | 自殺した高齢者の大多数は最期の行動に及ぶ前にうつ病に罹患していたことを数々の調査が一致して指摘している.それまでは比較的適応のよかった人が老年期に至り,うつ病の最初のエピソードで,自殺に及んでいる例が多い.高齢のうつ病患者は非定型的な病像を呈することもまれではないのだが,早期の段階で診断し,適切な治療に導入することによって自殺予防の余地は十分に残されている. |
キーワード | 高齢者,自殺,精神障害,心理学的剖検,事故傾性 |
論文名 | 高齢者自殺の社会学的側面;心理社会的介入はなぜ有効なのか |
著者名 | 青木慎一郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(2):169-175,2008 |
抄録 | 社会学的側面は,心理レベルの原因としての「社会的要因」ではなく,社会レベルを独自の次元として扱ってこそ意義がある.心理レベルをあえて個人の心理内面の状態と限定したうえで,心理レベルと社会レベルとの因果関係ではなく,その相関関係を対象とすることが,高齢者自殺の社会学的側面といえる.理論が先行しがちな,この観点の実践的手法として社会構成主義の社会観に基づく「ナラティブ」を提案した.この手法によって心理社会的介入の有効性の説明が可能となる. |
キーワード | 心理社会的介入,生物・心理・社会アプローチ,問題の外在化,社会構成主義,コミュニティ・ナラティブ,ロールプレイ,デュルケーム,ウェーバー |
論文名 | 高齢者自殺の文化的側面 |
著者名 | 本橋 豊・金子善博 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(2):176-183,2008 |
抄録 | 高齢者自殺の特徴は,うつ病と関係した自殺が多いこと,身体的症状が中心となるうつ病との関連が示唆されることなどが挙げられる.社会学的には,核家族化等の家族関係の変化に伴い心理的孤独を抱える高齢者が増えていること,高齢化に伴う要介護者の増加により介護や病気の悩みを抱える高齢者が増えていることなどに留意する必要がある.また,高齢者ではメンタルヘルスリテラシーが若い世代と比べて低いこと,自殺に許容的な態度をとりやすいことなどを念頭において自殺対策を進めることが重要である. |
キーワード | 高齢者,自殺,うつ,メンタルヘルスリテラシー,ソーシャル・キャピタル |
論文名 | 高齢者のうつと自殺への介入;予防介入,危機介入,事後介入 |
著者名 | 大塚耕太郎,酒井明夫,智田文徳,星 克仁,岩戸清香,遠藤 仁,神先 真,工藤 薫,川村祥代,中村 光,高橋千鶴子,赤坂 博 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(2):183-197,2008 |
抄録 | 高齢者の自殺の背景には,加齢に伴った身体的不調や身体疾患罹患,死別や離職などさまざまな喪失体験,個人的な悩みなどに加えて,家族と同居しているが相談できない,サポート者が少ない,孤独な生活などの状況がある.高齢者の自殺予防には啓発活動やスクリーニング事業など医療モデルのみならず,危機介入,ソーシャルサポートなどの援助体制が必要であり,包括的な自殺対策という視点からは,自死遺族支援なども重要である. |
キーワード | elderly,suicide,suicide prevention,emergency psychiatry |
論文名 | 地域における高齢者自殺予防活動;青森県の実践から |
著者名 | 渡邉直樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(2):198-204,2008 |
抄録 | はじめに地域で自殺予防活動を行うにあたって,まず障壁になるのが「自殺」という言葉に対する抵抗感であり,これは行政側にも住民の側にも認められる.この障壁を乗り越えるためにはすでに平成9年から行っていた秋田県旧由利町(現由利本荘市)の実績がエビデンスとして役立ったのである.そして青森県で始められた市町村においてもおおむね自殺者の減少が認められたことにより,地域の保健師らの「意欲」を醸成することができた.こうして青森県内では現在40市町村のうち22市町村で自殺予防活動が行われている.キーワードは「気持ちを伝え合うことにより,地域の力を育てていく」ことである. |
キーワード | エビデンス,地域の力,気持ちを伝え合う,紙芝居や演劇,交流会 |
論文名 | 地域における高齢者自殺予防活動;三重県の実践から |
著者名 | 谷井久志,井上 顕,岡田元宏 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(2):205-210,2008 |
抄録 | 三重県における高齢者の自殺背景を詳細に調査し,高齢者における自殺予防を検討する目的で,1989〜2002年の14年間に三重県内で発生したすべての自殺例について,三重県警察本部の協力を得て,年齢,性別,自殺手段,背景,身体・精神疾患などを調査した.とくに65歳以上の高齢者を詳細に検討した結果,14年間の自殺者数の合計は5,048人,男性3,276人,女性1,772人であった.その期間で,65歳以上の高齢者における自殺者数の合計は1,513人,男性691人,女性822人であった.高齢者の自殺率は,全年齢層の約30%を占め,とくに,女性高齢者の自殺率は,全年齢層の46.4%であった.また,女性高齢者の主たる自殺背景は「身体疾患による病苦」と「精神科疾患」であった.「身体疾患による病苦」では悪性腫瘍以外の身体疾患が多く,そのなかでも循環器疾患と整形外科的疾患が高い割合を占め,長期間の療養における精神的な疲弊も含まれている可能性が示唆された.以上の結果より,高齢層の自殺予防として訪問看護とヘルスケアのさらなる充実,精神医学的ケアシステムの改善が大切であると考えられる. |
キーワード | 身体的病苦,循環器疾患,整形外科的疾患,縊死,自殺予防 |
論文名 | 地域における高齢者自殺予防活動;仙台市を中心に |
著者名 | 粟田主一,佐藤泰啓,藤原砂織,高橋ふみ |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(2):211-217,2008 |
抄録 | 人口約100万人の政令指定都市である仙台市では,大規模住宅地域で実施された疫学的調査介入研究の結果に基づいて,高齢者のうつ対策事業「仙台市抑うつ高齢者等地域ケア事業」を施策化し,事業範囲を段階的に拡大してきた.1990年以降の性別年齢階級別自殺死亡率の推移をみると,事業開始期に当たる2002〜2005年に,とくに女性において,70歳以上高齢者の自殺死亡率の顕著な低下が認められている. |
キーワード | 政令指定都市,高齢者のうつ対策,普及啓発,アセスメント,相談・訪問,ケースマネジメント |
論文名 | 地域における高齢者自殺予防活動;横浜市における現状と課題を中心に |
著者名 | 古野 拓,山田朋樹,河西千秋 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(2):218-223,2008 |
抄録 | 横浜市の自殺の現状や高齢化との関連,自殺予防活動の取組みを概観するとともに,筆者らの高度救命救急センターにおける調査研究に基づき,今後の高齢者の自殺予防策のあり方について考察した.その調査結果からは,高齢者の自殺予防には,まず,精神科的治療につなげるための積極的な介入が不可欠であり,受療につなげた後も,継続的なソーシャルサポートが必要となる可能性が示唆された. |
キーワード | 高齢者,自殺予防,都市部,横浜市 |