論文名 | 高齢者虐待とは |
著者名 | 深津 亮 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(12):1295-1300,2008 |
抄録 | わが国は超高齢社会を迎えたが,エイジズム(高齢者差別)と高齢者虐待は社会に陰惨な影を落としている.2005年に「高齢者の虐待防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(高齢者虐待防止法)が成立・施行されて3年近くが経過した.本法によって高齢者虐待防止の実態にいかなる影響がもたらされたのかについて,現時点において概観した.今後は高齢者虐待の心理機制や原因について解明することが重要と考えられた. |
キーワード | 高齢者虐待防止法,身体的虐待,心理的虐待,介護放棄,家庭内虐待,施設内虐待 |
論文名 | 高齢者虐待防止法の概要 |
著者名 | 滝沢 香 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(12):1301-1306,2008 |
抄録 | 高齢者虐待防止法は,養護者による虐待と養介護施設従事者等による虐待における市町村等の対応を規定している.市町村が,虐待の通報・届出受理から事実確認,その後の対応にかかわる体制を整備するとともに,すでにある老人福祉法や介護保険法上の権限や,新たに設けられた立入調査などの権限を適切に行使して対応することが必要である.虐待の事実の確認や高齢者の判断能力についての診断などにおける,医療関係者の役割も重要である. |
キーワード | 高齢者虐待防止法,成年後見,市町村長申立,老人福祉法,立入調査 |
論文名 | 高齢者虐待の実態調査から読み取れること |
著者名 | 山田祐子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(12):1307-1316,2008 |
抄録 | 「高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」が2006年4月より施行となり,それに伴い2007年度において「高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」を厚生労働省が実施,2006年度全国の1,829市町村で相談・通報として受け付けた高齢者虐待についての対応状況等を発表した.本稿では,2008年10月に発表の同名の調査結果について,「そこから読み取れること」について考察することを目的とする.その結果,全国の市町村における高齢者虐待の状況が初めて把握され,新しい貴重な知見が得られ,法制度の課題も示唆された. |
キーワード | 高齢者虐待,権利擁護,高齢者虐待防止法,養護者,施設内虐待 |
論文名 | 家庭内における高齢者虐待の実態と対応 |
著者名 | 津村智惠子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(12):1317-1324,2008 |
抄録 | わが国の高齢者虐待の特徴は,虐待の多くは訪問を業とする看護職,介護職,福祉職や民生委員活動で発見されている.また,被害を受けた高齢者の約8割に認知症の症状がみられ,介護時間が常時介護を必要とする高齢者では虐待発生率は半数以上を占めている.虐待を受けている高齢者に比べて,加害者である虐待者に「虐待をしている」という自覚がないことが,虐待の発見を遅らせている.さらに,主な虐待者の続柄の1位は,介護保険開始後の全国調査では息子であり,失業やフリーター化による経済困窮からのパラサイト型虐待の増加も予測される.高齢者虐待の早期発見・予防に住民ボランテイアの見守り活動に頼むところが大きい.住民組織による見守り活動の限界を踏まえ,地域包括を中心とする専門職による見守り組織が引き継ぐことができる人員体制づくりが必要である. |
キーワード | 在宅高齢者,虐待の特徴,被害高齢者,加害家族,見守り組織 |
論文名 | 施設内における高齢者虐待の実態と対応 |
著者名 | 柴尾慶次 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(12):1325-1332,2008 |
抄録 | 施設内における高齢者虐待は,「不適切ケア」「不十分なケア」「不適切サービス」の連続線上に発生している.発生要因では,施設特性,認知症ケア,構造的問題が指摘できる.虐待防止に特効薬はない.地道な日常の不適切ケアの見直し,とくにBPSDへの対応と,それを意識化する委員会活動,発生予防から,対応・介入,回復支援を組織課題として取り組むことが求められている. |
キーワード | 不適切ケア,不十分ケア,不適切サービス,構造的問題,組織課題 |
論文名 | 高齢者虐待防止に対する発見・介入・予防;地域包括支援センターの活動を中心に |
著者名 | 小宮山恵美,永野賢一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(12):1333-1341,2008 |
抄録 | 平成18年4月より,介護保険制度改正に伴い地域包括支援センターが設置された.東京都北区での地域包括支援センターとしての実践活動を踏まえて,その特徴について考察を加えて報告した.発見については,高齢者自立支援ネットワーク(通称 おたがいさまネットワーク)の充実,介入については,高齢者虐待対応マニュアルを基礎に地域ケア会議を中心としたチームケアの実践,予防については,臨床心理士により開催されている「心の相談室」,介護者への介護負担軽減が役割を演じていると考えられた. |
キーワード | 地域包括,介護者支援,地域ケア会議,顔の見えるネットワーク |
論文名 | 高齢者虐待と医療の果たすべき役割 |
著者名 | 粟田主一,佐野ゆり,高松幸生,野呂雅人,山下元康,福島 攝,大橋雅啓 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,19(12):1342-1347,2008 |
抄録 | 当センターで緊急対応を行った虐待事例を紹介し,認知症をもつ人の虐待事例において医療が果たすべき役割を論じた.被虐待者に対しては,虐待による身体的・精神的健康障害の包括的評価と治療,未診断の認知症疾患の鑑別診断と治療,高齢者総合的機能評価と処遇方針に関する助言,虐待者に対しては,介護負担・経済的困窮・社会的孤立などによる心身の負荷への配慮,すでに罹患している精神障害への対応が必要となる. |
キーワード | 認知症,虐待,高齢者虐待防止法,認知症疾患医療センター,救命救急センター |