老年精神医学雑誌 Vol.19-11
論文名 パーキンソン症候群の分類と原因疾患
著者名 久野貞子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(11):1167-1170,2008
抄録 パーキンソン症候群は大脳基底核やその関連する部位の障害によって生ずることが知られており,原因疾患が特定されているものは二次性パーキンソン症候群,そうでないものは一次性パーキンソン症候群(パーキンソン病)と呼ばれている.パーキンソン病は安静時振戦,動作緩慢,前屈小刻み歩行,姿勢保持障害が特徴であり,数か月から数年の単位で緩徐に進行するが治療法の格段の進歩によりADL/QOLの改善が得られてきた.しかし,原因が特定可能な二次性パーキンソン症候群は薬剤性パーキンソン症候群を除けば治療法は不十分で治療法の開発が期待されている.
キーワード パーキンソン病,進行性核上性麻痺,線条体黒質変性症,皮質基底核変性症,血管性パーキンソン症候群
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論文名 パーキンソン病の病態生理
著者名 葛原茂樹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(11):1171-1177,2008
抄録 パーキンソン病では,線条体に神経終末を送る黒質緻密部のドパミンニューロンが変性するために,線条体→(淡蒼球外節→視床下核→)淡蒼球内節→視床腹外側核→大脳皮質運動野と補足運動野に至る神経路が障害されて運動障害が出現する.薬物療法や定位脳手術は,この仮説に基づいて実施され成功している.近年の研究により,レビー小体は大脳から末梢自律神経まで広範に出現し,病変に対応して,運動機能だけでなく認知機能から自律神経まで多系統の神経機能が障害されていることが明らかになった.
キーワード 大脳基底核,黒質緻密部,大脳皮質運動関連野,ドパミン,レビー小体
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論文名 パーキンソン病の運動障害・歩行障害
著者名 阿部和夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(11):1178-1183,2008
抄録 パーキンソン病(PD)は,振戦などの不随意運動,筋緊張異常,無動,あるいは歩行障害など運動症状が比較的初期から目立つ疾患である.また,異常な運動だけではなくcamptocormiaなどの姿勢異常もPDでは出現することが多い.歩行障害では,すくみ足が問題となることが多い.すくみ足の発症機序は不明であるが,最近は,両下肢の協調運動障害との関連が注目されている.
キーワード パーキンソン病,camptocormia,すくみ,転倒,協調運動障害
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論文名 パーキンソン病の自律神経障害
著者名 長谷川一子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(11):1184-1189,2008
抄録 パーキンソン病ではさまざまな非運動症状がみられることが知られている.ここでは自律神経障害の概要と,それに対する対応方法について述べた.パーキンソン病の自律神経障害は多彩で,疾患の進行にしたがい,ほとんどすべての自律神経症状がみられる.自律神経症状によっては生命予後に影響を与えることもあり,障害の早期発見と対応に留意している必要がある.また,非運動症状発現のメカニズムについてはさまざまな仮説があるが,ここではBraakの仮説を中心にふれた.
キーワード 便秘,イレウス,排尿障害,起立性低血圧,発汗障害
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論文名 パーキンソン病の精神症状
著者名 東 晋二・井関栄三
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(11):1190-1194,2008
抄録 パーキンソン病(PD)はパーキンソニズムなど運動症状を主体とした神経変性疾患である.しかしPDは高頻度に精神症状など非運動症状を合併し,認知機能障害を伴うものには,認知症を伴うパーキンソン病(PDD)やレビー小体型認知症(DLB)などの類縁疾患名が存在し,レビー小体病と総称される.精神症状は患者のQOLを低下させて日常生活を困難にし,生命予後をも左右する.そのため,PDに伴う精神症状とその治療法は,PD患者を診ていくうえでの必須の知識である.
キーワード Parkinson's disease,Parkinson's disease with dementia,dementia with Lewy bodies,non-motor symptom,psychiatric symptom
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論文名 パーキンソン病の認知障害
著者名 立花久大
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(11):1195-1202,2008
抄録 ・パーキンソン病では病初期においても比較的高率に要素的認知障害が存在する.・障害される主な認知機能は遂行機能,作動記憶,手続き記憶などの記憶機能,視空間機能,注意,情報処理速度などである.・パーキンソン病では認知症も20〜40%に認められるが,レビー小体型認知症と同じスペクトラムにはいる病態とされている.・認知障害に対しレボドパを含むドパミン療法は必ずしも有効ではないが,認知症に対してはコリンエステラーゼ阻害薬の有効性が報告されている.
キーワード 遂行機能,記憶,視空間機能,注意,認知症
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論文名 パーキンソン病の睡眠随伴症状
著者名 三上章良
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(11):1203-1212,2008
抄録 パーキンソン病でみられる睡眠関連症状と合併する睡眠関連疾患は多因子かつ複雑であるため,「睡眠の問題」を1つの原因で単純に考えて単純に対応しないことが重要である.レム睡眠行動異常症(RBD)は,夜間睡眠中に生じる複雑な異常行動であるが,パーキンソン病・認知症を伴うパーキンソン病・レビー小体型認知症を含めたレビー小体病との関連が注目されている.
キーワード レビー小体病,パラソムニア,レム睡眠行動異常症,polysomnography,REM sleep without atonia
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論文名 パーキンソン病の治療
著者名 大八木保政
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(11):1213-1219,2008
抄録 パーキンソン病治療の主体は内服薬治療であるが,進行例に対しては外科的な深部脳刺激治療も行われる.現在,L-ドーパ製剤,アマンタジン,抗コリン薬,ドパミンアゴニストなど,多くの治療薬が使用されている.通常はドパミンアゴニストとL-ドーパを軸にして,症状に応じて薬物を追加・調節する.とくに,wearing off/on-off現象やジスキネジアなどの運動合併症に留意する必要がある.
キーワード パーキンソン病,L-ドーパ,ドパミンアゴニスト,ジスキネジア
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