老年精神医学雑誌 Vol.19-1
論文名 認知症医療・介護改革の行方
著者名 斎藤正彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(1):9-14,2008
抄録 公共事業の圧縮と並んで,社会福祉費の削減が,経済財政諮問会議の答申,いわゆる『骨太の方針』に盛り込まれた.医療制度改革では,後期高齢者の医療保険を独立させること,診療報酬の改変によって入院医療費を削減すること,介護保険においては,軽度の障害を保険適応からはずすこと,療養型病床をなくして施設介護費を圧縮することが決められた.これらの『改革』は,介護,医療現場にさまざまな波紋を投げかけている.
キーワード 介護保険,医療制度改革,療養病床,認知症
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論文名 早期診断,早期治療を担う医療機関の現状と課題
著者名 朝田 隆
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(1):15-21,2008
抄録 認知症医療・介護制度の現状と課題というテーマの下に,早期診断,早期治療を担う医療機関の立場から論じた.これに関連して,まず昨今の認知症診療報酬削減の現状を紹介した.こうした流れに抗するために認知症専門医に求められる条件と機能について述べた.そして介護保険関連サービスとの連携など,システムとしての認知症医療が機能するために必要と考えられる目標を提示した.こうした目標に向かう努力のうえで新たな診療報酬として請求すべきであると考える具体的項目を挙げた.最後に,最近注目されている一人暮らしの認知症患者への社会的処遇という課題にも言及し,そこでわれわれが担うべき役割についても述べた.
キーワード dementia,early diagnosis,early therapy,speciality
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論文名 老人性認知症疾患センターの果たしてきた役割
著者名 渕野勝弘
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(1):22-28,2008
抄録 認知症疾患センターは今日まで,地域における認知症対策において医療センターとして機能を果たしてきた.しかし各センター間の活動にはばらつきも大きく,継続していくことは困難となった.今後は早期診断や救急対応,身体合併症対応等による専門性をより高めた認知症疾患医療センターとして変わる必要がある.介護における地域包括支援センターに対し,精神科医療の窓口として認知症に対する医療体制を整えなければならない.
キーワード 認知症疾患医療センター,早期診断,救急対応,身体合併症対策,専門医療相談・研修
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論文名 認知症介護における老人保健施設の役割
著者名 内藤圭之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(1):29-34,2008
抄録 老人保健施設は制度発足以来「中間施設」としての機能を付与されている.しかし,その機能が十分に発揮され,社会的評価も十分になされているとはいえない.認知症介護においても,その力は不十分といわざるを得ない.認知症介護における老健施設の現状と問題点を提起しながら,自己改革の方向性を示しつつ,今後の地域での介護施設のあり方,連携のあり方,制度設計上の問題点について議論の叩き台としたい.
キーワード 介護認定,ユニットケア,終末期,よくする機能,人材と財源
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論文名 重度認知症患者デイケア
著者名 高橋幸男,三原伊保子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(1):35-41,2008
抄録 重度認知症患者デイケアは精神科専門療法として歴史的意義をもっている.わが国の認知症医療や福祉の現状では,現在はもとより将来においても有効な治療法である.しかし,医療費削減の嵐のなかで,その存在が危うくなっている.改めて重度認知症患者デイケアの有効性と必要性について述べた.
キーワード 重度認知症患者デイケア,認知症,BPSD,精神科専門療法,集団精神療法
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論文名 小規模多機能ホームの現状と課題
著者名 小山 剛
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(1):42-47,2008
抄録 介護保険法の改正は,制度の持続可能性と在宅志向の再チャレンジにあり,このための施策として,地域密着型サービスの創設があった.そして高齢者自身の生活と保険者の目の届く範囲,つまり生活圏域をベースとした地域密着型サービスの中心が小規模多機能型居宅介護である.24時間365日連続する介護を,定額で在宅生活に提供するわが国初めての施策の成否は,介護保険自体の存続も影響されるであろう重要なチャレンジである.
キーワード 生活圏域,定額負担,在宅中重度,連続する介護,医療との連携
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論文名 地域包括支援センターの現状と課題
著者名 鏡  諭
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,19(1):48-58,2008
抄録 平成18年4月にスタートした地域包括支援センターは,地域ケアを必要とする人々に対して,介護予防・成年後見制度や虐待などの福祉的な総合相談・ケアマネジャーの困難事例支援など,安心して暮らせるよう包括的な相談・支援を行う機関として,市町村が主体事業として制度化された.運用にあたっては,自治体の地域ケア構想や政策により異なり,今なお多くの課題がある.本稿はそれらを明らかにし,今後の改善につなげていくものである.
キーワード 地域包括支援センターと指定介護予防支援事業所の違い,地域支援事業のなかの地域包括支援センター,地域包括支援センターの機能,特定高齢者の把握,地域で支える困難事例
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