老年精神医学雑誌 Vol.18-9
論文名 認知症のターミナルケアが目指すもの
著者名 天津栄子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(9):937-945,2007
抄録 認知症ターミナルケアを考えていく前提として,ターミナル期の定義を(1)認知症がある,(2)意思疎通が困難である,(3)嚥下が困難である,の3点からターミナルケアを考察した.認知症の人の意思疎通が可能な段階から,事前指示書(Advance Directives)を基に過去の豊かな生活体験や強みを未来のターミナルケアのデザインにどのように収斂していくかをケアの立場から述べた.今後,各施設でターミナルケアのガイドライン作成が望まれる.
キーワード 認知症,ターミナルケア,事前指示書,摂食・嚥下障害,ガイドライン
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論文名 医療機関における認知症のターミナルケアとその実践 ― 倫理的課題を含めて ―
著者名 藤田冬子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(9):946-952,2007
抄録 認知症の進行とともに誤嚥性肺炎を繰り返した後,最期を迎えた認知症高齢者の栄養管理的側面から生じた倫理的問題への取組みを紹介した.それらの介入のなかでは在宅医や急性期病院で働く医療者に,認知症終末期の栄養管理について認知症の予後も考慮した治療・ケアが求められていた.早急に治療方針を決定する医師のガイドライン,認知症終末期の治療のあり方について社会的認知の高まりが待たれている.
キーワード 認知症,嚥下障害,PEG,終末期,倫理
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論文名 地域における認知症の終末期ケア ― その実践と課題 ―
著者名 松本一生
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(9):953-958,2007
抄録 これまでの概念とは異なり,昨今の認知症終末期ケアの現場では本人の事前決定に基づく依頼が増えている.その場では医療協力のみならず,介護・福祉・医療が本人と家族の守秘に配慮しながら情報交換し,細やかに対応することが大切である.一方で本人の事前決定にもかかわらず,親族の反対により本人の希望に沿うケアができないケースから訴訟になったこともある.施設ケアと比べて,より家族・親族間の問題が表面化しやすい在宅での終末期ケアでは,チームが一致した方針をもち,認知症の人の代弁者となることが求められる.
キーワード 認知症,若年発症,終末期ケア,事前決定,家族支援
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論文名 介護支援専門員からみた認知症のターミナルケアの実践とその課題 ― 介護支援専門員に求められるもの ―
著者名 田村 光
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(9):959-965,2007
抄録 「意思疎通が困難」「なにも理解できない」「ぼけだけにはなりたくない」.これらは,認知症に対する適切な介護が提供されず逆に不適切な介護の連続によって,その症状を悪化させ,本人を混乱の渦に追い込んでいる不毛な介護の現状に大きく影響されている.認知症という病と同居しながらも,その人の安定した生活がそこになくしてターミナルケアなど空論に過ぎないのである.
キーワード 認知症介護モデル,ケアマネジメント,ターミナルケア,老いの意味
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論文名 認知症のターミナルケアにおけるチームケア・アプローチの役割と意義
著者名 木之下 徹,元永拓郎,本間 昭
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(9):966-973,2007
抄録 在宅療養における認知症の緩和ケアについて,わが国ではこれまであまり議論されてこなかった.本報告では在宅医療を展開するなかで,経験してきたさまざまな認知症の人々の「死」のなかから代表的な事例を示し,これらの各事例について医学的考察を加え,さらに家族介護者を含む多職種チームケア・アプローチの役割と意義について考察を加える.
キーワード 認知症,BPSD,緩和ケア,ターミナル,チームケア・アプローチ
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論文名 グループホームでの認知症の終末期ケアの実践と課題
著者名 内出幸美
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(9):974-981,2007
抄録 グループホームに対する利用者・家族からの終末期ケアのニーズは高く,全国の3割の事業所ではすでに看取りを経験している.現実的には,理念の共有,医療・看護とのチームワーク,職員・家族への支援,施策の後押しなど解決すべき課題はあるものの,グループホームにおける終末期ケアは,亡くなるまでお世話するという消極的なかかわりではなく,最期までその人らしくあり続けるためにお互いが存在を確かめ合いながら成長していくという積極的に生き抜く生活支援の実践であると思われる.
キーワード 生活支援,安心できる環境,終末観のパラダイム・シフト,チームワーク
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