論文名 | 非定型抗精神病薬の適応をめぐって |
著者名 | 本間 昭 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,18(7):701-706,2007 |
抄録 | 改めて認知症の行動・心理症状に対する非定型抗精神病薬の適応外使用が話題となっている.日本老年精神医学会と日本精神科病院協会が合同で実施した抗精神病薬の使用に関する実態調査結果を踏まえて,現在までに報告されている認知症の行動・心理症状を対象とした抗精神病薬の治験のメタ分析結果を紹介し,さらに,わが国と国外の主な診療ガイドラインをレビューし,認知症の行動・心理症状に対する抗精神病薬の使用法について考えてみた. |
キーワード | 認知症,行動・心理症状,抗精神病薬,適応外使用,診療ガイドライン |
論文名 | 非定型抗精神病薬の特徴 |
著者名 | 篠山大明,天野直二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,18(7):707-714,2007 |
抄録 | 従来の定型抗精神病薬の主な標的であったドーパミンD2受容体に加え,セロトニン5-HT2受容体への拮抗作用をあわせもつ非定型抗精神病薬が広く使用されるようになってきた.セロトニン5-HT2受容体の拮抗薬にはドーパミンD2受容体遮断により生じる錐体外路症状を軽減する効果や統合失調症の陰性症状を改善させる作用などがある.さまざまな薬理学的プロフィールをもつ非定型抗精神病薬の特徴を生かすことで,副作用が問題となりやすい高齢者でも比較的安全に治療を行うことが可能となる. |
キーワード | ドーパミン,セロトニン,ドーパミンD2受容体,セロトニン5-HT2A受容体,錐体外路症状 |
論文名 | 高齢者の幻覚妄想と非定型抗精神病薬 |
著者名 | 仁王進太郎,渡邊衡一郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,18(7):715-722,2007 |
抄録 | 高齢者の幻覚妄想のなかでも,とくに高齢発症の統合失調症およびその関連疾患について述べた.まず,その疾患分類であるが,国際的に統一した見解が得られていない.遅発パラフレニーと遅発性統合失調症を主に取り上げながら,その混乱について簡単にまとめた.次に,薬物療法については,二重盲検比較試験やそのメタ解析など,エビデンスレベルの高い研究がまったく行われていないのが現状である.代わりに,症例報告を集めた総論とエキスパートの意見についての論文を紹介した. |
キーワード | 妄想性障害,遅発パラフレニー,遅発性統合失調症,非定型抗精神病薬 |
論文名 | 高齢者の気分障害と非定型抗精神病薬 |
著者名 | 落合結介,笠原洋勇 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,18(7):723-728,2007 |
抄録 | 高齢者の気分障害は身体的,心気的訴えが多いこと,不安・焦燥が強いことなど若年者の気分障害と異なる臨床的特徴をもつことが知られており,従来の薬物療法では十分な改善に至らない場合も少なからずある.近年,非定型抗精神病薬が高齢者の気分障害において奏効したという報告が国内外でなされており,投薬は現実的なものとなっている.ただし,非定型抗精神病薬の投与にあたっては,高齢者における薬物動態に留意するとともに,適応外使用となるため,患者や家族に対する十分な説明が必要である. |
キーワード | 高齢者,気分障害,非定型抗精神病薬,薬物療法 |
論文名 | 高齢者のせん妄と非定型抗精神病薬 |
著者名 | 千葉 茂,田村義之,稲葉央子,石本隆広,石丸雄二,高崎英気,阪本一剛,山口一豪 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,18(7):729-738,2007 |
抄録 | せん妄の要因は,直接因子,促進因子,および準備因子に分けられるが,2つ以上の因子が重なって発症することが多い.せん妄の治療原則は,それぞれの因子の軽減・除去であるが,対症療法としての薬物療法の意義は大きい.最近の研究によれば,非定型抗精神病薬(atypical antipsychotics ; AAP)は,定型抗精神病薬(ハロペリドールなど)と比較して,同等の有効性を示しながらも副作用の発現が少ないことが示唆されているが,無作為割付比較試験による検討が不足している.今後も,AAPのせん妄に対する有効性と安全性に関する科学的根拠を積み重ねる必要がある. |
キーワード | 高齢者,せん妄,非定型抗精神病薬,睡眠障害,認知症 |
論文名 | 認知症と非定型抗精神病薬 |
著者名 | 阪井一雄,前田 潔 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,18(7):739-745,2007 |
抄録 | BPSDに対する非定型抗精神病薬の投与に対しては安全上の懸念がある.一方で,非定型抗精神病薬に比べて有効性が高いと考えられる薬物もほとんどない.非定型抗精神病薬は,危険性に関連する身体状態を十分に精査したうえで,強い攻撃性や精神病状態を呈する一部の患者にのみ,十分な監督監視下で少量を投与されるべきである.また,有効性が示されているのは短期投与であることを常に意識し,3〜4か月ごとに再評価を行い,精神症状が軽減消退している場合,漸減中止を試みるべきである. |
キーワード | 認知症,BPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia),非定型抗精神病薬(新規神経遮断薬),脳血管障害,死亡率 |
論文名 | 高齢者における定型抗精神病薬から非定型抗精神病薬へのスイッチング |
著者名 | 中村 祐 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,18(7):746-751,2007 |
抄録 | 定型抗精神病薬から非定型抗精神病薬へのスイッチングは,薬理作用の違いによる効果,副作用の低減,併用薬の整理,睡眠の質の改善などの利点が多くあることから,現在一般に推奨されている.抗コリン薬など併用薬を整理できること,鎮静作用や起立性の血圧低下を緩めることができることなど,高齢者においては若年者よりも定型抗精神病薬から非定型抗精神病薬へのスイッチングを推奨すべきであると考えられる.しかし,高齢者においては,薬物代謝が低下することから,定型抗精神病薬から非定型抗精神病薬へのスイッチングを行う際には十分に時間をかけることが肝要である.ただし,認知症高齢者においては,FDAよりBlack Box Warningという警告が非定型抗精神病薬の使用に関して出されている.そのため,適応外の使用に関しては,十分な留意が必要である. |
キーワード | 定型抗精神病薬,非定型抗精神病薬,スイッチング,抗コリン薬,高齢者,認知症 |
論文名 | 高齢者における非定型抗精神病薬の使用指針 |
著者名 | 大沼 徹,新井平伊 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,18(7):752-758,2007 |
抄録 | 近年増加している高齢者精神障害に対し,錐体外路症状が少ないなど,薬物療法の主流となりつつある非定型抗精神病薬について解説した.有効な面が大きい薬物であるが,気をつけなくてはならない点,耐糖能異常や他のホルモン機能の障害についても説明し,また個々の薬物についてのそれぞれの特徴を説明し,実際の臨床の場面において,薬物選択の一助となるよう解説した. |
キーワード | 高齢者,非定型抗精神病薬,糖尿病,FDA,錐体外路症状 |