老年精神医学雑誌 Vol.18-5
論文名 「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」の概要
著者名 岩井宜子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(5):473-478,2007
抄録 2003年に成立し,2005年7月より施行された「心神喪失者等医療観察法」の概要について,その意義と今後の課題を示すとともに略述した.これまで,精神障害者の犯罪対策については,多くの場合,措置入院制度で対処されてきたが,この法律により,医療を必要とするこれらの対象者は,1人の裁判官と1人の精神科医からなる審判に付され,その決定に基づいて,指定入院医療機関または指定通院医療機関において,治療がなされることとなり,大きな前進をみた.
キーワード 心神喪失,心神耗弱,指定入院医療機関,指定通院医療機関
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論文名 「医療観察法」の施行状況
著者名 平尾博志
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(5):479-484,2007
抄録 "1.平成17年7月15日に「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」が施行され1年半以上が経過した.
2.本法の施行から平成18年7月31日までの約1年間に
 ・検察官が申立てをした人員は355人であった.
 ・地方裁判所の決定は,入院が54.6%,通院が24.9%,不処遇が16.7%であった.
3.通院決定となり処遇終了となった高齢対象者の事例を紹介した."
キーワード 医療観察法,生活環境調査,処遇の実施計画,精神保健観察,ケア会議
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論文名 「医療観察法」における医療必要性とはなにか  ― とくに高齢対象者の場合 ―
著者名 村上 優
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(5):485-491,2007
抄録 医療観察法の医療必要性の要件は(1)疾病性:対象者の精神医学的診断とその重症度,および対象者の精神障害と対象行為との関連性,(2)治療反応性:現在の精神医学的な治療に対する,対象者の精神状態が改善するか否かの可能性,(3)社会復帰要因:対象者が社会復帰という目的を果たすことを促進あるいは阻害する要因,の3つの要件である.さらには医療観察法による医療の必要性判断で最も特徴的なことは時間の概念で過去,現在,さらには近未来まで幅をもつ時間軸を設定することである.認知症の医療観察法医療必要性では残された時間が短く制限されている高齢者や,余命が限定されている重篤な身体合併症を有する対象者に相応しい制度かを再検討する必要がある.高齢者の場合に精神状態が固定し改善が望めず,施設内で暴力リスクが認められない場合は,早期に一般精神科医療に移行してより社会に近いところで処遇することが法の社会復帰促進の目的に沿う.
キーワード 司法精神医学,医療必要性,高齢者,リスクアセスメント・マネジント,治療可能性
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論文名 「医療観察法」における指定入院医療機関における実態 ― とくに高齢対象者の場合 ―
著者名 樽矢敏広,平林直次
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(5):492-498,2007
抄録 高齢者による犯罪は警察庁のデータなどを概観すると増加の傾向にある.また高齢者による犯罪には暴力的なものが少ないという傾向も変わりつつある.高齢の犯罪者には精神障害を伴う者が少なくないということも指摘されており,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者を対象とする医療観察法の医療に,高齢の対象者が増加することが予測される.国立精神・神経センター武蔵病院は医療観察法の指定入院医療機関として,対象者が自分の病気について理解し,対象行為を内省し,被害者への共感を養うといった医療観察法で想定される社会復帰を目指すための多くの治療プログラムを提供している.しかし認知機能や身体機能が低下した高齢の対象者にはこのような治療プログラムの効果が期待できない可能性がある.重大な他害行為を行った高齢の対象者に対する処遇は,医療観察法のみで完結するものではなく,指定入院医療機関において司法精神医学の専門的な知見を生かし,多職種チームによる高齢者の他害行為や精神状態の評価,対策方針の策定を行い,一般医療に引き継ぐことが必要である.
キーワード 高齢者,犯罪,医療観察法,指定入院医療機関,多職種チーム
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論文名 「医療観察法」における精神鑑定の問題 ― 高齢対象者に焦点をあてて ―
著者名 黒田 治
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(5):499-508,2007
抄録 非常に少数ではあるが,医療観察法制度に導入される高齢対象者が実在している.本稿ではまず,医療観察法における精神鑑定について概説した.次いで,医療観察法制度に導入されるであろう高齢対象者の特性や彼らのニーズについて,主として英米の文献を基に考察し,鑑定の段階で生じる可能性のある問題点を指摘した.英米では近年,老年司法精神医学の確立が求められており,わが国でも同様の取組みが必要であることを論じた.
キーワード 医療観察法(mental health treatment and supervision act for insanity aquittees with a history of gravely harmful behavior),精神鑑定(forensic mental health assessment),高齢犯罪者(older offender),触法精神障害者(mentally disordered offender),老年司法精神医学(old-age forensic psychiatry)
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論文名 「医療観察法」における通院医療と高齢者
著者名 松原三郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(5):509-513,2007
抄録 医療観察法の対象者の高齢化率は10%前後と想定され,通院事例においても同様な傾向が認められた.高齢通院事例では,対象行為では放火事例が最も多く,これに殺人(未遂も含む)と傷害が続いた.主診断名ではアルコール依存症(33%)と認知症(33%)が並んでいるが,実際には認知症を併存している事例は多いものと予想できる.アルコール依存症では,責任能力鑑定を慎重に行う必要があるばかりでなく,この法律による通院医療となった場合には,断酒等を継続することへの困難が想定される.このために,対象者がアルコール依存症や薬物依存症の場合には,依存症治療が可能な指定通院医療機関が選別される必要がある.認知症事例の場合には,治療反応性に限界がある事例が少なくない.このために,事例に適した入院医療施設や介護保険サービスを行い,治療反応性が消退した場合には本法による処遇の終了が申し立てられるべきである.
キーワード 指定通院医療機関,通院処遇,地域処遇,認知症高齢者
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論文名 老年精神医学における「医療観察法」の諸問題
著者名 松下正明
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(5):514-518,2007
抄録  
キーワード  
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