老年精神医学雑誌 Vol.18-10
論文名 メタボリックシンドロームとアルツハイマー型認知症
著者名 小竹英俊,及川眞一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(10):1051-1056,2007
抄録 メタボリックシンドロームの病態は内臓脂肪蓄積がインスリン抵抗性の原因となり代謝異常を惹起するものであり,生活習慣が強く関与する.一方,アルツハイマー病は遺伝的な疾患であり,これら両者の共通因子を挙げることは困難である.しかし,メタボリックシンドロームの病態が記銘力障害に影響するか否かは興味がもたれる点であり,記銘力障害の早期発症に関連することも否定できない.主に疫学的な調査をまとめると,メタボリックシンドロームはアルツハイマー型認知症の危険因子であり,その原因にはインスリン抵抗性や炎症性サイトカインが関連することが考えられている.
キーワード メタボリックシンドローム,アルツハイマー型認知症,インスリン抵抗性,炎症性サイトカイン
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論文名 肥満とアルツハイマー型認知症
著者名 梁 美和,上野 聡,中村 正
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(10):1057-1064,2007
抄録 アルツハイマー型認知症においては,かつては危険因子として体重減少に関心が寄せられていた.しかしながら,近年ではむしろ肥満がアルツハイマー型認知症の危険因子であるというエビデンスが集積されてきた.中年期の肥満はアルツハイマー型認知症発症の重大な危険因子であり,発症後の肥満は増悪因子であることが明らかにされてきた.中年期,さらにさかのぼって小児期からの肥満の管理・予防が動脈硬化性心血管疾患のみならず,アルツハイマー型認知症予防にもきわめて重要である.
キーワード アルツハイマー型認知症,肥満,内臓脂肪,メタボリックシンドローム,脳血管障害
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論文名 血圧とアルツハイマー型認知症
著者名 坂倉建一,島田和幸
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(10):1065-1068,2007
抄録 近年,血圧と認知機能障害について多くの報告がなされている.一方,血圧とアルツハイマー型認知症については関連があるとする報告および関連がないとする報告があり,現在のところ血圧とアルツハイマー型認知症の間に有意な関係あるかどうかについての結論はでていないが,降圧療法は認知機能障害の改善効果が示唆されており,アルツハイマー型認知症の予防に関しても積極的な降圧が有用ではないかと考える.
キーワード 血圧レベル,認知機能障害,アルツハイマー型認知症,降圧療法
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論文名 糖尿病とアルツハイマー型認知症
著者名 織田雅也,宇高不可思
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(10):1069-1073,2007
抄録 糖尿病と認知症との関連性についてはいまだ議論の余地があるが,多くの疫学的研究により,糖尿病はアルツハイマー型認知症(Alzheimer,s disease ; AD)の発症リスク上昇に関与し得ることが示されている.糖尿病治療で認知症発症リスクを低減させることができるかどうかについては,いまだ確証はない.しかし,糖尿病がAD発症に寄与し得る病態として脳血管障害合併のほかに,インスリン抵抗性によるAD病理変化の促進などが想定されていることから,糖尿病の十分なコントロールにより予防・治療に介入できる可能性がある.
キーワード アルツハイマー型認知症,糖尿病,インスリン抵抗性
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論文名 高コレステロール血症とアルツハイマー型認知症
著者名 玉岡 晃
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(10):1074-1082,2007
抄録 血液,脳,髄液のコレステロール値がアルツハイマー型認知症において変動するか否かに関して,多くの研究が行われてきたが,結果は必ずしも一定したものではない.現在のところ,血中や脳内のコレステロール量の増加そのものがアルツハイマー型認知症の危険因子として作用する可能性は否定的である.コレステロールの細胞内における分布の変化や,高コレステロール血症患者に加わるほかの要因がアルツハイマー型認知症を促進する可能性は残っている.また,血液脳関門を通過するヒドロキシコレステロールのアルツハイマー型認知症の病態における意義について,注目が集められている.
キーワード アルツハイマー型認知症,アミロイドβタンパク,アポリポタンパクE,コレステロール,スタチン
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論文名 動脈硬化症とアルツハイマー型認知症
著者名 神崎恒一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(10):1083-1090,2007
抄録 アルツハイマー型認知症(AD)と血管性認知症(VD)は臨床的に鑑別することが容易でないこと,AD患者は動脈硬化症を合併していることが非常に多いため,ADと動脈硬化症との関連を示す報告はあっても,両者の因果関係を示すデータは乏しい.今後,因果関係を検証するためにはツール,モデルづくりが必要である.
キーワード 脳皮質下虚血病変,ApoE,IMT,PWV
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論文名 心疾患とアルツハイマー型認知症
著者名 大塚邦明,堀田典寛,高杉絵美子,山中 崇
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(10):1091-1099,2007
抄録 認知機能にかかわる心臓病危険因子として拡張期血圧・心拍数・心拍変動(VLF成分,LF成分,SDNN)の関与が推測された.なかでも,心拍変動の非線形解析の指標,DFA解析a2の有用性が示唆された.心機能では,駆出率などの収縮機能よりも,左室拡張能が有用であり,心電図所見では,心房細動とQTcに代表される再分極過程のかかわりが推察された.また,血管の硬さのかかわりが示唆され,今回の解析からは,ABIの関与が推察された.心臓・血管機能が認知機能の増悪と関連する機序としては,@両者の危険因子が同じである,A心臓・血管機能障害が,間接的にアルツハイマー病の発症を助長する,B心臓・血管機能障害が神経細胞の死滅をもたらし,そのことがアルツハイマー病の発症や病状の進行にかかわる,などが推察される.
キーワード 心拍変動,DFA α2,左室拡張能,心房細動,QTc,血管の硬さ
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論文名 メタボリックシンドロームからみたアルツハイマー型認知症発症予防の可能性
著者名 北村 伸
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(10):1100-1103,2007
抄録 メタボリックシンドロームとアルツハイマー型認知症の関係を示している検討結果はあるが,その関係はまだ明確ではない.メタボリックシンドロームの背景にあるインスリン抵抗性は,βアミロイド代謝との関係が示唆されており,動脈硬化,心疾患,そして脳血管障害による脳虚血もβアミロイドの沈着に関係することが示唆されている.メタボリックシンドロームの予防や改善が,アルツハイマー型認知症の発症予防に有効かどうかは今後の課題ではあるが,試みるべき予防手段のひとつと考える.
キーワード メタボリックシンドローム,インスリン抵抗性,虚血,アディポネクチン,アルツハイマー型認知症
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