老年精神医学雑誌 Vol.18-1
論文名 認知症疾患の鑑別診断・予後における神経症候の意義:序にかえて
著者名 平井俊策
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(1):9-11,2007
抄録  
キーワード  
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論文名 高齢者の歩行障害とその日常生活動作における意義
著者名 江藤文夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(1):12-19,2007
抄録 歩行による移動能力の低下は,ライフを標的とした保健医療サービスにおいて,ライフの意味する生活や人生の質に重大な影響を及ぼす.高齢者の障害は,相互に連環して増悪し合うことが特徴である.そうした代表的な障害が寝たきりと認知障害である.寝たきりの生成機序を考察すると,起立歩行を不安にする高齢者における転倒危険の増大が最も重大である.両者はともに脳の老化に伴う病的側面(脳不全)と考えることができる.
キーワード 偶発性転倒・転落,ADL,脳不全,老年医学,リハビリテーション
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論文名 脳血管障害
著者名 ト蔵浩和,小林祥泰
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(1):20-23,2007
抄録 脳血管障害による歩行障害には,片麻痺による痙性片麻痺歩行,小脳の障害による失調性歩行,血管性パーキンソニズムによる歩行障害がある.このうち血管性パーキンソニズムは認知症を合併する頻度が最も高く,また薬物治療が有効である可能性も高いので見逃してはいけない.血管性パーキンソニズムの歩行障害は,小刻み,すり足,すくみ足を伴うが,スタンスを広げて歩く,上肢の運動制限は少ない点などが特徴的である.
キーワード 血管性パーキンソニズム,多発性ラクナ梗塞,Binswanger型血管性認知症
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論文名 パーキンソン病ならびにレビー小体型認知症
著者名 近藤智善
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(1):24-28,2007
抄録 認知機能障害に歩行障害・易転倒性を伴った場合,非アルツハイマー型認知症を強く示唆する.認知機能障害や精神症状が先行する場合はいうまでもないが,パーキンソニズムで初発した症例の場合でも,患者が高齢で,静止時振戦を含む症状の左右差が目立たず,動作時振戦やミオクローヌスを認め,罹病期間のわりに進行が速く,歩行障害・易転倒性が目立つ,L-DOPAの効果が顕著でない,などがみられる症例は,DLBである可能性を考えながら経過をみる必要がある.
キーワード パーキンソン病,汎発性レビー小体病,パーキンソニズム,歩行障害
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論文名 進行性核上性麻痺
著者名 大竹敏之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(1):29-34,2007
抄録 進行性核上性麻痺は,核上性眼球運動障害,体幹や頸部に強い対称性の固縮・無動,認知症,偽性球麻痺を中核症状とする.典型的には,易転倒性などの歩行障害で発症し,しだいに他症状が出現する.歩行障害の特徴は,パーキンソン病の前屈姿勢と異なり,顕著な頭頸部後屈位をとることで,臨床的な鑑別点になる.
キーワード 進行性核上性麻痺,歩行障害,易転倒性,頭頸部後屈位
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論文名 大脳皮質基底核変性症
著者名 森松光紀
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(1):35-42,2007
抄録 大脳皮質基底核変性症では寝たきりに至る過程で歩行障害が必発である.しかし,大脳皮質(おもに前頭・頭頂葉)および皮質下構造物(大脳白質,基底核,黒質など)の病変が混在するために,歩行障害の病型は一様でない.文献および経験的には,無動・筋強剛優位型,肢節運動失行優位型,運動失調優位型,複雑な混在型,に分類するのが適当と思われる.
キーワード 歩行障害,大脳皮質基底核変性症,無動・筋強剛,肢節運動失行,運動失調
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論文名 脊髄小脳変性症;多系統萎縮症を含む
著者名 家永貴夫,水澤英洋
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(1):43-48,2007
抄録 認知症症状を伴う脊髄小脳変性症には,歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症,脊髄小脳失調症17型,Friedreich失調症とその関連疾患である眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早発性失調症などがある.その歩行障害の基本は,小脳性または脊髄性の失調性歩行である.また,最も頻度の高い多系統萎縮症(MSA)においても近年高次脳機能障害が報告されている.MSAでは小脳失調とパーキンソニズムを伴う.
キーワード 脊髄小脳変性症(SCD),失調歩行,多系統萎縮症(MSA),歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA),Friedreich失調症
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論文名 認知症疾患のおもな神経症候;とくに歩行障害を中心としてアルツハイマー病,前頭側頭型認知症にみられる歩行障害
著者名 石田千穂,山田正仁
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(1):49-54,2007
抄録 アルツハイマー病は,一般には記憶障害や精神症状で発症し,進行すると皮質症状や種々の神経症候による身体機能障害をきたす.しかし,軽症例であっても,起立・歩行障害や易転倒性は,健常者や軽度認知機能障害例に比べると有意に高率にみられ,錐体外路症候,歩行失行,あるいは前頭葉性歩行障害ととらえられている.前頭側頭型認知症では,初期から高率に錐体外路症候を呈し,そのための歩行障害がみられるが,臨床症状と,病理学的,免疫組織化学的分類との関連は乏しく,むしろ病変分布との関連が強い.
キーワード アルツハイマー病,前頭側頭型認知症,歩行障害,錐体外路症候
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論文名 認知症疾患のおもな神経症候;とくに歩行障害を中心として正常圧水頭症
著者名 伊藤 進,山本勇夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,18(1):55-59,2007
抄録 正常圧水頭症にみられる歩行障害は,1.歩幅が短く,2.足が床から高く上がらず,3.不安定で歩隔(歩行時における左右の足の間隔)が拡大することが特徴とされる.髄液排除試験(CSFタップテスト)で,歩行に改善がみられれば,シャント手術が有効となる可能性が高い.また,歩行障害が,認知機能障害や尿失禁に先行し,主たる症状の場合,手術の有効率が高いとされる.CSFタップテストにおいては,太めの穿刺針で行うこと,また,歩行時間に加えて歩数を同時に測定して,歩幅の改善を評価することが重要である.
キーワード 正常圧水頭症,歩行障害,髄液排除試験(CSFタップテスト),髄液シャント手術
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