論文名 | 前頭側頭葉変性症(FTLD)と前頭側頭型痴呆(FTD)の概念と分類 |
著者名 | 池田研二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(9):999-1004,2006 |
抄録 | 前頭側頭型痴呆(FTD)は失語症状群である進行性非流暢性失語(PA),語義(意味性)痴呆(SD)とともに前頭側頭葉変性症(FTLD)を構成する.FTD,PA,SDは疾患単位ではなく脳萎縮部位に対応した臨床特徴を示す症状群である.FTDはさらに,冒される脳病変部位のバリエーションと,それを反映した臨床特徴により,脱抑制型,無欲型,常同型の3亜型に分けられている.当初,FTDには前頭葉変性型,ピック型,運動ニューロン疾患型の3病理類型が提示されたが,この分類には問題が多い. |
キーワード | 前頭側頭葉変性症,前頭側頭型痴呆,進行性非流暢性失語,語義痴呆 |
論文名 | 前頭葉変性症型 |
著者名 | 豊田泰孝,池田 学,鉾石和彦,田辺敬貴 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(9):1005-1010,2006 |
抄録 | おもに初老期に発症する脳変性性疾患で,脳の前方部に病変を有し,特有の人格・行動変化などを主症状とする前頭側頭型痴呆(frontotemporal dementia ; FTD)のなかで,ピック病のような特徴的な病理所見に乏しい前頭葉変性症型(frontal lobe degeneration type ; FLD type)の概念が提唱されるに至った経緯,病理学的・臨床的な特徴および治療・ケアを概説した. |
キーワード | 前頭側頭葉変性症,前頭側頭型痴呆,前頭葉変性症型,FLD type,ピック病 |
論文名 | ピック型 |
著者名 | 小林美雪,天野直二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(9):1011-1018,2006 |
抄録 | FTDにおけるピック型はピック球,ピック細胞を伴うものと,それらを伴わずに葉状萎縮をきたすものとがある.ピック球は3リピートタウからなるユビキチン化をほとんど受けない封入体で,海馬,大脳皮質,脳幹部などに好発する.また軸索障害の二次性変化とみられるピック細胞も大脳皮質などに出現する.ピック球やピック細胞を伴わないタイプはユビキチン陽性封入体を認め,この封入体はmotor neuron diseaseを伴う認知症に出現するものと同一と考えられている.ピック球やピック細胞を伴わないタイプの疾患の異同についてはさらなる検討が待たれる. |
キーワード | 前頭側頭葉変性症(FTLD),前頭側頭型痴呆(FTD),ピック型,ピック球,ピック細胞 |
論文名 | 運動ニューロン疾患型 |
著者名 | 三山吉夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(9):1019-1025,2006 |
抄録 | 運動ニューロン疾患型前頭側頭型認知症(FTD-MND)は,主として初老期に行動障害(抑制低下),感情障害(主として多幸症),言語障害(自発語減少;超皮質性運動失語)で発症し,6か月〜1年以内にMNDが併発する.全経過は,3〜5年である.CT/MRIで前頭側頭葉の軽度萎縮とSPECTで初期から前頭側頭葉に血流低下がみられる.神経病理では,前頭側頭葉皮質表層に海綿状態とグリオーシス,ユビキチン封入体,MNDとしての病変が延髄・脊髄にみられる. |
キーワード | 前頭側頭型認知症,行動障害,感情障害,言語障害 |
論文名 | 進行性失語 |
著者名 | 吉野文浩,鹿島晴雄 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(9):1026-1032,2006 |
抄録 | 進行性失語とは,1892年のPickによる症例報告までさかのぼることのできる概念であり,神経変性疾患によって失語が選択的に進行している期間の病態を意味する.進行性失語の理解には,失語−限局性脳萎縮−変性疾患の三者の関連を統合的に考えることが必要である.とくに,同じMesulamの緩徐進行性失語を端緒としながらも,互いに内容の異なる概念として展開したMesulamの原発性進行性失語と前頭側頭葉変性症の進行性非流暢性失語の特徴を理解することは重要である. |
キーワード | 進行性失語,ピック病,前頭側頭葉変性症,semantic dementia,Pick complex |
論文名 | 家族性FTDの遺伝子変異 |
著者名 | 田中稔久,武田雅俊 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(9):1033-1040,2006 |
抄録 | ここ数年の研究において,家族性FTDの疾患のさまざまな原因遺伝子が検討されてきた.これらの遺伝子は第3,9,14,15,17染色体にあり,第15染色体以外は同定されている.しかし,タウ遺伝子,プレセニリン-1遺伝子を含め,神経変性の病態への関与はまだ十分には生物学的に説明できていない.これらの遺伝子の機能や病態への関与のメカニズムが解明され,他の散発性FTDも含めて治療法が見いだされることが期待される. |
キーワード | frontotemporal dementia(FTD),タウ,プレセニリン,CHMP(charged multi-nvesicular body protein)2B,valosin containing protein(VCP) |
論文名 | FTDP-17とタウオパチー |
著者名 | 飯島正明 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(9):1041-1046,2006 |
抄録 | FTDP-17はタウ遺伝子変異によって生じるタウオパチーであり,種々の神経変性疾患への関与が明らかとなっている.タウ遺伝子変異と,臨床症状や神経病理所見等の表現型との間には,ある程度の相関があるが,同一変異であっても,異なる家系間では表現型の違いがあり,同一家系内においても,症状の違いが認められている.FTDP-17の解析により,タウオパチーにおける遺伝子型と神経病理学的や臨床的表現型との関連が,いっそう明らかにされることが期待される. |
キーワード | FTDP-17,タウ,タウオパチー,タウ遺伝子,S305N変異 |