論文名 | 高齢者・認知症高齢者の転倒とその予防をめぐって |
著者名 | 朝田 隆,坂井輝男 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(8):893-898,2005 |
抄録 | 老年医学領域では転倒は重要課題として長年検討されてきた.精神科で注目されることは少なかったが,近年,高齢患者における転倒への認識が高まっている.うつ,認知症,さらに長期入院している統合失調症患者でとくにその危険性が高い.転倒は骨折などの身体的傷害はもとより,転倒恐怖とよばれる特有の精神的後遺症をも残す.転倒予防には,薬物への配慮,介護面,環境面,運動など総合的なアプローチが必要である. |
キーワード | 転倒,高齢者,精神科,危険因子,予防 |
論文名 | 高齢者・認知症高齢者の転倒,転落の実態 |
著者名 | 上野秀樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(8):899-907,2005 |
抄録 | 高齢者の増加に伴い,転倒,転落が注目を集めている.高齢者,認知症高齢者の転倒,転落の実態について,日本における研究を中心にまとめた.最後に筆者の勤務する都立松沢病院全体の転倒,転落の実態と老人性認知症専門病棟における転倒,転落の実態について報告した. |
キーワード | 高齢者の転倒,転落,認知症高齢者の転倒,転落 |
論文名 | 高齢者・認知症高齢者の転倒予測 |
著者名 | 菊地令子,鳥羽研二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(8):908-913,2005 |
抄録 | 転倒は高齢者のADLを低下させる要因として重要である.転倒の危険因子としては,加齢,認知症,転倒経験,視力や運動能力の低下や,障害物や段差といった環境因子などがあげられている.どのような要因が転倒の増加につながるのか,またどのような人が転倒しやすいのかを理解することが,転倒防止,ADL低下予防に重要であると考えられる.転倒ハイリスク者の早期発見のために,厚生労働省研究班のワーキンググループ会議が「転倒スコア」を作成しており,有用性も示唆された.このようなスコアを使用し,転倒の危険が高い患者を早期に発見し,予防へと導くことが重要であると考えられる. |
キーワード | 転倒危険因子,高齢者,「転倒スコア」 |
論文名 | 高齢者の転倒の病態 |
著者名 | 江藤文夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(8):914-921,2005 |
抄録 | 転倒の病態は活動状況との関連で,通常の運動時に不可避的障害により生じるもの,慌てていて身体あるいは頭部の不適切な運動時に生じるもの,予期し回避しうる障害の誤認により生じるもの,臥位,座位,起立位への自発的な姿勢変化時に生じるもの,通常の歩行時に偶発するもの,静止立位時に偶発するものに大別される.高齢者の転倒は,原因が多因子的に解釈される例が多く,歩行制御の神経学機序の複雑さから脳不全の一症状とみることもできる. |
キーワード | 認知症,脳不全,ICD-10,薬物,起立二足歩行 |
論文名 | 高齢者の姿勢と歩行 |
著者名 | 大高洋平,里宇明元 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(8):922-928,2005 |
抄録 | 高齢者の姿勢や歩行には独特な特徴がある.背中を丸め膝が曲がった姿勢で立ち,用心深そうに上体を少し前屈させ歩幅を小さくしゆっくりと慎重に歩く.どちらも,加齢もしくは加齢に伴う疾病が原因で生じた変化である.正確には,原因そのものが出現しているのではなく,それらの原因に対して姿勢や歩行を保つために高齢者が適応した結果として出現している特徴である.姿勢や歩行の変化を適切に評価し,その背景にある病態とそれに対しての適応反応を分別してとらえることが高齢者の姿勢や歩行を考えるうえでは重要である. |
キーワード | 姿勢,円背,歩行,用心深い歩行(cautious gait),転倒恐怖 |
論文名 | 高齢者・認知症高齢者の転倒予防プログラム |
著者名 | 征矢野あや子,武藤芳照,高杉紳一郎,立川厚太郎,田島直也,山本博司 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(8):929-935,2005 |
抄録 | わが国では2,000を超える市町村が転倒・骨折予防事業を開催しているが,それらの多くは認知症高齢者を対象から除外している.教育指導中心の事業を認知症高齢者に適用することはむずかしく,また,認知症特有の転倒関連要因に対応できるプログラムが開発されていないことが理由と考えられる.本稿では,一般高齢者向けの転倒予防プログラムを紹介し,それらを認知症高齢者に適用する場合の課題と対応策を示す.介護保険制度の見直しにより,要支援および要介護1を対象とした介護予防を目的とする転倒・骨折予防教室が計画されている.そのモデル事業の中間報告で,身体・認知機能の低下した虚弱高齢者に対応できるだけの指導体制・送迎の整備が困難,中断者が多く,健康管理が必要であること等が指摘された.病院が開催する転倒予防プログラムは,従来から転倒・骨折リスクの高い高齢者を対象としてきた.そこで行われてきた運動指導の工夫には,(1)認知症高齢者は平衡機能が低く,とくに考えながら歩くときの歩行の不安定さが顕著になるため,運動指導では情報を制限すること,(2)新しい出来事への順応が困難になるため,子どものころから慣れ親しんだ遊びや動作を運動として取り入れること,(3)楽しさと安全を重視することなどがある.運営上の工夫としては,運動前の「何となくだるい」「疲れている」といった漠然とした訴えや表情を丁寧に聞くこと,安全管理者と運動指導者を分担することなどが考えられる. |
キーワード |
論文名 | 認知症高齢者の転倒予防に対する介入効果 |
著者名 | 橋立博幸,内山 靖 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(8):936-940,2005 |
抄録 | "・認知症高齢者の転倒は,認知症を伴わない高齢者に比較してパフォーマンステストで示されるバランス障害との相関は低く,認知-身体機能,パフォーマンス-環境,危険度-活動度などの不均衡によって生じる. ・認知症高齢者の転倒予防の科学的エビデンスは十分に確立していないが,対象者の行動を有意味にとらえて環境を整備するとともに,認知機能,身体機能,スキル(motor and process skills)に働きかける必要がある. " |
キーワード | 認知症高齢者,バランス障害,転倒予防,理学療法 |
論文名 | 高齢者の転倒予防のための住環境 |
著者名 | 児玉桂子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(8):941-946,2005 |
抄録 | 在宅サービスを利用する高齢者の住宅内事故に関する全国調査等では,加齢や虚弱化とともに,転倒事故は居間や寝室で発生が高まり,同時に住宅全体に広がる.高齢者や家族の住宅の危険性や安全な住み方に対する認識は低く,これらが住宅構造の欠陥と相まって転倒事故の要因となっている.転倒予防のための住まいのチェックリストの提案を行った.また,住宅改修などによる住宅のバリアフリー化が,転倒予防に有効であることを述べた. |
キーワード | 住宅内事故,事故発生場所,転倒予防のための住まいのチェックリスト,住宅のバリアフリー化 |