論文名 | 高齢者と交通事故 |
著者名 | 高橋俊雄 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(7):771-784,2005 |
抄録 | 人口構造の高齢化に伴い,運転免許保有者数に占める高齢者(65歳以上の者をいう)の割合は年々高くなっており,この傾向は今後さらに顕著になっていく.また,これに比例して高齢者の交通事故死者数の占める割合も増加し,全体の4割を超えるに至っている.政府は,平成15年当初「今後,10年間で死者を5,000人以下とする」という目標を掲げており,これの達成に向け高齢者の事故抑止対策は喫緊の課題といえる. |
キーワード | 道路交通事故の推移,高齢者の交通事故の現状,交通事故死者数の減少に向けて |
論文名 | 高齢者の認知機能― 視覚的注意・有効視野を中心として ― |
著者名 | 三浦利章,石松一真 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(7):785-791,2005 |
抄録 | 高齢者の視覚的注意機能,とくに有効視野特性について認知心理学的な実験から,中心視機能と周辺視機能(有効視野)の交互作用の加齢変化を明らかにした.(1)中心視処理には大きな年齢差はみられない.(2)高齢者の有効視野機能の低下は中心視負荷が加わった場合,および予測困難な周辺視対象に対して示された.(3)高齢者では視覚処理のボットルネックが初期処理段階にもあることが示唆された.これらの背景メカニズムについて論じた. |
キーワード | 視覚的注意,有効視野,分割的注意,注意の移動効率,認知心理学 |
論文名 | 高齢者の運転能力評価 |
著者名 | 三村 將 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(7):792-801,2005 |
抄録 | 運転は知覚→判断・予測→運動に至る複合的な機能が動員される複雑な作業であり,その能力も単純にカットオフポイントを設定して評価できるようなものではない.本稿ではまず,高齢ドライバーの事故や違反の特徴をあげ,次に加齢に伴う生理機能,知覚機能,視覚性注意をはじめとする認知機能の低下についてふれた.高齢ドライバーでは,自己の知覚・運動・認知能力の低下の自覚とともに,運転態度や危険感受性にも変化が生じてくる.高齢ドライバーの運転安全性においては,運動能力や認知−反応系の問題だけではなく,自分の運転行動に対する妥当な認識が不可欠であり,少なくとも単に加齢や,加齢に伴う反応速度の低下だけで,高齢ドライバーの運転が危険であると判断してはならない.日本で現在,70歳以上の高齢ドライバーに対する運転適性診断,特定講習に利用されている検査としては,警察庁方式認知・判断力診断検査と,高齢者講習用運転適性検査CG400とがあげられる.後者では運転シミュレータを用いて,視覚性注意を中心とした運転に必要な能力を総合的に判断する.日本の実情では,路上運転評価よりはるかに簡便な運転シミュレータは実用性が高いが,シミュレータ成績と高齢ドライバーの実際の運転能力との関係については今後さらに検討していく必要がある.運転能力の評価は,高齢ドライバーを危険視するのではなく,むしろ指導・助言・教育の機会を提供していくべきである.それにより,高齢ドライバーが安全に運転でき,生活の質の向上を可能にすることが本来の高齢者福祉の姿であろう. |
キーワード | 自動車,認知症(痴呆),加齢,注意,シミュレータ |
論文名 | 免許更新における問題― 法的なことも含めて ― |
著者名 | 吉村匡史,吉田常孝,木下利彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(7):802-808,2005 |
抄録 | 高齢者,とくに認知症(痴呆)高齢者の運転に関する問題のうち,法律上の課題について,運転免許(免許)更新時の問題点を含めて検討した.道路交通の安全維持の重要性はいうまでもないが,免許の停止・取り消しはその人の生きがいを奪うことになりうる.よって,免許の停止・取り消しに際しては,個々の事例において,可能なかぎり慎重かつ多角的な検討が行われることが望まれる.また,明らかに運転継続が困難な事例においては,できるかぎり円滑に運転中断が図れるよう,システムが整備されることが必要と考えられる. |
キーワード | 高齢者,認知症(痴呆),運転免許,運転免許更新,道路交通法 |
論文名 | 高齢者の運転:介護者の立場から― 高齢者の運転をめぐる心理に関する検討 ― |
著者名 | 森千恵子,児玉千稲 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(7):809-814,2005 |
抄録 | 要介護高齢者における運転免許の保有状況と免許を失効したことによる心理・社会的変化を検討することを目的とし,介護者に対して調査を行った.その結果,運転中断後にマイナスの変化がみられたことが多く報告され,運転中断が高齢者の心理・社会的側面にマイナスの影響を及ぼす要因となることが示唆された.高齢者の運転に関しては,安全対策に加え,免許失効後の心理・社会的ケアも検討されるべき課題である. |
キーワード | 高齢者,運転中断,心理・社会的変化 |
論文名 | 高齢者の運転の実態と今後の展望について |
著者名 | 松本光央,豊田泰孝,池田 学 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(7):815-821,2005 |
抄録 | 現在,自動車は生活に必要不可欠である.近年,高齢の運転者,痴呆症の運転者数は急増しており,その交通事故の多さが問題となっている.平成14年には道路交通法が改正されたが,筆者らの行ったアンケートでは「痴呆症患者は運転を止めるべき」との社会的なコンセンサスはほぼ得られているが,地方都市,山間地域では運転に生活を依存している率が高く,本当に運転中止が必要な群のみを抽出するシステムの開発が必要であると考えられた. |
キーワード | 痴呆(認知症),高齢者,運転,シミュレーター,道路交通法 |
論文名 | "認知症高齢者と自動車運転― 運転継続の判断が困難であった認知症患者10例の 精神医学的考察 ―" |
著者名 | 上村直人,諸隈陽子,掛田恭子,下寺信次,井上新平,池田 学 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(7):822-830,2005 |
抄録 | 2002年6月の道路交通法改正後,公安委員会の判断で認知症患者の運転免許停止が可能となった.一方,法改正後でも多くの認知症患者が運転を継続しており,認知症患者の運転問題の解決には至っていない.今回筆者らは高知大学医学部附属病院神経科精神科を受診した認知症患者で,初診時以後の精神医学的管理上対応に苦慮した10例について考察した.現在の改正道交法では,認知症患者の運転問題への対応には課題が残り,その背景として(1)認知症患者の運転能力評価方法が医学的に確立していないこと,(2)認知症の原因による運転行動上の差異が見逃されていること.(3)医学的に運転中断を勧告する場合,患者本人のみならず介護家族の生活環境など心理社会的要因の影響が大きいことがあげられる.したがって認知症患者の運転について医学的に判断する場合,上記のような課題が解決される必要があり,今後の認知症治療ガイドラインなどにあらたに反映されることが必要であると思われる. |
キーワード | 認知症,自動車運転,運転能力,運転中断,家族介護 |
論文名 | 英国における痴呆の自動車運転― 現状と課題について ― |
著者名 | Carol Brayne,池田 学 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,16(7):831-835,2005 |
抄録 | 英国における痴呆(認知症)と自動車運転の問題に関する現状を概説した.英国では,運転に影響するような病的な健康状態が出現した場合は,免許を保有している本人,介護者,かかりつけ医などから,監督官庁であるDriving and Vehicle Licensing Agency(DVLA)に通報する義務がある.また,運転免許は70歳の時点で更新し,その後も3年ごとに更新しなければならない.実際の臨床現場では,中等度〜重度の痴呆は運転を中止させ,機能低下と関連する軽度痴呆は専門家の評価を受け,機能低下のない進行のみられない軽度痴呆は経過観察が行われている. |
キーワード | 英国,痴呆,自動車運転,Driving and Vehicle Licensing Agency |